22日(日)、夜景の美しいシンガポール市街地サーキットで2019年FIA F1世界選手権第15戦シンガポールGP決勝レースが開催され、フェラーリのベッテルが優勝した。
予選ではライバルを驚かせるほどのペースを見せつけたフェラーリのルクレールがポールタイムを記録し、0.191秒差でメルセデスのハミルトンがフロントローを確保。もう1台の跳ね馬を駆るベッテルは最初のランで暫定ポールにつけるも、2回目のアタックでタイムを伸ばせずに3番手にとどまった。
なお、ルノーのリカルドは予選Q3に進んで8番手タイムを残したが、セッション後にMGU-Kの違反が見つかり、予選結果を剥奪されている。予選Q1の最速タイムをマークしたラップでリカルドのルノーマシンに搭載されたMGU-Kがレギュレーションで許可されている120kw以上の電気エネルギーを発生していたことが発覚したのだ。リカルドは最後尾の20番グリッドに並び、新品のミディアムタイヤを装着してスタートに臨んでいる。
他に、フリー走行でクラッシュを喫したレーシング・ポイントのペレスがギアボックスを交換して予選とレースに挑むこととなり、5グリッド降格処分を受けたため、予選11番手だったペレスは15番グリッドに並んだ。
全長5.065kmのシンガポール市街地サーキットに夜の帳が下りる中、人工照明が灯され、61周で争われた決勝レースは気温29.8℃、路面温度33.7℃、湿度64.5%のドライコンディションでスタート時刻を迎える。ピレリタイヤはC3からC5の組み合わせが用意され、決勝レースではハードもしくはミディアムのコンパウンドを使用することが義務付けら
れた。
注目のスタートはポールシッターのルクレールが好発進を決め、ハミルトンが2番手を死守するもフェラーリの滑り出しが良く、ベッテルから激しいプレッシャーを受ける。それでも、なんとか持ちこたえたハミルトンはオープニングラップをスタート位置と同じ2番手で終え、ベッテル、フェルスタッペン(レッドブル)、ボッタス(メルセデス)、アルボン(レッドブル)と予選のオーダーと変化なく2周目に突入した。
その中で8番手スタートだったルノーのヒュルケンベルグがピットレーンに飛び込み、ウィリアムズのラッセルとマクラーレンのサインツも同様にピットに向かっている。ラッセルはスタート直後のターン1でフロントウイングがリカルドのルノーマシンと接触しており、ノーズを交換すると共にタイヤをミディアムからハードに履き替えた。
ヒュルケンベルグは左フロントタイヤがパンクチャーに見舞われたとのことで、どうやらターン5でサインツと交錯してしまったようだ。サインツは右リアタイヤの取り外しに時間を要してしまい、なんとかハードタイヤに交換してピットアウトするも、コースに戻った時点ですでに周回遅れにされている。
スタート後に混乱が生じることの多いシンガポールのレースだが、今年は多少のインシデントが発生するも大きなアクシデントはなく、ルクレールを先頭とする上位6台は1秒前後の間隔で隊列を組みながら接近戦を繰り広げた。7番手につけていたノリス(マクラーレン)はアルボンから徐々に遅れ始め、10周目を迎えた時点で前の集団から3.4秒離されていた。
それでも、予選Q2でベストタイムを記録したソフトタイヤでスタートした上位勢がデグラデーションを抱えてラップタイムが1分49秒台にとどまる中、フレッシュタイヤを履いてレースに臨んだ面々の方が好タイムを刻み始めると、ラップリーダーのルクレールから12番手に上がっていたリカルドまでが18秒差の団子状態となり、さらにギャップは少しずつ縮まっていく。
リカルドにかわされ、レーシング・ポイントの2台にもオーバーテイクを許したトロ・ロッソのクビアトは13周目の終わりに最初のピットストップに向かい、ハードタイヤに履き替えた。レース序盤はペースに苦しんでいた様子のクビアトだが、タイヤを交換してからはファステストラップを刻むなどペースアップに成功している。
タイヤのケアが必要とあって思うように後続に対するリードを築けなかったルクレールが自己ベストを刻んだのは16周目。次のラップには追いかけるハミルトンがタイヤのタレを報告しており、上位勢のタイヤ交換が迫っている様子をうかがわせた。ルクレールのペースが上がったのに伴ってハミルトンやベッテル、フェルスタッペンも自己ベストタイムを更新している。
ピットストップのタイミングを探る上位勢の中で最初に動いたのはフェラーリとベッテルだ。フェルスタッペンも同時にピットインしており、2人ともハードタイヤに交換してコースに戻っている。ベッテルは10番手、ヒュルケンベルグを挟んでフェルスタッペンは12番手の位置につけた。フェルスタッペンはボッタスとポジションを争っていたため、ヒュルケンベルグを早めに追い抜く必要があったが、オーバーテイクの難しいシンガポールながらスペースを見いだして早々とルノーマシンを料理している。
さらにルクレールとアルボンが次のラップでピットに入るも、ルクレールが戻った位置はベッテルの後ろだった。ベッテルはピットストップにおよそ3秒かかっており、決して最高速のタイヤ交換とはならなかったが、それでもルクレールの前に出ることに成功している。
一方、メルセデスはハミルトンに対してルクレールと逆の動きを取るように指示したため、ハミルトンはステイアウトを選び、ボッタスもコースにとどまっている。メルセデスの動きに注目が集まる中、先にピットに呼ばれたのはボッタスで、23周目に入るタイミングでハードタイヤに交換。第1スティント終盤にはコンマ数秒差でフェルスタッペンを追いかけていたボッタスだが、ピットアウトした時点でフェルスタッペンに6秒以上も引き離されていた。
