6日(日)、バクー市街地サーキットで開催されたシーズン第6戦アゼルバイジャンGP決勝レースは途中まで安定した展開を見せていたものの、レース後半に数々のドラマが待ち受けており、最終的に表彰台の頂点に立ったのはレッドブルのペレスだった。
複数回の赤旗が振られた予選ではQ3序盤のアタックで1分41秒218のトップタイムをマークしていたフェラーリのルクレールが前戦モナコGPに続くポールポジションを獲得。初めてQ3に進んだアルファタウリの角田裕毅がラストアタックに臨もうとしたタイミングでクラッシュを喫してしまい、真後ろを走っていたサインツ(フェラーリ)が接触を回避しようとするも、エスケープゾーンに突っ込んでこちらもウオールにぶつかり、マシンにダメージを負うインシデントが発生したことで、予選トップ10に入ったドライバー全員が最後のアタックを完了できずに予選を終えることになった。
ルクレール同様に最初のアタックで好タイムを刻んでいたメルセデスのハミルトンがフロントローに食い込み、フリー走行では苦戦を強いられていたものの、予選までに改善している。3番手に収まったレッドブルのフェルスタッペンはタイム更新の機会を得られなかったものの、オーバーテイクが可能なコースとあってレースでの巻き返しに集中した。なお、予選中に計量ブリッジに呼ばれた際、ピットレーンのターマックの塗料がタイヤに付着したとのことで、FIAはフェルスタッペンに別のユーズドタイヤへの交換を許可している。
また、予選Q1で赤旗が掲示された際に、ピットレーン入口手前を走行していたものの、とっさの判断が追いつかずにピットインのタイミングを逃してしまい、コースにとどまったことでマクラーレンのノリスが3グリッド降格処分を受けた。ノリスは予選を6番手で終えていたため、7番手から9番手に並んだペレス、角田、アロンソ(アルピーヌ)のスタート位置がひとつ繰り上がっている。
ピレリはバクーにC3からC5の最も柔らかいコンパウンドの組み合わせを用意し、トップ10スタートのドライバーは全員がソフトタイヤでQ2を突破したため、第2スティント以降のタイヤ戦略に注目が集まった。タイヤ選択が自由な11番手以下の中で、ミディアムを選んだのは14番から16番のグリッドに着いたライコネン(アルファロメオ・レーシング)とウィリアムズのラッセルとラティフィだ。19番手スタートのストロール(アストンマーティン)はハードタイヤを選択している。
若干の青空が見えつつも雲が広がる中、全長6.003kmのバクー市街地サーキットにて51周で争われた決勝レースは気温24.3℃、路面温度39.7℃、湿度51.6%のドライコンディションでフォーメーションラップが始まる。
シグナルのブラックアウトを確認してグリッドを離れたルクレールは先頭をキープしてターン1を通過、ハミルトンはややフェルスタッペンをカバーするようにして2番手を守っている。スタートで1つポジションを上げたペレスがオープニングラップの第1セクターでさらに1台をかわして4番手に浮上したほか、アロンソが角田を追い抜いて7番手で1周目を終えた。
チャンピオンシップ首位を守るべく、ハミルトンに引き離されないよう早めにルクレールを抜きたかったフェルスタッペンも直線でフェラーリマシンに並び、ファステストラップを刻んでハミルトンに次ぐポジションに浮上した。この時点で2人のギャップは1.2秒ほどあり、フェルスタッペンが2番手に上がったことを確認したハミルトンがファステストを塗り替えるペースを見せて引き離しにかかるが、レッドブルはペレスもルクレールのオーバーテイクを成功させ、ハミルトンとメルセデスにプレッシャーをかけていく。
8周を走り切る前にさらに2人のドライバーが最初のタイヤ交換を終えた。角田に抜かれてスタートと同じ8番手に戻っていたアロンソと、オープニングラップで3つのポジションを失っていたノリスが同じタイミングでピットに入り、2人ともハードタイヤを履いて隊列に復帰している。さらにハミルトンが10周目に入った頃にはルクレールと角田がピットイン。こちらもバクーの週末では最も硬いC3のコンパウンドを選び、ルクレールは10番手、角田は12番手の位置でコースに戻った。
