28日(日)、天候が重大な鍵を握る展開となった2019年FIA F1世界選手権第11戦ドイツGP決勝レースはレッドブルのフェルスタッペンが優勝を果たした。
大混戦が予想されていた予選はQ1でフェラーリのセバスチャン・ベッテルがトラブルに見舞われてノータイムに終わり、さらにQ3を前に僚友シャルル・ルクレールもまた別の問題を抱えて走行断念を余儀なくされる展開となった結果、メルセデスのハミルトンがポールポジションを獲得。2番手にフェルスタッペンが入り、2列目にはそれぞれの相棒が並ぶことになった。
全長4.574kmを誇るホッケンハイムのレースは気温21.2℃、路面温度25.9℃、湿度88.3%のウエットコンディションでスタート時刻を迎える。C2からC4のドライタイヤを用意していたピレリだが、インターミディエイトタイヤでも厳しいコンディションとあって、全車がウエットタイヤを履いて第1スティントに備えた。加えてセーフティカー先導で進められたフォーメーションラップは1周だけで終わらず、2周、3周と走る中でドライバーたちからは「レースできるからやろうよ」といった無線が飛び交っている。最終的に、3周のフォーメーションラップでスタンディングスタートが宣言され、予定されていた67周から64周に変更されて各車がグリッドに並んだ。
ハミルトンやボッタスが順調に発進していく一方、フェルスタッペンが大きく遅れて後退し、その間に5番手スタートだったライコネン(アルファロメオ・レーシング)が3番手に浮上している。フェルスタッペンの真後ろのグリッドだったガスリーも出だしにつまずいてポジションを落としており、ルクレールが10番手から6番手に上がった。
フェルスタッペンがライコネンをかわして3番手に巻き返した頃、レーシング・ポイントのペレスがスピンを喫してウオールに接触。マシンにダメージを受けて身動きが取れなくなり、セーフティカーが出動した。これを受けて後方にいたベッテルがピットに向かってタイヤをインターミディエイトに交換。その次のラップには先頭集団もタイヤを履き替えている。
5周目に入る手前でセーフティカーが解除され、先頭はハミルトン、2番手にはウエットタイヤを継続したハースF1のマグヌッセンがつけ、ボッタス、フェルスタッペン、ルクレールが5番手でレースを再開させている。ただ、リスタートでグリップを得られずに苦戦していたマグヌッセンは次々とオーバーテイクされ、6周目には6番手まで後退していた。
さらにライコネンもマグヌッセンを料理しようとしたが、追い抜いた直後のコーナーでコースを飛び出してしまい、後方に迫っていたベッテルを抑えながら再度マグヌッセンにオーバーテイクを仕掛けている。マグヌッセンは結局、ライコネンとベッテルに加えてマクラーレンのサインツにもポジションを奪われ、9周目になってようやくインターミディエイトタイヤに交換するためピットに向かう。
この時点ですでにマグヌッセン以外はウエットからインターミディエイトに履き替えており、トップ5にはハミルトン、ボッタス、フェルスタッペン、ルクレール、ヒュルケンベルグが名を連ねた。
周回数がふた桁に乗る頃には一部の路面がドライになりつつあったが、雨雲がサーキット上空に近づいていたため、各チームはドライバーたちにインターミディエイトタイヤでの走行継続を伝えている。路面が乾いているにもかかわらず、ラップタイムはあまり上がっていかず、どのマシンもタイヤをケアしながら次の降雨に備えなければならなかった。
その中でルノーのリカルドがエンジンブローを喫して戦線離脱し、ランオフエリアに停車するまでの前後にバーチャルセーフティカーが発令された。これを受けて、タイヤが苦しかったルクレールが新しいインターミディエイトのセットを装着するべくピットに入り、ヒュルケンベルグも同様に別のセットに交換した。
ピットレーン付近に雨粒が落ち始める中、ニュータイヤを履いたルクレールは古いタイヤを履くライバルたちよりも5秒近く速いラップタイムを刻み、前にいたフェルスタッペンとのギャップを縮めていく。同じタイヤセットを履き続けるドライバーたちはグリップ不足に苦悩しており、マクラーレンのサインツはマシンのコントロールを失ってコースオフを喫した。ギリギリのところでウオールとの接触を免れ、大きくポジションを落としながらもコース復帰を果たしたサインツはポイント圏外に脱落したが、相棒ノリスの後方14番手でレースを続けている。
