元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「東京日和」

2024-12-23 06:16:11 | 映画の感想(た行)
 97年作品。去る2024年12月6日に惜しくも世を去った中山美穂の女優としての代表作は何かというと、岩井俊二監督の「Love Letter」(95年)だというのが大方の見方だろう。私もあの映画は傑作だと思うが、彼女のヴィジュアルが最も効果的に捉えられていたのはこの「東京日和」である。正直、作品としてはウェルメイドとは言い難い。しかし、中山の魅力を活写したという意味で、いつまでもファンの記憶に残ることだろう。

 写真家の島津巳喜男は、今は亡き妻のヨーコのことを思い出していた。ただし、彼女との生活はトラブルの連続だった。まず、ホームパーティを開いていた際にヨーコが招待客の水谷の名前を呼び間違えてしまい、ショックを受けた彼女はそれを切っ掛けに家を飛び出して3日間行方不明になったことだ。しかも、巳喜男の勤め先には夫が交通事故で入院したと嘘をつく始末。



 また、同じマンションに住む少年に無理矢理女の子の恰好をさせようとしたり、結婚記念日に出かけた旅行先でまたしても行方をくらましたりと、一時たりとも油断が出来ない言動のオンパレードだ。それでも巳喜男はヨーコのことが好きでたまらなかった。著名なカメラマンである荒井経惟と妻の陽子によるフォトエッセイの映画化だ。

 監督は竹中直人で、主人公の巳喜男も演じている。ただ、竹中の演出家としての力量は(他の諸作をチェックしても分かるように)それほどでもなく、骨太なドラマの構築なんか期待出来ない。本作もまとまりのないエピソードが漫然と積み上がっていくだけで、散漫な印象を受ける。まるで“明確なドラマ性は観る側で勝手に解釈してくれ”といった案配だ。

 しかしながら、ヨーコを演じる中山美穂は本当に素敵だ。映画をリアルタイムで観たときは、彼女は日本映画を代表する美人女優であると思ったほどだ。特に、野の花を片手に笑いながら走ってくるシーンはヤバいほどの吸引力がある。それだけに、彼女の早すぎる退場は残念でならない。

 あと、竹中の人脈の広さを証明するように、多彩なキャストを集合させていることには呆れつつも感心してしまった。松たか子に田口トモロヲ、温水洋一、三浦友和、鈴木砂羽、山口美也子、浅野忠信などの俳優陣はもちろん、中田秀夫や周防正行、森田芳光、塚本晋也などの監督仲間、さらに中島みゆきまで出ているのだから驚くしかない。大貫妙子の音楽と佐々木原保志によるカメラワークも要チェックだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「アングリースクワッド 公... | トップ | 「正体」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画の感想(た行)」カテゴリの最新記事