(原題:ALIEN: ROMULUS)不満な点はけっこうあるのだが、捨てがたいモチーフもあり、結論としては“まあまあ観られる出来”ではないかと思う。少なくとも、デイヴィッド・フィンチャー監督によるパート3(92年)やシリーズ前日譚になるリドリー・スコット監督の「プロメテウス」(2012年)なんかよりはずっとマシだ。
第一作の舞台になったノストロモ号が爆破されてから数年経った2142年、ジャクソン星の鉱山で働く若い女レイン・キャラダインは、劣悪な職場環境に辟易していた。彼女はいくらか状況が良いと言われているユヴァーガ第三惑星への移住を切望しているが、会社側による不当な労働時間の延長等により上手くいかない。そこで男友達のタイラーらと秘密裏にジャクソン星を離れる。彼らが最初にたどり着いたのは、廃墟と化した宇宙ステーション“ロムルス”だった。生きる希望を求めて探索を開始する彼らだったが、突然にエイリアンの群れに襲われる。
まず、どうしてジャクソン星を飛び立った主人公たちが見るからに怪しい“ロムルス”に立ち寄ったのか、その理由が不明。加えて、この“ロムルス”の構造と建て付けがよく分からない。だから、彼らがどの地点にいるのか、どこに行けばどういう環境が待ち受けているのか、まるで判然としない。結果として、サスペンスがイマイチ醸し出されない。そもそも“ロムルス”の中にエイリアンが大量保管されていた理由も説明されていないのた。
しかしながら、本作には面白いキャラクターが出てきて、何とか場を保たせることに成功している。それは、レインの亡き父によって“娘の安全確保”をプログラムされた旧式アンドロイドのアンディだ。これがパッと見た感じは鈍重なのだが、実に愛嬌がある。特に始終ダジャレを連発しているあたりは愉快だ。
対して“ロムルス”内に半壊状態で放置されていたもう一体のアンドロイドのルークは、海千山千の食えない奴だ。この2体の対比は、かなりの興趣を呼び込んでいる。エイリアンの生態はほぼ従来通りだが、終盤に思いがけない“突然変異体”が出てきて驚かせる。フェデ・アルバレスの演出は馬力はあるものの、節度は持ち合わせているようで、ドラマが空中分解することは無い。
レイン役のケイリー・スピーニーは、長身だった第一作のヒロインのシガニー・ウィーバーとは好対照で、小柄で可愛い感じだ。しかし、非力に見える彼女が大きな敵に立ち向かうという構図は、それなりに盛り上がる。デイヴィッド・ジョンソンにアーチー・ルノー、イザベラ・メルセド、スパイク・ファーン、エイリーン・ウーら他のキャストも申し分ない。