フェラーリは次のラップでサインツのタイヤ交換も完了したが、ハードに履き替えたばかりのサインツはターン8をうまくターンインできず、エスケープゾーンに逃げて一時的に黄旗が振られる場面があった。事なきを得たサインツは大きくポジションを落としたものの、コースに復帰してレースを続けている。
レッドブルよりも先に動いたメルセデスはハミルトンのタイヤをハードに交換するも、その作業に少し時間がかかってしまい、直後の13周目にレッドブルがフェルスタッペンのマシンにハードタイヤを装着してコースに送り出した頃にはハミルトンの前に出ていた。レッドブルは続けてペレスのピットストップも終えたが、1.9秒の作業時間だったフェルスタッペンとは対照的に長いストップとなってしまう。それでも、なんとかハミルトンの前でコースに戻ったペレスは、後方からのプレッシャーに対処しながら前のフェルスタッペンを追いかけた。
15周目に入ってラップリーダーの座に就いていたのはアストンマーティンのベッテルだ。ソフトタイヤでスタートしたベッテルは第1スティントを長く取っており、ベッテル以外でまだスタートと同じタイヤを履いていたのはハードを選んだチームメイトのストロールだけ。
とはいえ、ベッテルとフェルスタッペンのギャップは3秒弱しかなく、戦略が異なることもあってフェルスタッペンはマイペースにレースを組み立てる。ペレスは僚友の3.2秒後方で懸命にハミルトンを抑え込み、その後ろにストロール、ガスリーが6番手、ルクレール、角田、ノリス、バルテリ・ボッタス(メルセデス)が入賞圏内につけていた。
ベッテルがピットインした19周目にはフェルスタッペンがラップリーダーに戻り、ライバルたちと同じくハードタイヤに履き替えたベッテルは角田の2.2秒前、7番手で隊列復帰を果たしている。
レースが折り返し地点を過ぎた時点で先頭のフェルスタッペンは後続に3秒以上のリードを築き、ペレスとハミルトンの間には2秒のギャップ、ストロールはまだ第1スティントを走っており、事実上の4番手にガスリーがつけ、ルクレール、ベッテル、角田、ノリスが2秒強の間隔で並んでいた。ノリスの1秒ほど後方からはボッタスが攻め立てていたが、思うようにオーバーテイクを仕掛けられず、ストリートコースでペース不足に苦しむボッタスはがまんのレースを強いられている。
しばらく順位の変動がない状況が続いていたが、事態が大きく動いたのは31周目。まだ第1スティントを走っていたストロールがロングストレートでバランスを崩してクラッシュしてしまう。左リアタイヤが限界に達していたようで、直線を走行中に突如、マシンのコントロールを失っていた。激しい衝突だったものの、幸い、ストロールにケガはなく、自力でマシンを降りている。
ストロールのクラッシュに伴ってセーフティカーが出動したが、事故現場の位置関係からピットレーンが閉鎖されていたため、タイヤ交換はできない状況だった。ストロールを欠いた隊列はセーフティカーの後ろに並んでレース再開の時を待つも、飛び散ったデブリが多く、マシン撤去にも時間を要した。34周目にはピットレーンが開放され、タイヤ交換を検討する陣営もいたものの、すでに各車のギャップがなくなっていたことから、ピットインすれば大幅なポジションダウンは避けられない。
ただ、周回遅れのマシンに対してラップ回復の許可が降りた直後――この時点で周回遅れだったのはハースF1のマゼピンのみ――後方集団のマシンがピットレーンに飛び込み、アロンソ、ジョビナッツィ、ラッセル、シューマッハ(ハースF1)、マゼピンが2度目のタイヤ交換を終わらせた。
35周目をもってセーフティカーの解除が発表されると、タイヤの熱入れからポジション取りまでライバルとの駆け引きが相次ぎ、ターン1への飛び込みなどで超接近戦が繰り広げられた。リスタートで好パフォーマンスを見せたベッテルはルクレールを追い抜いて5番手に上がると、次のラップにはガスリーも料理して4番手にポジションアップ。
