元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「酔画仙」

2010-10-19 06:36:49 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Chihawseon)2002年作品。韓国の巨匠イム・グォンテクによる映画で、19世紀末に活躍した天才画家チャン・スンオプの生涯を描く。

 2002年度カンヌ国際映画祭で監督賞を獲得した作品だが、正直言ってイム監督はこの前作「春香伝」で受賞すべきだったと思う。格調の高い映像、特に主人公が描く素晴らしい山水画の世界が全面展開されるのには感心したが、物語の部分がいささか心許ない。

 最初から伝記映画を狙っているせいか、スンオプの一生を総花的に駆け足で追うことに腐心するあまり、主人公の心情や絵画に対するインスピレーションといった肝心の部分がほとんど描かれていない。もっと、特定のエピソードをじっくりと腰を落ち着けて撮り上げるべきではなかったか。スンオプに扮するチェ・ミンシクは好演で、脇に回ったアン・ソンギの存在感も捨て難いだけに何とも残念だ。

 チョン・イルソンの撮影とキム・ヨンドンによる音楽は良い。なお、朝鮮半島の近代史を描くに当たって単純に“日本が悪い”だの“清国が悪い”だのといった一面的な見方を全然していないのは、作者の賢明さゆえだろう。
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