英国Harbeth社のスピーカーを聴いてみた。同社は77年に発足し、BBCのモニタースピーカーなどを長年にわたり供給するなど、実績を作ってきたブランドだ。その製品はオーディオ・フェアで何度も接しているが、今回メインに聴けたのは新型のMonitor30.1とMonitor20.1である。
型番が表すとおり、業務用を意識して作られた製品なのだと思う。しかしMonitor30.1は木目仕上げがあり、対してMonitor20.1は見た目は実用一点張りのハイグロス・グレー仕上げのみと、なぜかエクステリアに一貫性が無いのが気になったが、結局この違和感が最後まで尾を引くことになった。
なお駆動していたアンプとCDプレーヤーは仏YBAのセカンド・ブランドであるAudio Refinement OvertureのIntegreとCD1、DENONのPMA-2000REとDCD-1650RE、TRIODEのTRV-88SERとTRV-CDSEと、3セットも用意してくれたのは有り難い。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/08/593cd30048501171c0a5b846b522d648.jpg)
まず聴いたのがMonitor30.1である。高さが46cmもあるミドルサイズで、低域ユニットも口径が20cmのものを採用しているせいか、鳴りっぷりは良い。音場は奥に広がるタイプで、高い解像度と共に聴感上のレンジが大きい緻密な展開を見せる。
しかし、聴いていくうちに釈然としないものを感じるようになった。情報量と質感を十分確保して明るい音色で聴かせようという方法論のスピーカーを求めるならば、別にHarbethの製品でなければならない必然性は無い。同じ英国のブランドならば、B&WとかMONITOR AUDIO、あるいはKEFのRシリーズといった選択肢がある。もちろん、それぞれサウンドのカラーは違うが、アプローチの仕方には共通するものがある。
個人的にHarbethのスピーカーでまず思い出すのが、HL-COMPACT7 ES3である。いかにも伝統的な英国のモデルらしい陰影に富んだ彫りの深い音作りで、丹念に細部まで練り込んだ音像の掴み出し方や整然と設えた音場の造型などに感心したものだ。ところが、このMonitor30.1にはそのような美点は見つからなかった。
次にMonitor20.1のパフォーマンスをチェックしてみた。高さが30cmで低域ユニットは口径11cmというコンパクト・サイズ。スタジオ等でのニアフィールドでのサウンドチェック用にも使えるらしく、その点はMonitor30.1よりも業務用としての性格が強いという。
面白いことに、HL-COMPACT7 ES3が持っていたHarbethの魅力は、モニター用途のMonitor20.1の方に反映している。解像度をキープしながらも、中低域のエッジは丸くて滑らかだ。そのためか鳴り方にはコクがあり、使用するソースによっては艶や色気の表現も可能になってくる。これは面白いモデルだと思った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/f6/478db7453146903b047eb6fb75b21a5d.jpg)
しかし、Monitor20.1は出力音圧レベルが84dB以下という低能率。加えて低域の量を稼ぐバスレフダクト(低音が放出される穴のこと)がない密閉型だ。つまり十分な音圧を得ようとするならば、高出力・高駆動力のアンプで音量を上げてドライヴしなければならない。それに音場は広いとはいえ小型モデルなので、管弦楽曲などの再生には不満が残る。
それによく考えると、モニター的な鳴り方のMonitor30.1がバスレフ型で木目仕上げという民生用を意識した意匠なのに対し、いくらかHarbethらしい楽しい音を出すMonitor20.1が素っ気ない色合いで一般家庭に置くには不似合いな外観というのは、ちょっとおかしい。
さらに言えば、Monitor30.1は専用のスピーカースタンドを併用しなければ真価を発揮しないのだが、この置き台がいかにも頼りない。HL-COMPACT7 ES3のようなスリムなモデルならば華奢なスタンドも気にならないが、質量感のあるミドルサイズのスピーカーを載せるとなると、見た目が良いとは言い難い。
結果として、この2機種は個人的な購入対象にはなり得なかった。もしもHarbethのスピーカーを選ぶとすれば、HL-COMPACT7 ES3およびその流れを組むテイストの製品になるだろう。
最後に、今回初めて聴けたAudio Refinement Overtureのアンプ類について述べてみる。本家YBAにも通じる中域の艶やかさがキュートな印象を与えるが、情報量としてはこれよりずっと安いDENONのアンプ類に完敗だ。デザインは小粋だが、仕上げや質感は安っぽい。また三点支持で安定性に欠けるのも愉快になれない。やはり中級クラスまでのアンプは、クォリティにおいて国内ブランドに軍配が上がるようだ。
