元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ファインド・アウト」

2013-06-29 06:20:26 | 映画の感想(は行)

 (原題:GONE)映画の内容よりも、舞台になったオレゴン州ポートランドの描写の方が興味深い。同市は州内最大の都市であるが、広大な自然公園をも擁している。そのほとんどを温帯雨林が占めているのだが、これが神秘的なまでに鬱蒼とした森に覆われていて、まさにホラーやサスペンス映画に打って付けだ。同じ温帯雨林帯に属するワシントン州を舞台にした「トワイライト」シリーズを思い出してしまった。

 さて、映画の出来としては可もなく不可もない凡打に終わっている。主人公のジルは数年前に連続殺人犯と思われる何者かによって拉致されるが、何とか危機を脱し、疲労困憊して森の中で倒れていたところを救助される。しかし、警察がいくら調べても彼女の言い分を裏付ける物的証拠が出てこない。挙げ句の果てにジルは虚言癖があるということで、精神病院に入れられてしまう。

 退院後も一人で森の中を調べていた彼女だが、今度は大学生であるジルの妹が行方不明になる。自分を誘拐した者がまた凶行に及ぼうとしていることを確信した彼女は、独力で捜索を始めるが、ジルを危険人物と見なす警察からも同時にマークされることになる。

 ヒッチコック作品等でおなじみの“追われながら事件を解決する話”であるが、どうにも段取りがよろしくない。どこから手に入れたのか知らないが、主人公が拳銃を振り回して“強制捜査”に乗り出すあたりから観ていて脱力する。さらに、彼女が“聞き込み”の途中でさまざまな作り話をデッチあげるのにも愉快になれない。これは“ひょっとしたらジルには本当に虚言癖があるのではないか”という疑念を観客に持たせる意図があったのかもしれないが、どう見てもそれまでのプロセスではそんな暗示は無く、取って付けたような印象がある。

 彼女を追跡している警察もさほど有能ではない。数年前の事件で実地検証を意味もなく短期間で終わらせたのをはじめ、ヒロインの証言を最初から完全否定してしまうのは、失態と言うしかない。彼女に惹かれる新米刑事も出てくるが、大した活躍もなく終わらせてしまう。

 エイトール・ダリアの演出は凡庸で、作劇にメリハリがない。ただ、主役のアマンダ・セイフライド(正式な発音はサイフリッドらしいけど)の大奮闘は、映画を駄作の範疇に入るところをかろうじて食い止めていたと思う。とにかく良く身体が動く。今回初めて気付いたのだが、彼女は小柄なのだね(日本の女の子と体格は変わらない)。

 関係ない話だが、新米刑事が先輩から“彼女が欲しければ消防士にでもなったらどうだ”と皮肉を言われるのには笑った。マッチョな消防士はアメリカではモテるらしい。対して警官はいわゆるハードな“汚れ仕事”もこなさねばならず、頻繁に映画の主人公になる割には、その“見返り”は大したことはないようだ。
コメント
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