40周を走って先頭はフェルスタッペンで変わらず、すでに4秒以上のリードを許しながらもハミルトンを確実に抑え込むペレスが2番手をキープ、ハミルトンは1秒後方に控え、ベッテル、ガスリー、ルクレール、角田、ノリス、サインツ、ダニエル・リカルド(マクラーレン)がポイント圏内につけていた。苦しいながらもトップ10のポジションを守っていたはずのボッタスはリスタートで数台に追い抜かれてしまい、14番手まで後退している。
残り10周を切って上位勢の中にもハードタイヤで30周以上を走るドライバーが増え、ストロールの一件もあったことからタイヤの持ちが懸念されたものの、自己ベストタイムを刻むドライバーもちらほら見られた。
しかしながら、やはりタイヤの寿命が原因でまたしてもクラッシュを喫したドライバーが出てしまう。しかも、ラップリーダーのフェルスタッペンがその人だ。順調に先頭を走っていたフェルスタッペンだが、残り5周となったところで突然マシンのコントロールを失ってウオールに激突。左リアタイヤに損傷が確認されており、無念のリタイアとなった。衝撃は激しかったものの、フェルスタッペンにケガはなく、コックピットを離れたフェルスタッペンは左リアタイヤを確認した後、思わずタイヤにケリを入れて悔しさをあらわにしていた。
再びセーフティカーが出動し、先頭にはペレスが躍り出て2番手にハミルトン、3番手にベッテルが上がる。49周目を迎えるタイミングで赤旗が振られ、全車がピットレーンに整列。レッドブルのピットウオールではチーム代表のクリスチャン・ホーナーがフェルスタッペンのトラブルについて話しており、「ストロールとまったく同じ。タイヤトラブルだ」と指摘していた。レッドブルによれば、事故前にバイブレーションなどが発生していた事実もなく、タイヤトラブルの兆候はまったくなかったという。
赤旗中断してから20分以上が経過した頃、レースコントロールからレース再開の予定が告げられる。日本時間23時10分にピットレーンがオープンとなり、セーフティカー先導のもと、生き残る全車がソフトタイヤを履いてフォーメーションラップを走った。3番手につけるベッテルは上位勢で唯一、新品のソフトタイヤを持っており、チャンスを最大に生かすべくフレッシュなコンパウンドを装着。スタンディングスタートが指定されたため、その時点のオーダーでグリッドに並んでのリスタートとなった。
ペレスが確実に蹴り出す中、ハミルトンがまさかのターン1でオーバーランを喫し、ベッテルが2番手に上がるとともにガスリーが3番手に浮上する。ハミルトンは16番手までポジションを落とし、入賞圏外に脱落した。
表彰台の最後のひと枠をめぐってはガスリーにプレッシャーをかけるルクレールとノリスが争いに加わるも、ルクレールの攻撃を跳ね返したガスリーに軍配が上がり、ファイナルラップはルクレールとノリスが4番手の座を争った。
長いレースを終えてトップチェッカーを受けたペレスに次いでベッテルが2位でゴールし、3位にはガスリーが入って表彰台をマーク。4位以下、入賞はルクレール、ノリス、アロンソ、角田、サインツ、リカルド、ライコネンだった。
ジョビナッツィが11位でフィニッシュしており、ボッタスが12位、ラティフィ、シューマッハ、マゼピン、ハミルトンは16位完走にとどまってノーポイントだったため、ドライバーズ選手権はフェルスタッペンのリードのまま次のラウンドに向かうことになった。チェッカーフラッグを受けられなかったものの、ラッセルとフェルスタッペンがそれぞれ17位と18位で完走扱いとなっている。
フェルスタッペンが、残り5周のところでクラッシュを喫し、優勝は逃してしまったものの、ペレスが優勝、ガスリーが3位表彰台、角田が7位となっており、ホンダPU勢の表彰台も夢ではなくなってきましたね。
次戦、ポール・リカール・サーキットのフランスGPに期待しましょう!
