アブリル - どこにでもあり、どこにもない

岡崎平野を中心とする 植物 と カメラの対話

ダマスカスから来たニゲラ、チリから来たアヤメ

2024-05-30 17:00:00 | みんなの花図鑑
初出 2021-5-19

ニゲラ・ダマスケナ

略してニゲラといってますが、「ニゲラ・ダマスケナ (Nigella damascena)」(和名クロタネソウ)のことですね。
葉は細かく裂けて糸状となっています。



「属名の Nigella はラテン語の「Niger(黒い)」からきている。」(みんなの花図鑑「ニゲラ(クロタネソウ)」)
ここで質問。
ラテン語の Niger は 「r」で終わっています。それがどうして「L」という音化を持つようになったのでしょうか??
英文Wictionaryの 「Nigella」 を見ると、
From Latin nigellus, diminutive of niger (“black”)
(ラテン語の nigellus すなわち ラテン語のniger (“黒い”))の指小語)
ということで 「黒っぽい」くらいの意味の ラテン語 nigellus に由来するということらしいです。
Nigella < nigellus < niger
という rから L への変化は 本当にあったらしいのです。
〔蛇足〕
ところで、Niger といえば、「ニジェール(Niger)」という国が西アフリカにありますが、これは 「黒い」という意味を持つのでしょうか?
これも調べてみると、「ニジェール(Niger)」と隣接する「ナイジェリア(Nigeria)」(← Nigerの英語読み)両国の国名は 両国を貫流する大河「ニジェール川」に因んで命名されたものらしいのです。
では 「ニジェール」とは「黒い」という意味なのでしょうか?
調べてみると、そもそもNiger というのは、現地で「川」を指す言葉だったようです。





ブルーの部分は 花弁ではなく萼片ということです。




「種小名の damascena は「(シリアの)ダマスカスの」という意味である。」(みんなの花図鑑「ニゲラ(クロタネソウ)」)

ここで、またまた質問。
ニゲラ・ダマスケナ(くろたねそう)は 地中海沿岸が原産地です(みんなの花図鑑)。どうして 地中海沿岸では無いダマスカスが種小名になったのでしょうか??
これも以前調べたところによると
「damascenaは、この植物がダマスカスからヨーロッパにもたらされたことから」(Love in a mist「ニゲラの花言葉」)とのことです。
そういうことで、地中海沿岸で終わるのでなく「原産地:地中海沿岸~西アジア」(花と観葉植物(葉っぱの岬)「ニゲラ」)とするのがより歴史的と思われます。


名前の由来もよく分からないけれど、花序の構造も実に摩訶不思議な花です。

中央で よじれて伸びているのが雌しべで 5個あります。


その周囲に 大きな葯をもった雄しべが 多数 取り巻いています。




雄しべとブルーの萼片との間に 花弁の退化した「蜜腺鱗片」があるはずなのですが・・・
この花ではよく分からないです。
上の GIF画像で焦点を当てている部分がそれでしょうか?






果実もまた特徴的な形をしています。
和名「黒種草(くろたねそう)」
この袋の中に 真っ黒な種があるのですね






チリアヤメ


「チリアヤメは、芝生の中などで散らばるように点々と可憐な花を咲かせ、小さいながらも鮮やかな濃いブルーの色がよく目立ちます。花は朝開いて夕方にはしぼむ一日花ですが、次々と咲き続けます。」(みんなの趣味の園芸「チリアヤメ(ハーベルティア)とは」)



芝生の中などに生えていると知らずに踏んづけてしまいます。Oさんのお宅で初めてこの花を知って「チリアヤメ」の「チリ」とは塵(ちり)のことかしら?と一瞬思ったほどです。



実際は原産地が南米のチリやアルゼンチンで、大正時代にチリから入ってきたので「チリ・アヤメ」と呼ばれてるようです。




(いちばん右はオオバコの葉?)
学名:Herbertia amoena (Herbertia lahue)(Herbertia pulchella)
属名 Herbertia (チリアヤメ属)は イギリスの分類学者Dean William Herbertの名に因んだもの。
種小名の amoena は amoenus (愛すべき、人に好かれる)の女性形。
別種小名の lahue(ラウエ) は仏人名由来らしいのですが、詳細は不詳です。
別種小名の pulchella は pulchellus(美しい、 愛らしい)の女性形。







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ネズミモチの仲間、ややこしい

2024-05-30 07:00:00 | みんなの花図鑑
ネズミモチ1

とても良い匂いがします。
ネズミモチとトウネズミモチの花はとてもよく似ています。



でも花期がずれているので、それでたいていは区別できます。
ネズミモチの花は5月の終わり頃から6月いっぱい;
「トウネズミモチの花は(中略)6月の後半から7月にかけて咲く。」(植物雑学事典「トウネズミモチ」)




