元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「朽ちないサクラ」

2024-07-20 06:25:20 | 映画の感想(か行)
 かなり無理のある設定とストーリー運びなのだが、結局最後までそれほど退屈することなく観終えてしまった。これは題材のユニークさと各キャストの奮闘ぶりに尽きるだろう。特段持ち上げるような出来ではないものの、凡作と片付けてしまうのは惜しいと思わせるようなシャシンだ。

 ストーカー被害を警察に訴えていた愛知県在住の女子大生が、ストーカー犯である神社の神主に殺害される。被害届の受理を警察が先送りにしたのは、その間に慰安旅行が行なわれていたためだとのスクープ記事が地元新聞に掲載。愛知県警広報課の森口泉は、親友である新聞記者の津村千佳が記事にしたのではないかと疑うが、今度は千佳が変死体で発見される。泉は職域を逸脱して独自に犯人を捜し始める。柚月裕子による警察ミステリー小説の映画化だ。



 まず、主人公が刑事でも制服警官でもなく、広報担当者である点が面白い。一応は現場経験のある上司や知り合いの刑事などの協力を得るものの、彼女自身には捜査権など無いのだ。そのためゲリラ的な活動に終始せねばならず、普通のポリス・ストーリーとはひと味違う展開になる。

 やがて事件の裏には、公安警察という普段は活動実態が表に出ない組織が関与していることが明らかになるが、ここからの筋書きがあまりにも強引だ。カルト宗教の存在も、何やら取って付けたような印象を受ける。そもそも、この局面になれば泉の身も危うくなるのだが、ほとんど言及されていないのは失当だろう。

 とはいえ、これが長編映画第二作目となる原廣利の演出は侮れないレベルには達しており、淀みなくドラマを進めている。そして何といっても主演の杉咲花だ。おそらく現時点で二十歳代の女優の中では最も力量が安定している部類かと思う。何をやってもサマになり、本作でも安心して観ていられるパフォーマンスを披露している。

 豊原功補に安田顕、藤田朋子といったベテランに加え、坂東巳之助に萩原利久、森田想といった若手も上手く機能している。橋本篤志による撮影と森優太の音楽は万全。舞台になった愛知県豊川市の風景も捨てがたい。何やら続編が作れそうな幕切れではあるが、小説版ではシリーズ化されているので、パート2の製作もあり得るかもしれない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「座頭市物語」 | トップ | 「ファミリー・アフェア」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画の感想(か行)」カテゴリの最新記事