(原題:THE APPRENTICE)何より、この時期に斯様な映画が製作されたこと自体が驚きだ。しかも、堂々と公開された後、第77回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、主要キャストは第97回米アカデミー賞にもノミネートされている。たぶん日本ならば、このような映画の企画案さえ存在し得なかっただろう。各国の映画人の意識の高さは、我が国を置いたまま前に進み続けている。
80年代の若き日のドナルド・トランプは、不動産業を営む父の会社を手伝う気弱な男に過ぎなかった。そんな中、彼は政財界の実力者が集まる高級クラブで、弁護士のロイ・コーンと出会う。コーンは検察官時代にマッカーシズムの片棒を担ぎ、弁護士に転身してからも共和党保守派との太いパイプにより数々の荒仕事をこなした悪名高い人物。そんな彼がトランプを気に入り、生き馬の目を抜くような政財界での身の振り方を伝授する。その甲斐あってトランプは大きな仕事をこなすまでに成長するが、やがてコーンの手に負えないほどの厄介な存在に変貌していく。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/9f/aef10776b2164a75542c1b0211c16357.jpg)
言うまでもなくトランプは現時点での合衆国大統領であるが、本作において好意的なアプローチは皆無。彼がいかに御しがたい人物かを、容赦なく暴いてゆく。この映画の非凡なところは、コーンというトランプの“師匠”みたいな人物に着目したことだ。
コーンが伝授する“勝つための3つのルール”は、トランプの座右の銘になっていくのだが、これはコーンが“赤狩り”に関与していた時分に会得した方法論だ。つまりはトランプの遣り口はいわゆる“ハリウッド・テン”に代表される当局側のエンタテインメント界への弾圧と同じ潮流にあることを提示しており、これはかなりの慧眼と言えよう。映画産業に携わる者ならば、この構図を見逃すはずがない。
また、コーンの“末路”も哀れなものながら、同性愛者でユダヤ人というプロフィールを持っていたにもかかわらず、それらと相反するようなポリシーにしがみ付いたことの誤謬性が暗示され、強いインパクトを残す。アリ・アッバシの演出は「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022年)と同様に露悪的なタッチは冴え渡り、最後まで引き込まれる。
トランプ役のセバスチャン・スタン、コーンに扮したジェレミー・ストロング、共に大いに評価される仕事ぶりだ。マリア・バカローバにマーティン・ドノバン、キャサリン・マクナリー、マーク・レンドールといった他のキャストも好調。なお、トランプはこのような人物ながら米国民の大きな支持を集めているのは、紛れもない事実である。果たして今後はどうなるのか。そして世界情勢、及び日本との関係はいかなる展開を見せるのか。目が離せない局面になってきたようだ。
80年代の若き日のドナルド・トランプは、不動産業を営む父の会社を手伝う気弱な男に過ぎなかった。そんな中、彼は政財界の実力者が集まる高級クラブで、弁護士のロイ・コーンと出会う。コーンは検察官時代にマッカーシズムの片棒を担ぎ、弁護士に転身してからも共和党保守派との太いパイプにより数々の荒仕事をこなした悪名高い人物。そんな彼がトランプを気に入り、生き馬の目を抜くような政財界での身の振り方を伝授する。その甲斐あってトランプは大きな仕事をこなすまでに成長するが、やがてコーンの手に負えないほどの厄介な存在に変貌していく。
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言うまでもなくトランプは現時点での合衆国大統領であるが、本作において好意的なアプローチは皆無。彼がいかに御しがたい人物かを、容赦なく暴いてゆく。この映画の非凡なところは、コーンというトランプの“師匠”みたいな人物に着目したことだ。
コーンが伝授する“勝つための3つのルール”は、トランプの座右の銘になっていくのだが、これはコーンが“赤狩り”に関与していた時分に会得した方法論だ。つまりはトランプの遣り口はいわゆる“ハリウッド・テン”に代表される当局側のエンタテインメント界への弾圧と同じ潮流にあることを提示しており、これはかなりの慧眼と言えよう。映画産業に携わる者ならば、この構図を見逃すはずがない。
また、コーンの“末路”も哀れなものながら、同性愛者でユダヤ人というプロフィールを持っていたにもかかわらず、それらと相反するようなポリシーにしがみ付いたことの誤謬性が暗示され、強いインパクトを残す。アリ・アッバシの演出は「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022年)と同様に露悪的なタッチは冴え渡り、最後まで引き込まれる。
トランプ役のセバスチャン・スタン、コーンに扮したジェレミー・ストロング、共に大いに評価される仕事ぶりだ。マリア・バカローバにマーティン・ドノバン、キャサリン・マクナリー、マーク・レンドールといった他のキャストも好調。なお、トランプはこのような人物ながら米国民の大きな支持を集めているのは、紛れもない事実である。果たして今後はどうなるのか。そして世界情勢、及び日本との関係はいかなる展開を見せるのか。目が離せない局面になってきたようだ。