渋谷の「ザ・ミュージアム」で開催されていたスペイン美術界の巨匠、アントニオ・ロペスの展覧会に行ってきた。ロペスといえばまず思い出すのはビクトル・エリセ監督の映画「マルメロの陽光」(92年)である。あの作品の中で絵筆をふるって果敢に題材に肉迫していた画家が彼だ。私はロペスの絵を直接観るのは、これが初めてである。
“現代スペイン・リアリズム”の代表選手と評価されているらしいが、実際にその絵に接してみると、写実主義よりもシュールレアリズムに近いことが分かる。ダリやマグリットの絵のような“現実にはあり得ない、奇態なモチーフの組み合わせ”は見られず、あくまで対象をリアルに描くことを基本にしているようだが、出来上がった作品はこの世のものではないような異様なオーラをまとっている。
何気ない町の風景、マドリードの遠景、室内調度品の数々、そういうものがロペスの筆にかかると“異世界への入り口”に早変わりする。たとえば代表作とされる「グラン・ビア」は街角の風景を切り取ったものだが、精緻な細部と微妙に歪んだ構図により、中央に描かれた通りがどこに続いていくのか分からなくなるような錯覚を観る者に与える。
「トイレと窓」という作品はタイトル通りの題材を扱ったものだが、時間が止まったような別次元の空間がそこに現出している。「マルメロの陽光」の中で作成していた絵も展示されていたが、未完成のまま途中で終わっているのが面白い。とにかく、いずれの作品も一度目にしたら忘れられないほどの存在感を持っており、観ることが出来て本当に良かったと思う。
“現代スペイン・リアリズム”の代表選手と評価されているらしいが、実際にその絵に接してみると、写実主義よりもシュールレアリズムに近いことが分かる。ダリやマグリットの絵のような“現実にはあり得ない、奇態なモチーフの組み合わせ”は見られず、あくまで対象をリアルに描くことを基本にしているようだが、出来上がった作品はこの世のものではないような異様なオーラをまとっている。
何気ない町の風景、マドリードの遠景、室内調度品の数々、そういうものがロペスの筆にかかると“異世界への入り口”に早変わりする。たとえば代表作とされる「グラン・ビア」は街角の風景を切り取ったものだが、精緻な細部と微妙に歪んだ構図により、中央に描かれた通りがどこに続いていくのか分からなくなるような錯覚を観る者に与える。
「トイレと窓」という作品はタイトル通りの題材を扱ったものだが、時間が止まったような別次元の空間がそこに現出している。「マルメロの陽光」の中で作成していた絵も展示されていたが、未完成のまま途中で終わっているのが面白い。とにかく、いずれの作品も一度目にしたら忘れられないほどの存在感を持っており、観ることが出来て本当に良かったと思う。