久しぶりの阿佐スパ新作です。
最近吉祥寺でやってくれて,個人的には行きやすくて良きです。
「老いと建築」渋いタイトルですよね。
かつて,夫と2人の子どもと暮らした3階建で中庭のある,
要塞のような戸建に一人で暮らす老女(村岡希美)。
舞台中央に置かれた,楕円形の大きなテーブルを中心に
物語は進みます。
舞台の影に,そっと居続ける男性(伊達暁)は,
どうやら老女にしか姿が見えない存在らしい,
ということがしばらくすると分かってきます。
老女の娘・仁子(志甫まゆ子)は娘の喜子(藤間爽子)を連れて
実家の片付けに来ますが,
仁子と母との間には過去に何かあったようで,
常に苛立った様子を見せています。
長男の一郎(富岡晃一郎)は,若い娘・りぼん(木村美月)を連れて
実家にやってきます。
老女の孫の基督(のりすけ・坂本慶介)は,
いつもフラリと現れて,こんなはずじゃなかった…と
苦悩の表情を見せながらテーブルに伏せ,
お小遣いあげるから帰れ,と老女に言われ
お小遣いをもらって消えていきます。
最初は普通の家族の物語かと思いきや,
場面は過去と現在を行ったり来たりします。
どのような家を建てるか,夫(中村まこと)と相談する場面で,
謎の男性(伊達さん)が建築家であることが判明。
折に触れて「手すりをつけましょう」
「1Fにもお風呂を作っておけば良かった」
「エレベーター設置用のスペースを取っておけば良かったのに」等々,
体の不自由な老女に語り掛けます。
悉く拒否する老女。
ヘルパーの浅岡(森一生)の助けを借りつつ,
一人で生活を続けます。
現在は椅子から立ち上がるのに難儀する老女ですが,
過去では軽やかに動き回ります。
夫の愛人・今津美津子(李千鶴)が登場したあたりから,
時間と空間の歪みが大きくなり,
居間だと思っていた場所が中庭になったり,
家の中で迷子になる人も。
最後に,仁子の夫・英二(長塚圭史)が登場。
それまで淡々としていた空気が,一変します。
夜中に帰宅して寝ている子供を起こせと言ったり皿を投げたり。
DV夫に困る仁子の様子を見兼ねて,孫の喜子を引き取る老女。
返せと詰め寄る英二に,
休戦して,1杯だけ飲みましょう,と老女は誘います。
(当時は老女ではないけど)
「2人で飲むの,久しぶりね」と話しかける老女。
老女と英二は,過去に何か関係があった様子。。。
美津子の存在を「無かったこと」にさせて
夫と別れさせたり,
英二に襲われたと言い,仁子と英二を別れさせたり。
(別れさせるための狂言なんじゃないかな,と)
とても芯の強い女性を,村岡さんがどっしりとした存在感で
演じておられました。
過去の場面では,とても軽やか。
だからこそ,美津子の手土産を「お持ち帰り下さい」と
撥ね付けるところなど,逆にものすごい壁を感じます。
多分,基督(と書いて「のりすけ」w)は,
もうこの世にいない人なんだろうなぁ…?とか,
色々謎が多い作品でしたが,
ストーリーとしてはちゃんと楽しめて,
謎な部分が引っかかる…という作りになっていました。
個人的に,長塚さんのDV夫っぷりにゾクゾクしました。
そして,「普通」の伊達さんが,温かみがあって良かったです。
仁子さんと喜子さんのお洋服は,〇ニクロかなぁ…
あのブラウス,色違い持ってる気がする…などとw
オープニングで大量の紙吹雪が天井から落ちてきて,
テーブルや椅子に紙吹雪が散らばったままの状態で舞台が進むのですが
そこも時空の歪みを表しているのかなぁ,などと。
2時間15分と若干長めで,モノローグの場面が多かったので,
もうちょっとコンパクトにできるとなお良いかなぁと思いました。
お見送りとか,舞台セット説明とか,コロナ禍でできないので…と
カテコで長塚さんがご挨拶。
グッズの紹介など,出演者の仲の良さがうかがえて
ほっこりした気持ちになりました。