メルセデスはセーフティカー導入の可能性にかけているのか、ハミルトンの第1スティントはさらに長く続く。ハミルトンのラップタイムは1分49秒台に落ち込んでおり、タイヤ交換を済ませたライバルたちは1分47秒台をキープしている。ハミルトンから15秒離れた位置にはアルファロメオ・レーシングのジョビナッツィが控え、トロ・ロッソのガスリー、リカルド、レーシング・ポイントのストロールが1秒前後のギャップで連なった。いずれもスタートと同じタイヤを履き続けており、ガスリーがハード、それ以外はミディアムタイヤだ。
25周を走り終えると同時にピットインしたハミルトンはハードタイヤを履いて僚友ボッタスの目前で隊列に復帰。フェルスタッペンに5.6秒遅れとなったハミルトンはボッタスとその真後ろにいたアルボンを従える格好で、ペースアップに努めた。
ハミルトンのピットインでラップリーダーに躍り出たジョビナッツィはガスリーとリカルドからプレッシャーを受けながらも必死にポジションを守っていたが、レースの折り返し地点を目前にフェラーリ勢が追いつき、ストロールをかわしたベッテルがリカルドもコース上でオーバーテイクしてガスリーにも攻撃を仕掛けていく。ガスリーに対する追い抜きではトロ・ロッソマシンをコース外に押し出す形になりながらも、2番手に浮上したベッテルはすぐさまジョビナッツィも料理してラップリーダーに。ガスリーとの一件はスチュワードに報告されたが、おとがめなしの裁定が下っている。
ガスリーが最初で最後のピットストップに向かったのはベッテルが33周目に入ったタイミングだ。新しいミディアムタイヤに交換したガスリーは16番手で隊列に復帰した。この時点でまだジョビナッツィとリカルドは第1スティントを続けていたが、リカルドがボッタスとアルボンに続いてジョビナッツィをオーバーテイクしようとした際、リカルドの右リアタイヤとジョビナッツィのマシンが接触してしまい、リカルドはパンクチャーに見舞われる。コース外に押し出されたジョビナッツィは衝撃でマシンを弾ませており、多かれ少なかれ接触の影響を受けていたと思われるが、そのままピットインしてタイヤ交換を完了した。
パンクしたタイヤのままピットを目指したリカルドは大きくタイムを失いながらもチームのもとにたどり着き、ハードタイヤに履き替えてレースを継続したものの、それまでに稼いだ大幅なポジションアップがご破算となり、一時は18番手まで後退してしまう。
しかしながら、同じ頃、グロージャンがラッセルを追い抜こうとしたところ、ウィリアムズマシンにぶつかってしまい、その反動でラッセルがターン8のウオールに接触。マシンにダメージを受けてそのまま停車したため、黄旗が振られた後にセーフティカーが導入される。上位勢に動きはなかったものの、中団グループにはタイヤ交換に向かうドライバーが複数おり、ルノーはヒュルケンベルグのタイヤをハードから新しいミディアムに、トロ・ロッソはクビアトをピットに呼んで新品のソフトタイヤを履かせてコースに送り出した。タイヤ交換を終えたばかりだったジョビナッツィも再度ピットインしてソフトタイヤに履き替えている。
ラッセルとぶつかったグロージャンは緊急ピットインしてノーズを交換、タイヤもソフトタイヤに変えてコースに戻った。
36周目に出動したセーフティカーは40周目の終わりに解除され、ベッテル、ルクレール、フェルスタッペン、ハミルトン、ボッタス、アルボンの順に加速していった。リスタートでトップ10にオーダーの変化はなかったものの、ガスリーがストロールを追い抜いて11番手に上がっている。ストロールはさらにヒュルケンベルグやクビアトにもポジションを奪われ、バトルを繰り広げる中で左フロントタイヤにパンクチャーを抱えたようで緊急ピットインを強いられた。
レーシング・ポイントにさらなる悪報がもたらされたのは3周後。ペレスがメカニカルトラブルに見舞われてスローダウンしてしまったのだ。ペレスはコース脇にマシンを止めたため、再びセーフティカーが出動するも、上位勢はこのタイミングでも動かず、ピットストップを実行したのはストロールだけだ。
44周目から47周目までのセーフティカーピリオドを経て迎えたリスタートから3周後、またもセーフティカーが出動することに。クビアトがライコネン(アルファロメオ・レーシング)をオーバーテイクしようとインサイドに飛び込んだところ、2台が接触、コーナーを曲がれずに直進を余儀なくされ、クビアトはランオフエリアを通ってコース復帰を果たしたが、サスペンションを破損したライコネンはマシンを止めてリタイアを強いられている。この一件はレース後に審議されることが発表された。
今回のセーフティカーは2周でお役御免となり、生き残る17台がラスト10周のレースに集中。終盤にセーフティカー導入が相次ぎ、フィールド全体が接近した状態だったため、レース終了まで各所で激しいバトルが繰り広げられるも、トップ10ドライバーの順位が変わることはなく、ベッテルがチームメイトの猛追を振り切って優勝を果たした。ルクレールが2位、フェルスタッペンが3位で表彰台に上っている。
4位以下入賞はハミルトン、ボッタス、アルボン、ノリス、ガスリー、ヒュルケンベルグ、ジョビナッツィだ。クビアトは15位でフィニッシュしている。
ホンダPU勢、レッドブルのフェルスタッペンが3位表彰台、アルボンが6位入賞、トロロッソのガスリーが8位入賞、クビアトは残念ながら15位でしたが、次のロシア、日本で優勝、4台全車の入賞するよう頑張っていいですね!