複数回の赤旗が振られた予選ではQ3序盤のアタックで1分41秒218のトップタイムをマークしていたフェラーリのルクレールが前戦モナコGPに続くポールポジションを獲得。初めてQ3に進んだアルファタウリの角田裕毅がラストアタックに臨もうとしたタイミングでクラッシュを喫してしまい、真後ろを走っていたサインツ(フェラーリ)が接触を回避しようとするも、エスケープゾーンに突っ込んでこちらもウオールにぶつかり、マシンにダメージを負うインシデントが発生したことで、予選トップ10に入ったドライバー全員が最後のアタックを完了できずに予選を終えることになった。
ルクレール同様に最初のアタックで好タイムを刻んでいたメルセデスのハミルトンがフロントローに食い込み、フリー走行では苦戦を強いられていたものの、予選までに改善している。3番手に収まったレッドブルのフェルスタッペンはタイム更新の機会を得られなかったものの、オーバーテイクが可能なコースとあってレースでの巻き返しに集中した。なお、予選中に計量ブリッジに呼ばれた際、ピットレーンのターマックの塗料がタイヤに付着したとのことで、FIAはフェルスタッペンに別のユーズドタイヤへの交換を許可している。
また、予選Q1で赤旗が掲示された際に、ピットレーン入口手前を走行していたものの、とっさの判断が追いつかずにピットインのタイミングを逃してしまい、コースにとどまったことでマクラーレンのノリスが3グリッド降格処分を受けた。ノリスは予選を6番手で終えていたため、7番手から9番手に並んだペレス、角田、アロンソ(アルピーヌ)のスタート位置がひとつ繰り上がっている。
ピレリはバクーにC3からC5の最も柔らかいコンパウンドの組み合わせを用意し、トップ10スタートのドライバーは全員がソフトタイヤでQ2を突破したため、第2スティント以降のタイヤ戦略に注目が集まった。タイヤ選択が自由な11番手以下の中で、ミディアムを選んだのは14番から16番のグリッドに着いたライコネン(アルファロメオ・レーシング)とウィリアムズのラッセルとラティフィだ。19番手スタートのストロール(アストンマーティン)はハードタイヤを選択している。
若干の青空が見えつつも雲が広がる中、全長6.003kmのバクー市街地サーキットにて51周で争われた決勝レースは気温24.3℃、路面温度39.7℃、湿度51.6%のドライコンディションでフォーメーションラップが始まる。
シグナルのブラックアウトを確認してグリッドを離れたルクレールは先頭をキープしてターン1を通過、ハミルトンはややフェルスタッペンをカバーするようにして2番手を守っている。スタートで1つポジションを上げたペレスがオープニングラップの第1セクターでさらに1台をかわして4番手に浮上したほか、アロンソが角田を追い抜いて7番手で1周目を終えた。
チャンピオンシップ首位を守るべく、ハミルトンに引き離されないよう早めにルクレールを抜きたかったフェルスタッペンも直線でフェラーリマシンに並び、ファステストラップを刻んでハミルトンに次ぐポジションに浮上した。この時点で2人のギャップは1.2秒ほどあり、フェルスタッペンが2番手に上がったことを確認したハミルトンがファステストを塗り替えるペースを見せて引き離しにかかるが、レッドブルはペレスもルクレールのオーバーテイクを成功させ、ハミルトンとメルセデスにプレッシャーをかけていく。
8周を走り切る前にさらに2人のドライバーが最初のタイヤ交換を終えた。角田に抜かれてスタートと同じ8番手に戻っていたアロンソと、オープニングラップで3つのポジションを失っていたノリスが同じタイミングでピットに入り、2人ともハードタイヤを履いて隊列に復帰している。さらにハミルトンが10周目に入った頃にはルクレールと角田がピットイン。こちらもバクーの週末では最も硬いC3のコンパウンドを選び、ルクレールは10番手、角田は12番手の位置でコースに戻った。
