(原題:FOOLIN' AROUND)80年作品。諸手を挙げて評価するようなシャシンでもないのだが、この頃のアメリカ製娯楽映画のトレンドを象徴したような内容で、一応は記憶に残っている。聞けば本作は日本公開時は別の(ある程度客を呼べそうな)映画の併映だったらしく、配給元もあまり期待していなかった様子なのだが、こういうお手軽な作品が世相を反映しているケースもあったりする。
ミネソタ大学の学生であるウェスは、古い教科書を売りつけた教授に仕返しをするため、教授の車を木の枝にぶら下げるという暴挙をやらかし、一気に問題児としてマークされる。次に彼はアルバイトとして理系学生のスーザンの実験台になることを引き受けるが、上手くいかずに酷い目に遭う。しかし、怪我の功名で彼女と仲良くなり、偶然スーザンが大手建設会社の会長の孫娘だったこともあって、その会社に就職してしまう。ところが、現社長の母親は彼女にイヤミったらしい管理職の男との結婚を強要しており、ウェスは何とかそれを阻止すべく、手段を選ばない行動に出る。
ウェスのキャラクターこそ型破りだが、筋書き自体に意外性は無い。有り体に言えば、1930年代のスクリューボール・コメディを焼き直したような内容だ。時あたかも70年代(特に前半)の混乱期が過ぎ、何となく保守回帰の空気が充満していたというアメリカ社会。それに呼応するような懐古趣味のハッピーエンド風ドラマである。
マイク・ケインとデイヴィッド・スウィフトによる脚本は笑いの趣向をたっぷり詰め込んでいて、リチャード・T・ヘフロンの演出はストレスフリーにドラマを進める。終盤はマイク・ニコルズ監督の「卒業」(68年)との類似性を感じさせるが、あの映画にあった“毒”は不在だ。
主演のゲイリー・ビジーは好調で、おふざけ演技もソツなくこなす。相手役のアネット・オトゥールも魅力があるし、ジョン・カルヴィンやエディ・アルバート、クロリス・リーチマンといった顔ぶれも悪くない。なお、映像が一見キレイだが陰影も的確に捉えていて印象的だと思ったら、カメラマンはウォルター・ヒル監督との仕事などで知られるフィリップ・H・ラスロップだった。チャールズ・バーンスタインによる音楽も及第点に達している。