希望のかなた

フィンランド映画「希望のかなた」を観にいった。

フィンランドの首都ヘルシンキ。港の船に積まれた石炭の山から、ススまみれの
男が現れる。それはシリア人の青年カーリド(シェルワン・ハジ)。内戦が激化す
る故郷アレッポから逃れた彼は、差別や暴力にさらされながらいくつもの国境を
越え、偶然にもヘルシンキに流れ着いたのだった。駅のシャワー室で身なりを整
えて警察へと出向いた彼は難民申請を申し入れ、中東やアフリカからの難民や移
民であふれる収容施設に入れられる。カーリドはそこで気さくなイラク人マズダ
ック(サイモン・フセイン・アルバズーン)と仲良くなる。一方ヘルシンキで衣類
のセールスマンをしているヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)は、さえない
仕事と酒びたりの妻に嫌気がさしていた。ヴィクストロムは家の鍵と結婚指輪を
妻の前に置き、無言のまま車で家を出る。そして衣類の在庫を処分した金をポー
カーにつぎ込んだ彼は大勝し大金を得る。そうして彼はゴールデン・パイントと
いう名のレストランを手に入れる。

私の1番好きな監督、アキ・カウリスマキの新作である。この人の映画の雰囲気
がとても好きだ。セリフが少ないことと登場人物の表情が薄いことが大きな特徴
で、人によっては眠たくなるタイプの映画かもしれない。冒頭からセリフがほと
んどない。それでも石炭の中から顔も真っ黒になって出てくる青年が何者なのか
大体想像がつくし、無言で家を出ていく中年男の事情も察しがつく。そうやって
どんどん映画に引き込まれる。
密航してきた青年カーリドは空爆によって家を破壊され、家族や親戚も失い、た
だ1人生き残った妹とは混乱で生き別れになっていた。彼の望みは妹を捜し出し、
フィンランドに呼び寄せることだ。もう1人の主人公ヴィクストロムは、念願の
レストランを手に入れたものの、ベテラン従業員もいると聞いていたが実情はそ
うではなく、やる気のない調理人がしょぼい料理を出し、繁盛していなかった。
そのカーリドとヴィクストロムが偶然出会い、カーリドはレストランで働くこと
になる。
この映画では人の冷たさも優しさも描かれている。ススだらけの姿で街を歩いて
いたカーリドは、路上でギターを弾いて歌を歌っていた男に小銭を渡し、男はカ
ーリドに身振り手振りでシャワー室の場所を教えてやる。"フィンランド解放軍"
と書かれた上着を着たネオナチに襲われかける。何とか逃げたカーリドにヴィク
ストロムは救いの手を差し伸べる。
カウリスマキはいつも社会の片隅で、あるいは底辺で生きる人々の悲哀と再生を
描いてきた。この映画もそうである。洋画で難民の話が出てくる度に、平和ボケ
した日本人の私はよくわからない、と思う。でもある日突然空爆で家や家族を失
うという不幸くらいはわかる。常に世界のどこかで戦争や内戦は行われているの
だ。カーリドやマズダックのような人は世界のあちこちにたくさんいるのだ。ど
うして不幸の連鎖はなくならないのだろう。カーリドとヴィクストロムは多くの
苦労を乗り越えて、自分の居場所を見つけていく。その姿は感動的だ。ラストシ
ーンもいい。どうでもいいがカーリド役の俳優は山田孝之に似ていると思った。
山田孝之は中東顔なんだな。



映画の後でアフタヌーンティーに行ってきた。好きなデザートを3つ選べるセッ
トにした。もちろん1つ1つは小さい。ここのアップルパイは絶品である。店名が
アフタヌーンティーというだけあって紅茶もとてもおいしかった。






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