降っては止むを繰り返す雨の影響で、タイヤ戦略に難しい判断を強いられた各陣営だが、23周目にハースF1がギャンブルに打って出る。マグヌッセンをピットに呼び入れ、ドライのソフトタイヤに交換してコースに送り出したのだ。ホッケンハイムの天候は「雨」と表示されており、マグヌッセンのペースが大きく改善されることはなかったが、ベッテルのタイヤが寿命に近づいていたことから、フェラーリもソフトタイヤ投入を決断。7番手を走っていたベッテルは11番手で隊列に復帰している。
上位勢ではフェルスタッペンがボッタスに接近し、幾度となくオーバーテイクを試みるもポジションを奪いきれず、後方からはルクレールが迫っていたこともあり、レッドブルはフェルスタッペンのタイヤをミディアムに交換する判断を下した。その直後に他の陣営も動き始め、入賞圏外にいたドライバーを中心にドライタイヤを投入していくと、メルセデスがボッタスのタイヤ交換を決めてフェルスタッペンと同様のミディアムタイヤを履かせた。
ソフトタイヤに交換したばかりのノリスがパワーロスによりリタイアを余儀なくされた結果、バーチャルセーフティカーが発令される。ハミルトンはこのタイミングでピットインし、ソフトタイヤを選択してコース復帰したが、その頃、コース上ではルクレールがコントロールを失ってグラベルにはまり、左フロントタイヤをウオールにぶつけてしまった。なんとか離脱しようとしたものの、タイヤがスタックしてしまい、無念のリタイアを喫している。
ルクレールのインシデントを受けてセーフティカーが出動する中、今度はハミルトンがバランスを崩してコース外に飛び出し、停車しているフェラーリマシンのすぐ近くでノーズをウオールにぶつけてしまう。ハミルトンの場合はなんとか走行を続けられたが、ボラード位置を無視する格好でピットレーンに飛び込んだ。予定外のピットストップとあって、クルーは準備できておらず、いつもは冷静なメルセデス陣営が大混乱に陥った。
ドライタイヤには不向きなコンディションだったため、各車が順次インターミディエイトタイヤに交換していたにもかかわらず、メルセデスはソフトタイヤを用意してしまっており、ノーズ交換を進めながら大急ぎで雨天用タイヤを取りに戻り、相当の時間を要しながらもなんとかすべての作業をやり遂げている。
セーフティカーが先導する中、まだドライタイヤを履いていたボッタスは先頭につけていたものの、チームからピットインを指示され、ラップリーダーにはフェルスタッペンが浮上。2番手にヒュルケンベルグ、ボッタスが3番手で隊列に戻り、トロ・ロッソのアルボンが4番手につけており、5番手以下、ハミルトン、サインツ、ライコネン、ベッテル、ガスリー、ジョビナッツィ(アルファロメオ・レーシング)がトップ10に連なっていた。
セーフティカーは33周目の終わりに解除され、ボラードの逆サイドからピットレーンに進入する規約違反を犯したとしてハミルトンに5秒のタイムペナルティが科せられている。
メルセデス勢はボッタスがヒュルケンベルグを、ハミルトンがアルボンをかわしてそれぞれにポジションを上げ、ハミルトンはペースに苦しむヒュルケンベルグも追い抜いて3番手につけた。この時点でフェルスタッペンはリードを9秒近くに広げており、メルセデスコンビもペースアップしながら追いかけていくが、ラップタイムはフェルスタッペンの方が1秒近く速かったため、差は開く一方だ。
しかしながら、ルクレールやハミルトンがコースオフしたのと同じ最終コーナー付近で今度はヒュルケンベルグがコースオフを喫し、必死にステアリングを操作したもののウオールにぶつかり、グラベルにはまったマシンを動かせずにレースを終えることになった。
またもセーフティカーが出動したのを受けて、フェルスタッペンがピットレーンに向かい、新しいインターミディエイトタイヤに交換するも、メルセデス勢は動かず。ハミルトンはタイムペナルティがあるため、チームはピットストップを見送ったようだが、ボッタスもステイアウトを選択している。
セーフティカーの後ろには新しいタイヤセットを手に入れたフェルスタッペンがつけ、ボッタス、ハミルトン、アルボン、サインツ、ガスリー、ライコネン、ジョビナッツィ、クビアト、ベッテルが10番手を走っていた。トップ10のうち、フェルスタッペン以外ではベッテルも4回目のタイヤ交換を終えて新しいインターミディエイトタイヤを履いている。
