前半こそ英勉監督の持ち味は出ているが、中盤以降はただの低調なラブコメになってしまう。しかも、その前半部分も同監督としてはノリが悪い。どうせ子供向けのシャシンだから高い出来栄えを期待しているわけではないが、もうちょっと気張って欲しかったというのが本音である。
主人公の松崎はとりは、小学生の頃から幼友達の寺坂利太のことを大切に思い続け、いつかは彼の“彼女(ヒロイン)”になれるものだと固く信じていた。ところが、高校生になった利太が交際相手として選んだのは、地味なガリ勉タイプの安達未帆だったのだ。強いショックを受けたはとりは彼を奪還すべくあらゆる手を使うが、いずれも成功しない。そんな彼女に、学校一のモテ男である弘光廣祐が猛アプローチを仕掛けてくる。果たしてはとりは最終的にどういう決断を下すのであろうか・・・・という話だ。幸田もも子による同名コミック(もちろん、私は未読 ^^;)の映画化である。
前半は英監督らしい大仰な映像ギミックが満載。登場人物のセリフや心理状態が“そのまま”CG処理などで映像化されるという、御馴染みの手法も大々的に起用されている。しかし、これがあまり盛り上がらない。笑わせようとする場面が滑って、ヒンヤリとした空気が流れるだけだ。
その理由は、ストーリーラインの弱さである。「ハンサム★スーツ」や「行け!男子高校演劇部」といった英監督の過去のコメディ作品は、見かけはおちゃらけていても話自体には一本芯が通っていた。対して本作は軽佻浮薄な登場人物達が御為ごかしの恋愛ごっこに興じるだけで、ドラマの体を成していない。空疎な筋書きを小手先の映像処理で粉飾しても、脱力感が漂うだけである。
ラブコメに移行する後半部分に至っては語る価値も無く、どっち付かずのはとりの態度や、優柔不断な利太の振る舞いを延々と見せられて心底ウンザリしてしまう。また“花火大会の翌日がスキー実習”みたいな脚本の初歩的な不備も目立つ。
加えて主演2人の実力不足は如何ともし難い。確かにはとり役の桐谷美玲は頑張っているが、どんなにアホなことをやらかしても、どこか“アタシって、こんなことも出来るのよっ”みたいなワザとらしさが臭ってきて愉快になれない。利太に扮する山崎賢人は論外で、完全なデクノボー。さすが“朝ドラ大根三羽烏”の1人だ(ちなみにあとの2人は東出昌大と福士蒼汰である ^^;)。
弘光役の坂口健太郎や安達を演じる我妻三輪子は悪くなかったが、それだけでは作品を支えきれない。英監督は若年層の大量動員が見込める中途半端なメジャー作品よりも、ある程度観客層を絞り込んだ規模の映画が相応しいと思ったものである。