IFRS (International Financial Reporting Standards. 国際会計基準) という単語の金融界での存在感が、日増しに大きくなってきています。
会計基準は、もはや日本国内だけのルールはなくなりました。
国際会計基準は、金融機関に様々な影響を与えます。
私の担当分野を例にとれば、貸出金の利息収入の認識基準。
従来の会計基準で、信用格付の低い(=貸倒リスクの高い)顧客に高金利で融資した場合を考えて見ます。
貸出当初には高金利による受取利息を約定どおり受け取りますから、会計上で利息収入を多く認識し、その後の時間の経過によって貸倒リスクが高まった段階で、初めて貸倒引当金という費用を計上します。
すなわち、会計上は収益を前取りして後で信用コストを吐き出す形となっている訳で、ややもすると低格付先への高金利融資を助長する側面がありました。
一方、新しい国際会計基準では、低格付の顧客への融資は貸出当初から信用コストを控除した後の実効金利を収入として認識されることになります。
すなわち、新しい会計基準では収益の前取りが困難となるのです。
貸倒引当金の計上方法も、融資の返済期日までの予想キャッシュフローに基づいて設定することになり、既存の概念が大幅に変化します。
これらの変更は、金融機関の融資戦略と財務諸表に大きなインパクトを与えるものと考えられます。
ところで、国際会計基準は、一般消費者にも無関係ではありません。
それは国債値下がりによる金融資産毀損リスク、財政逼迫による行政サービス低下もしくは増税です。
現在、税収不足に苦しむ我が国の財政は、国債の大量発行などに支えられて、介護医療などの行政サービスを維持しています。
これまでのところ、発行される国債の多くは、国内銀行によって引き受けられているのですが、新しい国際会計基準の下では、銀行が価格変動リスクの高い国債を大量に保有することが難しくなってきます。
もう一つの国債の買い手である生命保険会社は、株式から国債に運用資金を移動しているところですが、この動きも数年以内に一巡すると思われます。
また、銀行や生保の資金力を支える大きな源泉となってきたのは個人金融資産ですが、これからは大きな伸びは期待できません。
その金融資産の蓄積の担い手であった団塊世代の人々が、いよいよ現役を引退する時期となりますので、貯蓄の取崩しが始まるからです。
したがって1400兆円といわれている個人金融資産は、頭打ちから減少トレンドに移行していくものと考えられます。
このような諸要因によって、国債の国内購入余力は徐々に低下していきます。
景気が大幅に回復するか、あるいは税率を上げない限り税収は伸びませんので、これからは、米国と同様に、中国などの海外の資金による国債消化を真剣に考えていかなければならなくなる可能性が高いと思います。
しかし、円相場にもよりますが、現在の金利水準では外国人投資家は日本の国債に魅力を感じてくれません。
従って、国債の金利水準を徐々に引き上げていかざるを得ないと私は思います。
国債の金利水準が上がるということは、財政の金利負担を重くしますので、資金繰りが一層苦しいものになりますし、行政サービスなどの削減圧力が強まります。
また、金利上昇は、国債の時価を下げることになりますので、既に長期国債を保有している個人や金融機関の資産が毀損することになります。
評価損の実現を避けて国債を満期日まで保有しようとすれば、満期日までの数年間、実勢より低い金利を甘受しなければなりません。これも大きな損失です。
経済評論家の中には、いくら国債を大量発行しても、個人金融資産が国債に振り替わるだけで問題ないと説明する人がいます。
でも、新しい国債会計基準や団塊世代の現役引退を考慮に入れるとどうなるか。
個人金融資産の蓄積が止まり、会計基準が変更されると、国債の国内消化難が始まり、最終的には国債価格が下落して国内金融機関や個人の資産が大きく傷むリスクが高まってきていることを、私は危惧します。
そして、巨額の個人貯蓄が低利率の国債運用に塩漬けになってしまうことも、国家全体として大きな損失です。