45周目をもってセーフティカーが解除され、これ以上の降雨はないとの予報がもたらされる中でレース再開を迎えた。タイヤに苦しんでいる様子のハミルトンに複数のドライバーが襲いかかるなど、各所で慌ただしい動きが繰り広げられる一方、ピットレーンもにぎやかで、ラップリーダーのフェルスタッペンをはじめ、多くのドライバーがドライタイヤに交換すべくピットストップを敢行している。
ボッタスを先に呼び入れたメルセデスは次の周回でハミルトンのタイヤ交換も済ませる。ハミルトンはここで5秒ペナルティを消化し、12番手の位置でコースに戻った。
誰よりも早くドライタイヤに履き替えていたレーシング・ポイントのストロールが先頭に躍り出ていたところ、ほどなくしてフェルスタッペンがオーバーテイクし、リードを奪い返している。2番手にストロールがつけた状態で3番手にはクビアトが陣取り、ボッタスは4番手、サインツ、マグヌッセン、アルボン、ガスリー、ベッテル、グロージャンが10番手だ。
ストロールよりも好ペースだったクビアトはトウを得た後、サイド・バイ・サイドに持ち込み、ついに2番手にポジションを上げる。ただ、ストロールの背後にはメルセデスを駆るボッタスが迫っており、クビアトにはボッタスがストロールに引っかかっている時間を生かしてできるだけ多くリードを築く必要があった。
ボッタスがストロールへの攻撃に集中する一方で、ハミルトンがまたもバランスを乱してコースオフを喫し、接触は免れたもののタイヤを痛めてしまっており、5度目のピットストップで別のソフトタイヤに履き替えている。
残り10周を切ってなおメルセデスマシンを抑え続けていたストロールは、一時落ちていたペースを取り戻したようで、ボッタスの攻撃を必死にかわし続けていた。緊迫するバトルに終止符が打たれたのは57周目、ストロールの背中を追いかけながらターン1を通過中にボッタスがスピンを喫してクラッシュしたのだ。すでにハミルトンがポイント圏外に脱落していたメルセデスにとっては悪夢のホームレースと言えるだろう。ボッタスにケガはないが、大破したマシンを撤去するため、再びセーフティカーが隊列を先導することになった。
レースが再開されたのは60周目、フェルスタッペンを先頭にクビアト、ストロール、サインツ、ベッテル、アルボン、ガスリー、ライコネン、グロージャン、ジョビナッツィが入賞圏内につけて残り5周に挑んだが、サインツの一瞬のスキを突いてベッテルがポジションを奪い、4番手に浮上している。
そのベッテルは表彰台を目指して猛チャージをかけ、ストロールを料理して表彰台圏内に入ると、勢いそのままにクビアトもとらえて2番手にポジションを上げた。フェルスタッペンはすでに4秒以上のリードを築いていたものの、今回のレースそのものが物語るように、チェッカーフラッグが振られるまで何が起きるか分からないとあって、最後の最後までペースを緩めることなくプッシュし続けた。
それでも、最後はフェルスタッペンが慎重にマシンを操ってトップチェッカーを受け、7.3秒遅れてベッテルが2位、クビアトが3位フィニッシュを果たしてHondaにダブル表彰台をもたらした。
4位以下、入賞はストロール、サインツ、アルボン、ライコネン、ジョビナッツィ、グロージャン、マグヌッセンが最後の1ポイントを手に入れている。アルボンは終盤にポジションを争っていたガスリーと交錯したインシデントが審議対象になっていたが、おとがめなしの裁定が下っている。アルボンを追いかけていたガスリーは左フロントタイヤをカットしてしまい、最後まで走り切ることなくマシンを降りた結果、14位完走扱いだった。
その他、ハミルトンが11位、クビサとラッセルのウィリアムズ勢も大波乱のレースで完走を果たしている。
メルセデスがノーポイントに終わり、スタートからフィニッシュまでジェットコースターのような展開を見せたドイツGP。
ホンダPU勢はダブル表彰台、トロ・ロッソ・ホンダは、ダブル入賞、ガスリーは10位以内につけていたものの、アルボンとのバトルで左フロントタイヤをカットしてしまったため、最後まで走れきれず、ホンダPU勢4台目の入賞を逃してしまいました。
残念でした!
