猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

天上の花

2023-02-21 22:07:01 | 日記
2022年の日本映画「天上の花」を観に行った。

萩原朔太郎(吹越満)を師と仰ぐ青年・三好達治(東出昌大)は、朔太郎の
末妹・慶子(入山法子)に思いを寄せるが、貧乏書生と言われ拒絶されて
しまう。10数年後、慶子が夫と死別したことを知った達治は、妻・智
恵子(関谷奈津美)と離縁して彼女と結婚。太平洋戦争の真っただ中、達
治と慶子は越前三国でひっそりと新婚生活を送り始めるが、潔癖な人生
観を持つ達治は、奔放な慶子に対する一途な愛と憎しみを制御できなく
なっていく。

萩原朔太郎の娘・萩原葉子の小説「天上の花 三好達治抄」を映画化。
昭和の初め頃、萩原朔太郎の弟子とも言える三好達治は、詩はまだ売れ
ておらず、フランス語の翻訳で何とか生計を立てていた。ある時達治は
朔太郎の末妹の慶子に一目惚れをする。朔太郎の妹4人は皆美人と評判
だったが、慶子は姉たちとは違って華やかなタイプの美人だったがわが
ままで、23歳にして2度の離婚を経験していた。達治は慶子に求婚する
が叶わず、慶子は詩人・佐藤惣之助と結婚、達治も佐藤智恵子と結婚し
2児を設けた。
1930年頃から達治の詩集は人気が出始める。妻子と慎ましく暮らして
いたが、慶子の3人目の夫が死去したことにより達治は再び慶子へ交際
を求める。やがて達治は智恵子と離婚し、慶子と三国で同棲を始める。
達治が慶子と初めて会った時、朔太郎は慶子のことを「さもしくてわが
ままだ」と言っていたので、朔太郎は慶子のことがあまり好きではなか
ったのかもしれない。妹の本質を見抜いていたのだろう。それでも達治
は「でも美しいです」と言う。
物語の中で慶子はよく美しいとかきれいとか言われていたが、私は慶子
を(というか慶子役の入山法子を)美人だとは思わなかった。洋画でも邦
画でも美女役が美女でなかったらがっかりする。それ以来達治の慶子に
対する16年にも亘る片思いが始まる。慶子は23歳の若さで2度も結婚、
離婚を経験しており、更に3度目の結婚もしているので、少し男性に対
してだらしないタイプなのではないかと思った。そういう女性を16年
間思い続けた達治は良く言えば純粋、悪く言えば女性の趣味が悪い気が
する。
不良っぽい(ワルっぽい)男性に惹かれる女性もいるように、慶子のよう
に奔放でワガママな女性に惹かれる男性もいるのかもしれない。しかし
達治と慶子の同棲生活はうまくいかなかった。達治が慶子に手を上げる
ようになるのだ。慶子だけでなく達治もまたワガママだった。芸術家と
いうのはそういうものかもしれないが。達治は慶子に対して愛と憎しみ
を感じ、次第に感情を制御できなくなっていき、DVがひどくなってい
く。結局幸せにはなれないタイプの2人だったのだろう。
萩原朔太郎や三好達治は名前くらいでよく知らないのだが、こういう人
たちだったんだなあ、ということがわかって興味深かった。東出昌大は
長身なので着物がよく似合うと思う。漫画家の浦沢直樹がちょい役で特
別出演しており、本業以外にも色々する人だけど、俳優までやるんだ、
と思った。



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