型番が表すとおり、業務用を意識して作られた製品なのだと思う。しかしMonitor30.1は木目仕上げがあり、対してMonitor20.1は見た目は実用一点張りのハイグロス・グレー仕上げのみと、なぜかエクステリアに一貫性が無いのが気になったが、結局この違和感が最後まで尾を引くことになった。
なお駆動していたアンプとCDプレーヤーは仏YBAのセカンド・ブランドであるAudio Refinement OvertureのIntegreとCD1、DENONのPMA-2000REとDCD-1650RE、TRIODEのTRV-88SERとTRV-CDSEと、3セットも用意してくれたのは有り難い。
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まず聴いたのがMonitor30.1である。高さが46cmもあるミドルサイズで、低域ユニットも口径が20cmのものを採用しているせいか、鳴りっぷりは良い。音場は奥に広がるタイプで、高い解像度と共に聴感上のレンジが大きい緻密な展開を見せる。
しかし、聴いていくうちに釈然としないものを感じるようになった。情報量と質感を十分確保して明るい音色で聴かせようという方法論のスピーカーを求めるならば、別にHarbethの製品でなければならない必然性は無い。同じ英国のブランドならば、B&WとかMONITOR AUDIO、あるいはKEFのRシリーズといった選択肢がある。もちろん、それぞれサウンドのカラーは違うが、アプローチの仕方には共通するものがある。
個人的にHarbethのスピーカーでまず思い出すのが、HL-COMPACT7 ES3である。いかにも伝統的な英国のモデルらしい陰影に富んだ彫りの深い音作りで、丹念に細部まで練り込んだ音像の掴み出し方や整然と設えた音場の造型などに感心したものだ。ところが、このMonitor30.1にはそのような美点は見つからなかった。
次にMonitor20.1のパフォーマンスをチェックしてみた。高さが30cmで低域ユニットは口径11cmというコンパクト・サイズ。スタジオ等でのニアフィールドでのサウンドチェック用にも使えるらしく、その点はMonitor30.1よりも業務用としての性格が強いという。
面白いことに、HL-COMPACT7 ES3が持っていたHarbethの魅力は、モニター用途のMonitor20.1の方に反映している。解像度をキープしながらも、中低域のエッジは丸くて滑らかだ。そのためか鳴り方にはコクがあり、使用するソースによっては艶や色気の表現も可能になってくる。これは面白いモデルだと思った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/f6/478db7453146903b047eb6fb75b21a5d.jpg)
しかし、Monitor20.1は出力音圧レベルが84dB以下という低能率。加えて低域の量を稼ぐバスレフダクト(低音が放出される穴のこと)がない密閉型だ。つまり十分な音圧を得ようとするならば、高出力・高駆動力のアンプで音量を上げてドライヴしなければならない。それに音場は広いとはいえ小型モデルなので、管弦楽曲などの再生には不満が残る。
それによく考えると、モニター的な鳴り方のMonitor30.1がバスレフ型で木目仕上げという民生用を意識した意匠なのに対し、いくらかHarbethらしい楽しい音を出すMonitor20.1が素っ気ない色合いで一般家庭に置くには不似合いな外観というのは、ちょっとおかしい。
さらに言えば、Monitor30.1は専用のスピーカースタンドを併用しなければ真価を発揮しないのだが、この置き台がいかにも頼りない。HL-COMPACT7 ES3のようなスリムなモデルならば華奢なスタンドも気にならないが、質量感のあるミドルサイズのスピーカーを載せるとなると、見た目が良いとは言い難い。
結果として、この2機種は個人的な購入対象にはなり得なかった。もしもHarbethのスピーカーを選ぶとすれば、HL-COMPACT7 ES3およびその流れを組むテイストの製品になるだろう。
最後に、今回初めて聴けたAudio Refinement Overtureのアンプ類について述べてみる。本家YBAにも通じる中域の艶やかさがキュートな印象を与えるが、情報量としてはこれよりずっと安いDENONのアンプ類に完敗だ。デザインは小粋だが、仕上げや質感は安っぽい。また三点支持で安定性に欠けるのも愉快になれない。やはり中級クラスまでのアンプは、クォリティにおいて国内ブランドに軍配が上がるようだ。