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大混戦が予想されていた予選はQ1でフェラーリのセバスチャン・ベッテルがトラブルに見舞われてノータイムに終わり、さらにQ3を前に僚友シャルル・ルクレールもまた別の問題を抱えて走行断念を余儀なくされる展開となった結果、メルセデスのハミルトンがポールポジションを獲得。2番手にフェルスタッペンが入り、2列目にはそれぞれの相棒が並ぶことになった。
全長4.574kmを誇るホッケンハイムのレースは気温21.2℃、路面温度25.9℃、湿度88.3%のウエットコンディションでスタート時刻を迎える。C2からC4のドライタイヤを用意していたピレリだが、インターミディエイトタイヤでも厳しいコンディションとあって、全車がウエットタイヤを履いて第1スティントに備えた。加えてセーフティカー先導で進められたフォーメーションラップは1周だけで終わらず、2周、3周と走る中でドライバーたちからは「レースできるからやろうよ」といった無線が飛び交っている。最終的に、3周のフォーメーションラップでスタンディングスタートが宣言され、予定されていた67周から64周に変更されて各車がグリッドに並んだ。
ハミルトンやボッタスが順調に発進していく一方、フェルスタッペンが大きく遅れて後退し、その間に5番手スタートだったライコネン(アルファロメオ・レーシング)が3番手に浮上している。フェルスタッペンの真後ろのグリッドだったガスリーも出だしにつまずいてポジションを落としており、ルクレールが10番手から6番手に上がった。
フェルスタッペンがライコネンをかわして3番手に巻き返した頃、レーシング・ポイントのペレスがスピンを喫してウオールに接触。マシンにダメージを受けて身動きが取れなくなり、セーフティカーが出動した。これを受けて後方にいたベッテルがピットに向かってタイヤをインターミディエイトに交換。その次のラップには先頭集団もタイヤを履き替えている。
5周目に入る手前でセーフティカーが解除され、先頭はハミルトン、2番手にはウエットタイヤを継続したハースF1のマグヌッセンがつけ、ボッタス、フェルスタッペン、ルクレールが5番手でレースを再開させている。ただ、リスタートでグリップを得られずに苦戦していたマグヌッセンは次々とオーバーテイクされ、6周目には6番手まで後退していた。
さらにライコネンもマグヌッセンを料理しようとしたが、追い抜いた直後のコーナーでコースを飛び出してしまい、後方に迫っていたベッテルを抑えながら再度マグヌッセンにオーバーテイクを仕掛けている。マグヌッセンは結局、ライコネンとベッテルに加えてマクラーレンのサインツにもポジションを奪われ、9周目になってようやくインターミディエイトタイヤに交換するためピットに向かう。
この時点ですでにマグヌッセン以外はウエットからインターミディエイトに履き替えており、トップ5にはハミルトン、ボッタス、フェルスタッペン、ルクレール、ヒュルケンベルグが名を連ねた。
周回数がふた桁に乗る頃には一部の路面がドライになりつつあったが、雨雲がサーキット上空に近づいていたため、各チームはドライバーたちにインターミディエイトタイヤでの走行継続を伝えている。路面が乾いているにもかかわらず、ラップタイムはあまり上がっていかず、どのマシンもタイヤをケアしながら次の降雨に備えなければならなかった。
その中でルノーのリカルドがエンジンブローを喫して戦線離脱し、ランオフエリアに停車するまでの前後にバーチャルセーフティカーが発令された。これを受けて、タイヤが苦しかったルクレールが新しいインターミディエイトのセットを装着するべくピットに入り、ヒュルケンベルグも同様に別のセットに交換した。
ピットレーン付近に雨粒が落ち始める中、ニュータイヤを履いたルクレールは古いタイヤを履くライバルたちよりも5秒近く速いラップタイムを刻み、前にいたフェルスタッペンとのギャップを縮めていく。同じタイヤセットを履き続けるドライバーたちはグリップ不足に苦悩しており、マクラーレンのサインツはマシンのコントロールを失ってコースオフを喫した。ギリギリのところでウオールとの接触を免れ、大きくポジションを落としながらもコース復帰を果たしたサインツはポイント圏外に脱落したが、相棒ノリスの後方14番手でレースを続けている。
