まるで要領を得ない内容だ。特定のテクノロジーが発展した“別の世界”を描くに当たっては、設定自体の詳説から始めないと話が絵空事になるのだが、本作はそれが成されていない。加えてストーリーがまとまっておらず、散漫な展開が目に付く。奇を衒っただけの珍作であり、存在価値が大してあるとは思えない。
工場で働く石川朔也は、ある大雨の日に同居している母の秋子から“話がある”という電話を受ける。家の近くまで来た彼が見たのは、氾濫する川べりに立つ母だった。助けようとして川に転落した彼が目を覚ましたのは1年後だった。そこで朔也は、秋子が“自由死”を選択して他界したことを知る。工場は閉鎖になっており、彼は“リアル・アバター”なる新たな仕事に就く。ある日、仮想空間上に任意の“人間”を作る技術の存在を知った朔也は、開発者の野崎に“母”の作成を依頼する。一方、彼は母の親友だったという三好彩花を見つけ出し、彼女と件の“母”も加えての共同生活が始まる。
状況説明がまるでなっていない。朔也が昏睡状態になっていたわずか1年間で、テクノロジーがかくも劇的な発展を遂げるわけがないのだ。秋子が採用する“自由死”なる制度の実相はハッキリと示されておらず、“リアル・アバター”のビジネスモデルも不明瞭。彩花に至っては秋子との関係は上っ面で、朔也と同居しても男と女の関係になる気配も無いのは失当だ。
気が付けば主人公と母親のストーリーはどこかに追いやられ、ラストで申し訳程度に言及されるのみ。さらに悪いことに、似たようなネタを扱った韓国作品「ワンダーランド あなたに逢いたくて」を最近鑑賞し、本作との格差に愕然としてしまった。また“自由死”みたいなモチーフならば、すでに早川千絵監督「PLAN 75」(2022年)の中で効果的に扱われている。しかるにこの映画は出る幕が無いのである。
平野啓一郎による原作は読んでいないが、まさかこれほどの低レベルではあるまい。石井裕也の演出は全然ピリッとせず、この監督が不調から抜け出す様子は見受けられない。主演の池松壮亮をはじめ、田中裕子に妻夫木聡、綾野剛、田中泯、水上恒司、仲野太賀と良い面子を集めていながらこの体たらくだ。なお、彩花を演じるのは奇しくも同名の(漢字は少し違うが)三吉彩花である。かなりの熱演で、何とシャワーシーンまで披露。しかし作品の質がこの程度なので、“脱ぎ損”みたいな結果になったのは何とも残念だ。
工場で働く石川朔也は、ある大雨の日に同居している母の秋子から“話がある”という電話を受ける。家の近くまで来た彼が見たのは、氾濫する川べりに立つ母だった。助けようとして川に転落した彼が目を覚ましたのは1年後だった。そこで朔也は、秋子が“自由死”を選択して他界したことを知る。工場は閉鎖になっており、彼は“リアル・アバター”なる新たな仕事に就く。ある日、仮想空間上に任意の“人間”を作る技術の存在を知った朔也は、開発者の野崎に“母”の作成を依頼する。一方、彼は母の親友だったという三好彩花を見つけ出し、彼女と件の“母”も加えての共同生活が始まる。
状況説明がまるでなっていない。朔也が昏睡状態になっていたわずか1年間で、テクノロジーがかくも劇的な発展を遂げるわけがないのだ。秋子が採用する“自由死”なる制度の実相はハッキリと示されておらず、“リアル・アバター”のビジネスモデルも不明瞭。彩花に至っては秋子との関係は上っ面で、朔也と同居しても男と女の関係になる気配も無いのは失当だ。
気が付けば主人公と母親のストーリーはどこかに追いやられ、ラストで申し訳程度に言及されるのみ。さらに悪いことに、似たようなネタを扱った韓国作品「ワンダーランド あなたに逢いたくて」を最近鑑賞し、本作との格差に愕然としてしまった。また“自由死”みたいなモチーフならば、すでに早川千絵監督「PLAN 75」(2022年)の中で効果的に扱われている。しかるにこの映画は出る幕が無いのである。
平野啓一郎による原作は読んでいないが、まさかこれほどの低レベルではあるまい。石井裕也の演出は全然ピリッとせず、この監督が不調から抜け出す様子は見受けられない。主演の池松壮亮をはじめ、田中裕子に妻夫木聡、綾野剛、田中泯、水上恒司、仲野太賀と良い面子を集めていながらこの体たらくだ。なお、彩花を演じるのは奇しくも同名の(漢字は少し違うが)三吉彩花である。かなりの熱演で、何とシャワーシーンまで披露。しかし作品の質がこの程度なので、“脱ぎ損”みたいな結果になったのは何とも残念だ。