アオイ科のシベ観察、2つめは タチアオイ です。
とりあえず、よく見るタチアオイです(^^ゞ
まず話題は
学名について^^
タチアオイはアオイ科の多年草で、いまでは 学名は Althaea rosea または Alcea rosea となっています。
現在の学名には原産地の情報(たとえば japonica とか・・・)がありません。
タチアオイの原産地は かつてはムクゲと同じく 中国と考えられていましたが、いまでは「ビロードアオイ属の
トルコ原産種と
東ヨーロッパ原産種との交雑種(Althaea setosa × Althaea pallida)とする説が有力です」(Kazuya Koga 「タチアオイ」)
話が脱線しますが、同じアオイ科の木
ムクゲの(現在の)学名は Hibiscus
syriacus です。種小名シリアクスは「シリアの」という意味ですが、ムクゲの原産地はいまでも中国と考えられています。
それではなぜ「シリアの」という種小名がついたのでしょうか?
ムクゲの古い学名は「Althaea frutex で 「低木のタチアオイ」とされていました。
ここで ムクゲとタチアオイがつながります。
で、本題のタチアオイは 12世紀ごろに十字軍によってシリアから運ばれてきたと伝えられています。
英名のHollyhockは、十字軍が(当時のシリアの)(十字軍にとって聖地の)エルサレムからこの花をイギリスに持ち帰ったのが タチアオイのヨーロッパでの始まりで、アングロサクソンでの「mallow(アオイ科の植物)」の名前が「hoc」だったので、ホーリーホックとは「聖地からきた「hoc」」という意味らしいのです。
(で、その逸話が 新しいムクゲの学名のほうに引き継がれて ムクゲの新学名が Hibiscus
syriacus となったというわけ)
話が長くなりましたm(_ _)m
あとは たくさん撮った タチアオイのシベを 経過順
ステージ順に並べてみました。
(ステージが間違ってる画像もあるかもしれないので、よく吟味しながらご覧ください)
ステージ 1
最初のステージはおしべの展開です。中央の太い円柱から雄しべの花糸が伸びて先に葯(花粉を入れた袋)を付けていますが・・・
実は この円柱そのものが 沢山の雄しべの花糸がくっついて出来上がったものなのです。
上の画像をよく見ると円柱の表面に筋があります。
(↑ 木綿糸の束のイメージです)
こんな風に 花糸が束になっているイメージです。
そして 雄しべ最盛期の花蕊はおしべの円柱が全身 花粉で覆われています。
ステージ 2
ところが、つぎに不思議なことが起こります!
その時期というのは、花粉がほぼ出尽くしたと思われる時期です。
不思議なことというのは 雄しべの円柱の先から 雌しべの棒がタケノコのように生えてくるのです。
(トップから3枚の画像もみな このステージのものでした)
雄しべの円柱と言ってきたものは 実は中空の円筒だったのです。
雌しべといっても、柱頭は出来上がっていなく 単なる棒といった感じですが・・・
よくみると、雌しべの棒と言っても、将来 複数の柱頭になる数だけ管の集まったものであることが分かります。
(まだ幼い未分化の柱頭ですが、この画像では 早くも 花粉が付着しています)
ステージ 3
雌しべの柱頭が花開きました!
めしべが 雄しべの筒の中を通って 雄しべの活動時期が終わった後に 柱頭を展開するという方式は アオイ科の花だけではありません。
キク科の花も けっこう似た仕組みをもっています。
ステージ 4
そして、虫が運んでくれたであろう花粉が めしべの柱頭につきます。
「虫が運んでくれたであろう花粉」といったのは、ひょっとして、自分の雄しべの花粉のこともありうるからです。
でも雌しべの成熟期は 雄しべの活動は終わっています。
柱頭に付いた「数の子のような花粉」は 他の花から 虫が運んでくれたものと想定しておきましょう(^^ゞ