降っては止むを繰り返す雨の影響で、タイヤ戦略に難しい判断を強いられた各陣営だが、23周目にハースF1がギャンブルに打って出る。マグヌッセンをピットに呼び入れ、ドライのソフトタイヤに交換してコースに送り出したのだ。ホッケンハイムの天候は「雨」と表示されており、マグヌッセンのペースが大きく改善されることはなかったが、ベッテルのタイヤが寿命に近づいていたことから、フェラーリもソフトタイヤ投入を決断。7番手を走っていたベッテルは11番手で隊列に復帰している。
上位勢ではフェルスタッペンがボッタスに接近し、幾度となくオーバーテイクを試みるもポジションを奪いきれず、後方からはルクレールが迫っていたこともあり、レッドブルはフェルスタッペンのタイヤをミディアムに交換する判断を下した。その直後に他の陣営も動き始め、入賞圏外にいたドライバーを中心にドライタイヤを投入していくと、メルセデスがボッタスのタイヤ交換を決めてフェルスタッペンと同様のミディアムタイヤを履かせた。
ソフトタイヤに交換したばかりのノリスがパワーロスによりリタイアを余儀なくされた結果、バーチャルセーフティカーが発令される。ハミルトンはこのタイミングでピットインし、ソフトタイヤを選択してコース復帰したが、その頃、コース上ではルクレールがコントロールを失ってグラベルにはまり、左フロントタイヤをウオールにぶつけてしまった。なんとか離脱しようとしたものの、タイヤがスタックしてしまい、無念のリタイアを喫している。
ルクレールのインシデントを受けてセーフティカーが出動する中、今度はハミルトンがバランスを崩してコース外に飛び出し、停車しているフェラーリマシンのすぐ近くでノーズをウオールにぶつけてしまう。ハミルトンの場合はなんとか走行を続けられたが、ボラード位置を無視する格好でピットレーンに飛び込んだ。予定外のピットストップとあって、クルーは準備できておらず、いつもは冷静なメルセデス陣営が大混乱に陥った。
ドライタイヤには不向きなコンディションだったため、各車が順次インターミディエイトタイヤに交換していたにもかかわらず、メルセデスはソフトタイヤを用意してしまっており、ノーズ交換を進めながら大急ぎで雨天用タイヤを取りに戻り、相当の時間を要しながらもなんとかすべての作業をやり遂げている。
セーフティカーが先導する中、まだドライタイヤを履いていたボッタスは先頭につけていたものの、チームからピットインを指示され、ラップリーダーにはフェルスタッペンが浮上。2番手にヒュルケンベルグ、ボッタスが3番手で隊列に戻り、トロ・ロッソのアルボンが4番手につけており、5番手以下、ハミルトン、サインツ、ライコネン、ベッテル、ガスリー、ジョビナッツィ(アルファロメオ・レーシング)がトップ10に連なっていた。
セーフティカーは33周目の終わりに解除され、ボラードの逆サイドからピットレーンに進入する規約違反を犯したとしてハミルトンに5秒のタイムペナルティが科せられている。
メルセデス勢はボッタスがヒュルケンベルグを、ハミルトンがアルボンをかわしてそれぞれにポジションを上げ、ハミルトンはペースに苦しむヒュルケンベルグも追い抜いて3番手につけた。この時点でフェルスタッペンはリードを9秒近くに広げており、メルセデスコンビもペースアップしながら追いかけていくが、ラップタイムはフェルスタッペンの方が1秒近く速かったため、差は開く一方だ。
しかしながら、ルクレールやハミルトンがコースオフしたのと同じ最終コーナー付近で今度はヒュルケンベルグがコースオフを喫し、必死にステアリングを操作したもののウオールにぶつかり、グラベルにはまったマシンを動かせずにレースを終えることになった。
またもセーフティカーが出動したのを受けて、フェルスタッペンがピットレーンに向かい、新しいインターミディエイトタイヤに交換するも、メルセデス勢は動かず。ハミルトンはタイムペナルティがあるため、チームはピットストップを見送ったようだが、ボッタスもステイアウトを選択している。
セーフティカーの後ろには新しいタイヤセットを手に入れたフェルスタッペンがつけ、ボッタス、ハミルトン、アルボン、サインツ、ガスリー、ライコネン、ジョビナッツィ、クビアト、ベッテルが10番手を走っていた。トップ10のうち、フェルスタッペン以外ではベッテルも4回目のタイヤ交換を終えて新しいインターミディエイトタイヤを履いている。
