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(原題:Cidade de Deus)2003年作品。カンヌや東京などの国際映画祭で絶賛されたブラジル映画。60年代~70年代の、暴力や麻薬が日常化するリオデジャネイロ郊外の貧民街を舞台にした、弱肉強食の現実を生きる少年たちの群像劇。
これはズバリ“「仁義なき戦い」のお子様版”である。もちろん“お子様版”というのは“作りがチャチ”ということではない。“「仁義なき戦い」のヤクザの抗争劇を子供達がやっている”という意味だ。しかも実話。年端もいかない子供達が高笑いしながらケンカ相手を惨殺していくシーンの連続は、少年犯罪さえも罰せられない平和ボケの日本人からすれば“信じられない世界”であろう。
しかも、この映画はそういう実態を告発しているだけのメッセージ・ムービーではない。観ていて実に面白いのだ。映像ギミックを駆使したフェルナンド・メイレレスの演出はスタイリッシュ。ラテン民族らしいノリの良さとリズム感で、陰惨な話を“明るく”まとめている。始めと終わりで時制を一回りさせる方法も玄妙だ。そして一番の功績は各キャラクターが立っていること。子供の頃からヤクと殺しに明け暮れ、大物としてのし上がっていく街のボスと、彼の幼なじみでカメラマン志望の青年との生き方の対比がドラマに抜群のコントラストを付けている。他にもワルに成りきれないボスの片腕や、善良であったが家族を殺されたため悪の道にはまりこむ男の話など、人間観察の鋭さが光るエピソードが満載。2時間を超える上映時間もまったく長さを感じさせない。
それにしても、これは30年前の話であるから、現在の状況はもっとひどいのだろう。何かの本に“南米は、ある意味「この世の地獄」だ”と書かれていたが、それも頷ける。