(原題:OBLIVION)映画の序盤に、トム・クルーズ扮する主人公のモノローグで“任務に入る前に記憶を消されている”ということが語られるが、この時点で早々にネタが割れてしまう。あとはその“バレてしまったネタ”をトレースするような冴えない話が延々と続くのみ。つまらん映画だ。
2077年、地球はエイリアンの攻撃を受け、何とか撃退したものの地上の大半は汚染されて住めなくなってしまう。人類は土星の衛星タイタンへの移住を決め、その前段階として巨大な宇宙ステーションに“仮住まい”をしている。しかし地球上にはエイリアンの残党がおり、各種施設を守るためにジャックはパートナーのヴィクトリアと共に地球に残り、監視業務をこなしていた。
ある日、ジャックは地上に墜落した宇宙船を確認。ジュリアという若い女を救助するが、彼女はなぜかジャックを知っていた。しかも、ジュリアは毎夜彼の夢の中に出てくる女性だったのだ。やがてジャックは正体不明の一味によって捕らえられ、そこで意外な事実を知ることになる。
中盤、ジャックがわざわざ“汚染地区”に出向く場面がある。何をしに行くのかと思っていたら、そこには“汚染”とは縁のない森林に囲まれた山小屋があり、彼はそこで気分をリフレッシュするのだという(大笑)。いったい何のための“立入禁止地区”なのか。
このエリアにこういう快適な環境の場所があること自体、自分の任務に対する疑問が湧いてきてもおかしくないのだが、彼は全く気に留めないようだ。ひょっとしたら“そこは脳天気なトムくんだから”というエクスキューズが通用するとでも思ったのだろうか(爆)。
墜落した宇宙船をめぐる“時差”の問題についてもノータッチだし、エイリアンの正体と真の目的は明らかにされず、謎の一味の行動規範もまるで要領を得ない。荒れ果てた地球の造形も、メカのデザインも、アクションシーンの段取りも、すべてヨソの映画からパクってきたような芸のなさ。ラストなんか、すべて解決したようでいて全然そうではない。
ジョセフ・コシンスキーの演出は凡庸そのもので、メリハリに欠けテンポも鈍い。トムくんの演技は“相変わらず”で、特筆すべきものなし。一味の首魁を演じるモーガン・フリーマン御大も手持ちぶさたの様子。全体として、何をどう観客にアピールしたいのか、さっぱり分からないシャシンである。
救いといえば、オルガ・キュリレンコとアンドレア・ライズボローの女優二人がとてもキレイである点だ。逆に言えば、彼女たちが出ていなかったら観る価値はまったくない映画だろう。