45周目をもってセーフティカーが解除され、これ以上の降雨はないとの予報がもたらされる中でレース再開を迎えた。タイヤに苦しんでいる様子のハミルトンに複数のドライバーが襲いかかるなど、各所で慌ただしい動きが繰り広げられる一方、ピットレーンもにぎやかで、ラップリーダーのフェルスタッペンをはじめ、多くのドライバーがドライタイヤに交換すべくピットストップを敢行している。
ボッタスを先に呼び入れたメルセデスは次の周回でハミルトンのタイヤ交換も済ませる。ハミルトンはここで5秒ペナルティを消化し、12番手の位置でコースに戻った。
誰よりも早くドライタイヤに履き替えていたレーシング・ポイントのストロールが先頭に躍り出ていたところ、ほどなくしてフェルスタッペンがオーバーテイクし、リードを奪い返している。2番手にストロールがつけた状態で3番手にはクビアトが陣取り、ボッタスは4番手、サインツ、マグヌッセン、アルボン、ガスリー、ベッテル、グロージャンが10番手だ。
ストロールよりも好ペースだったクビアトはトウを得た後、サイド・バイ・サイドに持ち込み、ついに2番手にポジションを上げる。ただ、ストロールの背後にはメルセデスを駆るボッタスが迫っており、クビアトにはボッタスがストロールに引っかかっている時間を生かしてできるだけ多くリードを築く必要があった。
ボッタスがストロールへの攻撃に集中する一方で、ハミルトンがまたもバランスを乱してコースオフを喫し、接触は免れたもののタイヤを痛めてしまっており、5度目のピットストップで別のソフトタイヤに履き替えている。
残り10周を切ってなおメルセデスマシンを抑え続けていたストロールは、一時落ちていたペースを取り戻したようで、ボッタスの攻撃を必死にかわし続けていた。緊迫するバトルに終止符が打たれたのは57周目、ストロールの背中を追いかけながらターン1を通過中にボッタスがスピンを喫してクラッシュしたのだ。すでにハミルトンがポイント圏外に脱落していたメルセデスにとっては悪夢のホームレースと言えるだろう。ボッタスにケガはないが、大破したマシンを撤去するため、再びセーフティカーが隊列を先導することになった。
レースが再開されたのは60周目、フェルスタッペンを先頭にクビアト、ストロール、サインツ、ベッテル、アルボン、ガスリー、ライコネン、グロージャン、ジョビナッツィが入賞圏内につけて残り5周に挑んだが、サインツの一瞬のスキを突いてベッテルがポジションを奪い、4番手に浮上している。
そのベッテルは表彰台を目指して猛チャージをかけ、ストロールを料理して表彰台圏内に入ると、勢いそのままにクビアトもとらえて2番手にポジションを上げた。フェルスタッペンはすでに4秒以上のリードを築いていたものの、今回のレースそのものが物語るように、チェッカーフラッグが振られるまで何が起きるか分からないとあって、最後の最後までペースを緩めることなくプッシュし続けた。
それでも、最後はフェルスタッペンが慎重にマシンを操ってトップチェッカーを受け、7.3秒遅れてベッテルが2位、クビアトが3位フィニッシュを果たしてHondaにダブル表彰台をもたらした。
4位以下、入賞はストロール、サインツ、アルボン、ライコネン、ジョビナッツィ、グロージャン、マグヌッセンが最後の1ポイントを手に入れている。アルボンは終盤にポジションを争っていたガスリーと交錯したインシデントが審議対象になっていたが、おとがめなしの裁定が下っている。アルボンを追いかけていたガスリーは左フロントタイヤをカットしてしまい、最後まで走り切ることなくマシンを降りた結果、14位完走扱いだった。
その他、ハミルトンが11位、クビサとラッセルのウィリアムズ勢も大波乱のレースで完走を果たしている。
メルセデスがノーポイントに終わり、スタートからフィニッシュまでジェットコースターのような展開を見せたドイツGP。
ホンダPU勢はダブル表彰台、トロ・ロッソ・ホンダは、ダブル入賞、ガスリーは10位以内につけていたものの、アルボンとのバトルで左フロントタイヤをカットしてしまったため、最後まで走れきれず、ホンダPU勢4台目の入賞を逃してしまいました。
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