フェラーリは次のラップでサインツのタイヤ交換も完了したが、ハードに履き替えたばかりのサインツはターン8をうまくターンインできず、エスケープゾーンに逃げて一時的に黄旗が振られる場面があった。事なきを得たサインツは大きくポジションを落としたものの、コースに復帰してレースを続けている。
レッドブルよりも先に動いたメルセデスはハミルトンのタイヤをハードに交換するも、その作業に少し時間がかかってしまい、直後の13周目にレッドブルがフェルスタッペンのマシンにハードタイヤを装着してコースに送り出した頃にはハミルトンの前に出ていた。レッドブルは続けてペレスのピットストップも終えたが、1.9秒の作業時間だったフェルスタッペンとは対照的に長いストップとなってしまう。それでも、なんとかハミルトンの前でコースに戻ったペレスは、後方からのプレッシャーに対処しながら前のフェルスタッペンを追いかけた。
15周目に入ってラップリーダーの座に就いていたのはアストンマーティンのベッテルだ。ソフトタイヤでスタートしたベッテルは第1スティントを長く取っており、ベッテル以外でまだスタートと同じタイヤを履いていたのはハードを選んだチームメイトのストロールだけ。
とはいえ、ベッテルとフェルスタッペンのギャップは3秒弱しかなく、戦略が異なることもあってフェルスタッペンはマイペースにレースを組み立てる。ペレスは僚友の3.2秒後方で懸命にハミルトンを抑え込み、その後ろにストロール、ガスリーが6番手、ルクレール、角田、ノリス、バルテリ・ボッタス(メルセデス)が入賞圏内につけていた。
ベッテルがピットインした19周目にはフェルスタッペンがラップリーダーに戻り、ライバルたちと同じくハードタイヤに履き替えたベッテルは角田の2.2秒前、7番手で隊列復帰を果たしている。
レースが折り返し地点を過ぎた時点で先頭のフェルスタッペンは後続に3秒以上のリードを築き、ペレスとハミルトンの間には2秒のギャップ、ストロールはまだ第1スティントを走っており、事実上の4番手にガスリーがつけ、ルクレール、ベッテル、角田、ノリスが2秒強の間隔で並んでいた。ノリスの1秒ほど後方からはボッタスが攻め立てていたが、思うようにオーバーテイクを仕掛けられず、ストリートコースでペース不足に苦しむボッタスはがまんのレースを強いられている。
しばらく順位の変動がない状況が続いていたが、事態が大きく動いたのは31周目。まだ第1スティントを走っていたストロールがロングストレートでバランスを崩してクラッシュしてしまう。左リアタイヤが限界に達していたようで、直線を走行中に突如、マシンのコントロールを失っていた。激しい衝突だったものの、幸い、ストロールにケガはなく、自力でマシンを降りている。
ストロールのクラッシュに伴ってセーフティカーが出動したが、事故現場の位置関係からピットレーンが閉鎖されていたため、タイヤ交換はできない状況だった。ストロールを欠いた隊列はセーフティカーの後ろに並んでレース再開の時を待つも、飛び散ったデブリが多く、マシン撤去にも時間を要した。34周目にはピットレーンが開放され、タイヤ交換を検討する陣営もいたものの、すでに各車のギャップがなくなっていたことから、ピットインすれば大幅なポジションダウンは避けられない。
ただ、周回遅れのマシンに対してラップ回復の許可が降りた直後――この時点で周回遅れだったのはハースF1のマゼピンのみ――後方集団のマシンがピットレーンに飛び込み、アロンソ、ジョビナッツィ、ラッセル、シューマッハ(ハースF1)、マゼピンが2度目のタイヤ交換を終わらせた。
35周目をもってセーフティカーの解除が発表されると、タイヤの熱入れからポジション取りまでライバルとの駆け引きが相次ぎ、ターン1への飛び込みなどで超接近戦が繰り広げられた。リスタートで好パフォーマンスを見せたベッテルはルクレールを追い抜いて5番手に上がると、次のラップにはガスリーも料理して4番手にポジションアップ。
