台湾の対岸に位置する中国・麗水大(浙江省麗水)の技術者グループが「海底ケーブル切断装置」を特許出願していたことが分かった。台湾周辺やバルト海では海底ケーブルの損傷が相次ぎ、中国船などの関与が疑われている。日本の通信インフラに関わる事態だが、政府は見解を回答できないとしている。
米誌ニューズウィークによると、海底ケーブル切断装置は2009年に中国国家海洋局(現・自然資源部)の技術者が特許出願した「海洋曳航型切断装置」を基に、麗水大が20年に出願。海底に下ろしたいかりを引っ張る方式で、「緊急事態の際にはケーブルを切断する必要があり、高速で低コストの切断装置が必要」としている。
ペンシルベニア大クラインマンエネルギー政策センターの上級研究員、ベンジャミン・シュミット氏は同誌に「特許出願の事実は、中国が将来、海底の戦争作戦を実行する動機を持っていることを示している」と語った
松原仁元拉致問題担当相(無所属)は「政府の知るところを明らかにされたい」などと質問主意書を提出した。政府は今月7日に閣議決定した答弁書で「海底ケーブルを取り巻く状況について、引き続き注視していく」としたものの、切断装置については「公開情報は承知しているが、それ以上の詳細については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたい」と回答を避けた。
台湾周辺では先月、通信用海底ケーブルが損傷し、海巡署(海上保安庁に相当)は中国人7人が乗る貨物船が意図的に損傷した疑いがあると発表。今月17日には、台湾本島と中国・福建省に近い離島、馬祖を結ぶ海底ケーブルが断線したことも明らかになった。