ですから、やはり増税、公共サービス削減による財政再建は、避けては通れない重要な課題だと言わざるをえません。
会計基準は、もはや日本国内だけのルールはなくなりました。
国際会計基準は、金融機関に様々な影響を与えます。
私の担当分野を例にとれば、貸出金の利息収入の認識基準。
従来の会計基準で、信用格付の低い(=貸倒リスクの高い)顧客に高金利で融資した場合を考えて見ます。
貸出当初には高金利による受取利息を約定どおり受け取りますから、会計上で利息収入を多く認識し、その後の時間の経過によって貸倒リスクが高まった段階で、初めて貸倒引当金という費用を計上します。
すなわち、会計上は収益を前取りして後で信用コストを吐き出す形となっている訳で、ややもすると低格付先への高金利融資を助長する側面がありました。
一方、新しい国際会計基準では、低格付の顧客への融資は貸出当初から信用コストを控除した後の実効金利を収入として認識されることになります。
すなわち、新しい会計基準では収益の前取りが困難となるのです。
貸倒引当金の計上方法も、融資の返済期日までの予想キャッシュフローに基づいて設定することになり、既存の概念が大幅に変化します。
これらの変更は、金融機関の融資戦略と財務諸表に大きなインパクトを与えるものと考えられます。
ところで、国際会計基準は、一般消費者にも無関係ではありません。
それは国債値下がりによる金融資産毀損リスク、財政逼迫による行政サービス低下もしくは増税です。
現在、税収不足に苦しむ我が国の財政は、国債の大量発行などに支えられて、介護医療などの行政サービスを維持しています。
これまでのところ、発行される国債の多くは、国内銀行によって引き受けられているのですが、新しい国際会計基準の下では、銀行が価格変動リスクの高い国債を大量に保有することが難しくなってきます。
もう一つの国債の買い手である生命保険会社は、株式から国債に運用資金を移動しているところですが、この動きも数年以内に一巡すると思われます。
また、銀行や生保の資金力を支える大きな源泉となってきたのは個人金融資産ですが、これからは大きな伸びは期待できません。
その金融資産の蓄積の担い手であった団塊世代の人々が、いよいよ現役を引退する時期となりますので、貯蓄の取崩しが始まるからです。
したがって1400兆円といわれている個人金融資産は、頭打ちから減少トレンドに移行していくものと考えられます。
このような諸要因によって、国債の国内購入余力は徐々に低下していきます。
景気が大幅に回復するか、あるいは税率を上げない限り税収は伸びませんので、これからは、米国と同様に、中国などの海外の資金による国債消化を真剣に考えていかなければならなくなる可能性が高いと思います。
しかし、円相場にもよりますが、現在の金利水準では外国人投資家は日本の国債に魅力を感じてくれません。
従って、国債の金利水準を徐々に引き上げていかざるを得ないと私は思います。
国債の金利水準が上がるということは、財政の金利負担を重くしますので、資金繰りが一層苦しいものになりますし、行政サービスなどの削減圧力が強まります。
また、金利上昇は、国債の時価を下げることになりますので、既に長期国債を保有している個人や金融機関の資産が毀損することになります。
評価損の実現を避けて国債を満期日まで保有しようとすれば、満期日までの数年間、実勢より低い金利を甘受しなければなりません。これも大きな損失です。
経済評論家の中には、いくら国債を大量発行しても、個人金融資産が国債に振り替わるだけで問題ないと説明する人がいます。
でも、新しい国債会計基準や団塊世代の現役引退を考慮に入れるとどうなるか。
個人金融資産の蓄積が止まり、会計基準が変更されると、国債の国内消化難が始まり、最終的には国債価格が下落して国内金融機関や個人の資産が大きく傷むリスクが高まってきていることを、私は危惧します。
そして、巨額の個人貯蓄が低利率の国債運用に塩漬けになってしまうことも、国家全体として大きな損失です。
ですから、やはり増税、公共サービス削減による財政再建は、避けては通れない重要な課題だと言わざるをえません。