おしべの花粉を入れた袋のことを「葯」といいます。


ネズミモチの「葯はクリーム色〜赤味がかった薄茶色。」(植物写真鑑「ネズミモチ」)
トウネズミモチの「葯は赤味がかった薄茶色。」(植物写真鑑「トウネズミモチ」)
・・・ということで、葯の色で両者を区別するのは難しいようです。






ネズミモチ2



豊田安城自転車道





花でネズミモチとよく似ているトウネズミモチを区別するときは
ネズミモチ⇒ 花筒の長さが長く、2つの雄しべの突きだす角度が平行に近く、葯はお互いに向き合う。
トウネズミモチ⇒ 花筒が相対的に短いので、雄しべが花冠の外へより突き出し、2つの雄しべがハの字に開いている。
 という特徴が言われていますが、実際は時期とか個体差などあり、花だけでは区別は難しいようです。

〔参考〕トウネズミモチ





フクロモチ

フクロモチは、このように密な総状花序または円錐花序の形で咲くのですぐ分かります。



フクロモチは ネズミモチの変異種です。
ネズミモチが モクセイ科イボタノキ属で、学名は Ligustrium japonica 。
フクロモチは モクセイ科イボタノキ属で、学名は Ligustrium japonica var.rotundifolium
学名の var. は 変種の意です。rotundifolium は丸い葉と言う意味だそうです。





花の咲き方は ネズミモチよりイボタノキのほうに似ている気がします。
さらに、花筒の先が4つに裂けて開いているさまは 同じモクセイ科のキンモクセイやギンモクセイを思わせます。





イボタノキ

イボタノキの花は 花筒がとても長いのが特徴です。 ネズミモチも トウネズミモチより長かったので、 2本の花弁の上に突き出している雄しべの長さがトウネズミモチより短かったのですが、イボタノキの雄しべは花弁とほとんど同じくらいの長さなので、雌しべを保護しているような感じです。




イボタノキの葉は ネズミモチに似ていますが、より柔らかそうな感じがします。
学名:Ligustrum obtusifolium
種小名の obtusifolium は 葉の先が鈍頭の意。
雄しべは 短く縮こまっている感じがしますが、葯(花粉が入った袋)は ネズミモチよりずっと長く大きいです。







コミノネズミモチ
(シナイボタ、チャイニーズ・プリベット)

最近よく見かける木です。
この木の名前はコミノネズミモチまたはシナイボタ または チャイニーズ・プリベットが正解ですが・・・



通販サイトでは ほとんどがセイヨウイボタまたはヨウシュイボタ または プリペットと誤って(あるいは故意に間違えて)売られている木です。(そもそもプリットという木はどこにもありません、 Privetなのでプリットが正解です)



明瞭な区別点があります。葯の色です。
「雄しべは2個で花冠から長く突き出し、雌しべは花冠から少し突き出る。葯は小豆色。」(葉と枝による樹木検索図鑑)



繰り返しますが、
この木(コミノネズミモチまたはシナイボタ)の雄しべの葯はあずき色をしています。
それに対し、セイヨウイボタ別名プリベットの雄しべの葯の色は黄色いということです。
日本では 正しい(葯が黄色い)セイヨウイボタはほとんど見ることが出来ません。
よくあることですが・・・
安価でよく似たコミノネズミモチがあり、わざわざヨーロッパから導入する必要が無かったから、コミノネズミモチを中国から輸入して「セイヨウ」と偽って売っているというのが実情のようです。





では 本当のセイヨウイボタはどのようなものかというと・・・
愛知県緑化センターにありました。

セイヨウイボタ


樹名板に「セイヨウイボタ」と書いてありました。



コミノネズミモチ(シナイボタ)のほうは「葯はピンク〜紫色」でしたが、
「セイヨウイボタ(Ligustrum vulgare)は葯が黄色」(松江の花図鑑)とあります。
これなら区別できるかもしれないですね



「ヨウシュイボタは、コミノネズミモチ(シナイボタ)より葉の幅が狭く、先端は尖っており、雄しべは花冠から突き出さず葯の色は黄色」(葉と枝による樹木検索図鑑)




まとめると、
学名 Ligustrum vulgare
 セイヨウイボタ、
 別名プリベット
 ヨウシュイボタ
(葯は黄色)
 日本ではほとんど見られない

学名 Ligustrum sinense
 コミノネズミモチ、
 別名 チャイニーズ・プリベット
 シナイボタ
 (葯はあずき色)
 日本でよく見るのはほとんどがこちら








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