40周を走って先頭はフェルスタッペンで変わらず、すでに4秒以上のリードを許しながらもハミルトンを確実に抑え込むペレスが2番手をキープ、ハミルトンは1秒後方に控え、ベッテル、ガスリー、ルクレール、角田、ノリス、サインツ、ダニエル・リカルド(マクラーレン)がポイント圏内につけていた。苦しいながらもトップ10のポジションを守っていたはずのボッタスはリスタートで数台に追い抜かれてしまい、14番手まで後退している。
残り10周を切って上位勢の中にもハードタイヤで30周以上を走るドライバーが増え、ストロールの一件もあったことからタイヤの持ちが懸念されたものの、自己ベストタイムを刻むドライバーもちらほら見られた。
しかしながら、やはりタイヤの寿命が原因でまたしてもクラッシュを喫したドライバーが出てしまう。しかも、ラップリーダーのフェルスタッペンがその人だ。順調に先頭を走っていたフェルスタッペンだが、残り5周となったところで突然マシンのコントロールを失ってウオールに激突。左リアタイヤに損傷が確認されており、無念のリタイアとなった。衝撃は激しかったものの、フェルスタッペンにケガはなく、コックピットを離れたフェルスタッペンは左リアタイヤを確認した後、思わずタイヤにケリを入れて悔しさをあらわにしていた。
再びセーフティカーが出動し、先頭にはペレスが躍り出て2番手にハミルトン、3番手にベッテルが上がる。49周目を迎えるタイミングで赤旗が振られ、全車がピットレーンに整列。レッドブルのピットウオールではチーム代表のクリスチャン・ホーナーがフェルスタッペンのトラブルについて話しており、「ストロールとまったく同じ。タイヤトラブルだ」と指摘していた。レッドブルによれば、事故前にバイブレーションなどが発生していた事実もなく、タイヤトラブルの兆候はまったくなかったという。
赤旗中断してから20分以上が経過した頃、レースコントロールからレース再開の予定が告げられる。日本時間23時10分にピットレーンがオープンとなり、セーフティカー先導のもと、生き残る全車がソフトタイヤを履いてフォーメーションラップを走った。3番手につけるベッテルは上位勢で唯一、新品のソフトタイヤを持っており、チャンスを最大に生かすべくフレッシュなコンパウンドを装着。スタンディングスタートが指定されたため、その時点のオーダーでグリッドに並んでのリスタートとなった。
ペレスが確実に蹴り出す中、ハミルトンがまさかのターン1でオーバーランを喫し、ベッテルが2番手に上がるとともにガスリーが3番手に浮上する。ハミルトンは16番手までポジションを落とし、入賞圏外に脱落した。
表彰台の最後のひと枠をめぐってはガスリーにプレッシャーをかけるルクレールとノリスが争いに加わるも、ルクレールの攻撃を跳ね返したガスリーに軍配が上がり、ファイナルラップはルクレールとノリスが4番手の座を争った。
長いレースを終えてトップチェッカーを受けたペレスに次いでベッテルが2位でゴールし、3位にはガスリーが入って表彰台をマーク。4位以下、入賞はルクレール、ノリス、アロンソ、角田、サインツ、リカルド、ライコネンだった。
ジョビナッツィが11位でフィニッシュしており、ボッタスが12位、ラティフィ、シューマッハ、マゼピン、ハミルトンは16位完走にとどまってノーポイントだったため、ドライバーズ選手権はフェルスタッペンのリードのまま次のラウンドに向かうことになった。チェッカーフラッグを受けられなかったものの、ラッセルとフェルスタッペンがそれぞれ17位と18位で完走扱いとなっている。
フェルスタッペンが、残り5周のところでクラッシュを喫し、優勝は逃してしまったものの、ペレスが優勝、ガスリーが3位表彰台、角田が7位となっており、ホンダPU勢の表彰台も夢ではなくなってきましたね。
次戦、ポール・リカール・サーキットのフランスGPに期待しましょう!