全トヨタ労働組合(ATU)は女性ユニオン名古屋に協力を得て2021年1月26日、①組合員Mさんに対する同僚からのセクハラを止めさせること②Mさんが業務で使用し被曝した劇物取扱・管理問題の対処について、アイシン精機(本社刈谷市)と団体交渉を行いました。
同僚からのセクハラ行為
Mさんは2019年6月に衣浦工場・技術員室から同工場、品質管理部、信頼性へ異動しました。異動当初から職場の同僚達からの嫌がらせを受けていたのですが、2020年10月頃、同僚Nから「Mさんは魅力的だ。これは男にしか分からない。俺は我慢しているんだよ。」と言われたり、赤ちゃん言葉で話しかけられるなど、Nの行為がエスカレートした為、MさんはNに対して抗議すると共に上司へも訴えました。Nは上司から厳しく叱責され、Mさんに対して謝罪文も提出しました。
業務で劇薬に被曝
Mさんは業務上、劇物を使用して試験評価をします。劇物・硝酸銅を使用して業務を行っていたMさんは、鼻根の痛み・鼻水・鼻血・頭痛、耳鳴りを発症し、上司の付き添いで耳鼻咽喉科を受診しました。診断は「ただの鼻風邪」と済まされたのです。抗生剤を含む沢山の薬を処方されましたが、症状は1ヶ月間も続き、苦しみました。
Mさんの訴えにより現場ではいくつかの改善措置が取られました。まず、化学薬品を使った業務は一旦停止となっており、これまでに着用していた不織布マスクや眼鏡は、薬品メーカー指示の防塵マスクとゴーグルに変更になりました。また防塵ダクトの設置も進められています。
このような現場での進展に踏まえて、ATUと女性ユニオン名古屋は、①Nの処分と職場・人事・管理体制の刷新②危険薬物の使用、保管、管理体制などについての調査と改善を申し入れました。
セクハラと認めない会社の態度
1月26日、団交での会社回答は驚くべきものでした。
セクハラ問題については、
「Nは、『そんなことはやっていない。』『魅力的だ』云々は『Mさんが元気がないから勇気づけようと思って言った』また『謝罪文はMさんにせっつかれて、早く終わらせたいという気持ちから言われるままに書いた』と言っている。MさんとNの証言が一致しない為、セクハラとは判断できない。」というものでした。前職場(技術員室)の元上司Tによるセクハラ事件の時と同様に、パワハラ加害者の弁明をもって「セクハラとは判断できない」として、事態の真相を明らかにしようとしないのは、会社としてセクハラを容認していることになるのではないでしょうか。現職場のNは上司から叱責され謝罪文も出しています。Nがセクハラ行為をしていないならば、上司からの叱責を受入れ謝罪文を出すなどあり得ません。このような明白な事実さえ無視し、セクハラ行為を認めない会社の態度はセクハラを助長する事になります。アイシン精機ではセクハラが蔓延しているとウワサされていますが、このような会社の態度も大きな要因ではないでしょうか。
また劇薬問題について会社側は問題ないと居直る
「一昨年(09年)、Mさんから問い合わせがあった際、使い方・管理など現状で問題ない事を伝えている。」と回答をしてきました。これに対し、組合側から「薬品メーカーの資料では防塵マスク、ゴーグル着用、防塵ダクト設置を指示しているではないか!」と指摘しましたが、会社側は「使用頻度、使用量などから、その必要はない。」と居直りました。現場では既にMさんからの訴えで改善が進んでいるというのに、会社側としてMさんに危険作業やらせているという実態を断固として認めようとしません。
このように会社側は両組合からの指摘に対して絶対に受け付けないという、かたくなで子供っぽい態度を取っているのですが、現場ではMさんの奮闘と改善も進んでおり、これはとても重要なことです。私たちATU・女性ユニオン名古屋としても、現場での働き方・働く環境の改善を支援し、そのためにも粘り強く会社との交渉を進めていきます。