元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「決戦は日曜日」

2024-10-27 04:05:51 | 映画の感想(か行)
 2021年作品。本日(2024年10月27日)は第50回衆議院議員総選挙の投票日だ。だからというわけでもないが、思い出したのがこの映画。とはいえ、選挙を扱った作品は邦画においてはドキュメンタリーの独擅場である。フィクションでこのネタを料理しようとしても、複雑怪奇な選挙の有様を凌駕するほどのドラマをデッチ上げられるほどの、高い意識と知識を持ち合わせた映画人はいないというのが実情だろう。本作もあまり面白くない。とはいえ、少しは興味を惹かれる部分はある。

 千葉県の地方都市を地盤に持つ与党の重鎮の川島昌平が、衆議院解散のタイミングで病に倒れてしまう。彼の後任として白羽の矢が立ったのは、娘の有美だった。私設秘書の谷村勉は何とか彼女をサポートしようとするが、有美はワガママな上に政治に対する知見も無い。加えて川島昌平のスキャンダルが発覚し、谷村をはじめとするスタッフは窮地に追い込まれる。



 監督と脚本は坂下雄一郎なる人物だが、どうも筋書きも演出テンポもよろしくない。有美のような候補者を茶化して描き、この世界のいかがわしさを印象付けようとしているものの、実際の政治家および候補者にはヒロインを上回る困った人物など珍しくはないのだ。そもそも、映画が現実を後追いしてどうするのかと言いたい。

 そして有美は出馬に乗り気では無かったとはいえ、結局は引き受けてしまうあたりの背景が示されていない。元より政治的ポリシー云々をネタにするようなシャシンではないが、少しは政策面に言及した方が良かったのではないか。

 とはいえ、有美が周囲から担ぎ出された経緯は無視できない。二世政治家に対する問題意識はどこにもなく、皆当然のごとく後援会や地方議員たちの推薦のことばかりを話題にする。本人が少しでも自分の意見を表明すると、義理や世間体を振りかざして黙らせる。なるほど、特に地方ではこのような非生産的なことが横行しているのだろう。それを取り上げたのが唯一の本作の手柄かもしれない。

 主演の窪田正孝と宮沢りえは良くやっていたとは思う。特に、大して演技が上手くない宮沢のキャラクターが自主性が欠如した候補者役にピッタリで、怪我の功名と言うべきか。赤楚衛二に内田慈、小市慢太郎、音尾琢真といった面々も破綻の無い仕事ぶりだ。さて、本日の選挙結果はどうなるか。場合によっては政局に大きな変化が生じることは十分考えられ、来年の参院選までしばらくは政治の世界から目が離せない状況が続きそうだ。

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