(原題:THE LAST BOY SCOUT)91年作品。この頃のブルース・ウィリスは大ヒットした「ダイ・ハード」およびそのパート2により一躍有名アクション・スターの仲間入りを果たし、その方向性に則ったような仕事が数多く舞い込んできたものだが、結局「ダイ・ハード」に匹敵するような実績を残せなかった。本作もその時代に撮られた、凡庸な作品の一つだ。
主人公のジョー・ホーレンベック(ウィリス)は私立探偵だが、かつてはSSとして大統領の命を救ったという輝かしい経歴を持っている。しかし“政府内部の事情”によってクビになり、自暴自棄の生活を送っている。妻は同じ私立探偵仲間と浮気中で、娘は反抗的で言うことをきかず、家庭においても居場所が無い。
そんな彼がヌードダンサーの警護を頼まれるが、依頼人は殺される。彼女の恋人のジミー・ディックスはフットボールの花形選手だったが、賭博容疑で追放され、ジョー同様に欝屈した人生を送っていた。ジミーはジョーに協力を申し出て、似たもの同士の二人は手を組んで事件の捜査に乗り出すが、やがてプロフットボール界の裏に潜む巨大な組織の影が次第に明らかになってくる。
確かにアクション場面は豊富で、銃撃戦は派手だしカーチェイスも見応えはある。特にクライマックスのスタジアムでの死闘は、観ていて思わず身を乗り出してしまう。しかし、どうにも薄味だ。キャラクター設定は在り来たりで、最後に主人公が妻と娘の信頼を取り戻すところなど、当時のアメリカ映画のトレンドであった“家族愛”を巧妙に織り込むあたりも平凡である。
脚本は「リーサル・ウェポン」などのシェーン・ブラックだが、何と脚本料は175万ドルだったという。そのわりには目新しさや凝ったプロットは見当たらず、どこをどう見ても“可も無く不可も無し”の活劇編に過ぎない。加えて監督が“スタンスが限りなく軽い”トニー・スコットだから、登場人物の内面描写なんか期待できるはずもない。ハッキリ言って、観ている間は退屈しないが、観た後は3分で内容を忘れてしまう類いのシャシンである。
なお、依頼人のヌードダンサーに扮していたのはハル・ベリーである。デビュー間もない頃で、ルックスのみを買われた起用だったと思われるが、後にオスカーを手にするほど有名になっていくとは誰も予想しなかっただろう。