(原題:Natural Born Killers)94年作品。オリヴァー・ストーン監督のフィルモグラフィの中でも怪作に数えられる。陽気な殺人犯二人組ミッキー(ウディ・ハレルソン)とマロリー(ジュリエット・ルイス)のコンビと、彼らを追う狂ったニュースキャスター(ロバート・ダウニー・ジュニア)と、頭の中がキレた刑務所長(トミー・リー・ジョーンズ)らが織りなすコメディ編だ。
普段のストーンだと主人公を殺人犯コンビを追う刑事か、あるいは彼らを裁く判事なんかに設定して、現代アメリカの狂った世相をヒステリックに告発する、というのがパターンなのだが、今回はそういう“良識”のかけらも見られない。かといって、スタイリッシュな映像とセリフの絶妙のマッチングもない。
要するにこれは、ストーンがクエンティン・タランティーノによる原案を口実にして、考えられる限りの悪ノリをやってのけたという、それだけの映画だと思う。
実に能天気にストレス解消をやってる作品なので、「ありふれた事件」(92年)だとか「ヘンリー」(89年)みたいなシリアスな殺人狂の映画と違って、観たあとは見事に何も残らない。J・ルイスもトミー・リーおじさんも、肩の力がスカーと抜けたように、実に楽しそうに演技している。
32ミリ、16ミリ、8ミリ、ビデオ画像、CG、アニメーション、ロングショット、クローズアップ、歪んだアングルetc.こういったやりたい放題の映像ギミックは、ハッキリ言って目が疲れる。まあそれでも、ヒロインの不幸な生い立ちを往年のTVドラマ「ルーシー・ショー」(「アイ・ラブ・ルーシー」)をパロった「アイ・ラブ・マロリー」のタイトルで展開していく場面は面白かったけどね。
なぜか94年ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞しているが、当時ここまでやったストーンは、これ以降どんなマジメなものを作っても、個人的にはイマイチ信用できない作家になってしまった(笑)。