この若さ(2001年生まれ)で既にアカデミー主題歌賞を2度も獲得し、過去2枚のアルバムはいずれも全米1位という、Z世代の寵児であるビリー・アイリッシュのサードアルバム「ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト」は、おそらく今年度の洋楽シーンを代表する名盤になると思う。そう感じさせるだけのクォリティの高さが本作にはある。
今までの高踏的でスノッブな展開は幾分影を潜め、かなりポップで親しみ易くなっている。だが、その奥行きは恐ろしく深い。サウンドの隅々にまで神経が研ぎ澄まされており、アレンジは絶妙でスケール感も満点。軽く聴き流すにはもったいないほどの凄みを感じさせる。それでいて歌唱スタイルにはキュートな魅力があり、幅広く奨められる出来だ。
宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」からインスパイアされた「チヒロ」というナンバーもあり、日本の音楽ファンにもアピール出来る。なお、プロデュースには引き続き彼女の兄であるフィニアス・オコネルが関与し手腕を発揮しているようだが、彼もまだ20歳代だ。この兄妹には今後も良い仕事を期待したい。
2021年に結成されたロンドン出身のインディーロックバンド、ザ・ラスト・ディナー・パーティーのデビューアルバム「プレリュード・トゥ・エクスタシー」は、最近は自室でのヘビーローテーションになっている。とにかく屹立した個性と才能を感じさせるバンドで、聴き込むごとに魅力が増してくるような印象を受ける。
若い女子ばかりの5人組で、パッと見た感じはよくあるガールズバンドのようだ。アイドル的な売り方をされても、あまり違和感を覚えないだろう。しかし、そのサウンドは他の追随を許さないレベルに達している。ポスト・パンクやグラム・ロック、時にはプログレッシブ・ロックのテイストも取り入れ、退廃的かつ屈折した独特の世界を展開。一度耳にすると忘れられないほどの求心力を持つ。
若い頃のケイト・ブッシュやビョークなどからの影響も窺えるが、一方でクリアでフレッシュな持ち味もあり、広い範囲にアピールできるだろう。リードボーカルを務めるアビゲイル・モリスが身に付けるロリータやゴス系のファッション、及びそれらしい身のこなしも要チェックで、ビジュアル面でも十分話題になりそうだ。
ジョン・アンダーソンといえば、長いキャリアを誇る英国の大御所グループであるイエスのヴォーカリストとして知られていたが、彼は2008年に同バンドを脱退している。正直言ってそれ以降のイエスの作品は全盛期に比べればヴォルテージが落ちており、改めてアンダーソンの存在の大きさがクローズアップされていると思う。
2023年に彼を慕う様々なミュージシャンが集まって、ツアー用にザ・バンド・ギークスというユニットが結成されたのだが、そのパフォーマンスが好評を博し、今回そのメンバーとオリジナル・アルバムを作成。それがこの「トゥルー」である。高音域が冴えていたアンダーソンの声はさほど衰えておらず、まさに王道のプログレ・サウンドが全面展開だ。
16分を越える大作「ワンス・アポン・ア・ドリーム」をはじめ、どのナンバーも思う存分に往年のイエスの世界に浸れる出来映えだ。決して今風の音ではないが、長らくロックを聴いてきた私のようなロートルとっては、実に“刺さる”内容である。ただ唯一残念なのは、このオヤジ臭いジャケット・デザイン(笑)。やっぱりイエス系のジャケットは、ロジャー・ディーンの手による幻想的なものでなければ気分が出ない。
今までの高踏的でスノッブな展開は幾分影を潜め、かなりポップで親しみ易くなっている。だが、その奥行きは恐ろしく深い。サウンドの隅々にまで神経が研ぎ澄まされており、アレンジは絶妙でスケール感も満点。軽く聴き流すにはもったいないほどの凄みを感じさせる。それでいて歌唱スタイルにはキュートな魅力があり、幅広く奨められる出来だ。
宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」からインスパイアされた「チヒロ」というナンバーもあり、日本の音楽ファンにもアピール出来る。なお、プロデュースには引き続き彼女の兄であるフィニアス・オコネルが関与し手腕を発揮しているようだが、彼もまだ20歳代だ。この兄妹には今後も良い仕事を期待したい。
2021年に結成されたロンドン出身のインディーロックバンド、ザ・ラスト・ディナー・パーティーのデビューアルバム「プレリュード・トゥ・エクスタシー」は、最近は自室でのヘビーローテーションになっている。とにかく屹立した個性と才能を感じさせるバンドで、聴き込むごとに魅力が増してくるような印象を受ける。
若い女子ばかりの5人組で、パッと見た感じはよくあるガールズバンドのようだ。アイドル的な売り方をされても、あまり違和感を覚えないだろう。しかし、そのサウンドは他の追随を許さないレベルに達している。ポスト・パンクやグラム・ロック、時にはプログレッシブ・ロックのテイストも取り入れ、退廃的かつ屈折した独特の世界を展開。一度耳にすると忘れられないほどの求心力を持つ。
若い頃のケイト・ブッシュやビョークなどからの影響も窺えるが、一方でクリアでフレッシュな持ち味もあり、広い範囲にアピールできるだろう。リードボーカルを務めるアビゲイル・モリスが身に付けるロリータやゴス系のファッション、及びそれらしい身のこなしも要チェックで、ビジュアル面でも十分話題になりそうだ。
ジョン・アンダーソンといえば、長いキャリアを誇る英国の大御所グループであるイエスのヴォーカリストとして知られていたが、彼は2008年に同バンドを脱退している。正直言ってそれ以降のイエスの作品は全盛期に比べればヴォルテージが落ちており、改めてアンダーソンの存在の大きさがクローズアップされていると思う。
2023年に彼を慕う様々なミュージシャンが集まって、ツアー用にザ・バンド・ギークスというユニットが結成されたのだが、そのパフォーマンスが好評を博し、今回そのメンバーとオリジナル・アルバムを作成。それがこの「トゥルー」である。高音域が冴えていたアンダーソンの声はさほど衰えておらず、まさに王道のプログレ・サウンドが全面展開だ。
16分を越える大作「ワンス・アポン・ア・ドリーム」をはじめ、どのナンバーも思う存分に往年のイエスの世界に浸れる出来映えだ。決して今風の音ではないが、長らくロックを聴いてきた私のようなロートルとっては、実に“刺さる”内容である。ただ唯一残念なのは、このオヤジ臭いジャケット・デザイン(笑)。やっぱりイエス系のジャケットは、ロジャー・ディーンの手による幻想的なものでなければ気分が出ない。