猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

殺人に関する短いフィルム

2013-02-05 03:23:10 | 日記
1988年のポーランド映画「殺人に関する短いフィルム」。
21歳の青年ヤツェク(ミロスワフ・バカ)は、人生に不満を抱いて、いつもイラついていた。
カフェを出た後、ヤツェクはタクシーを拾う。川の近くに車を止めてもらったヤツェクは、
運転手(ヤン・テサシ)の首を紐で絞め上げる。抵抗し、車外に逃げる運転手を、今度は
石で殴る。毛布をかぶせて、執拗に殴り続け、運転手は息絶える。
やがてヤツェクは逮捕される。死刑を求刑され、弁護士ピョートル(クシシュトフ・グロ
ビシュ)は死刑回避に一生懸命になるが、死刑は確定してしまう。
弁護士は自分の至らなさを責める。そしてヤツェクは絞首刑に処される。

ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキの作品。青年(無職なのか?)が衝動的に
殺人を犯し、処刑されるまでがまるでドキュメンタリー映画のように淡々と描かれる。
ヤツェクが全然ハンサムじゃないところがいい。現実味を感じさせるのだ。
そしてタクシー運転手を殺害する場面の残酷なこと。頭や顔を石でガンガン殴る様子を見て
いると、こんなに残酷な殺害シーンは他の映画にはないのではないかと思ってしまう。
とてもリアルなのだ。そして、もうひとつの殺人であるところの「死刑」が描かれる。
(私は死刑反対派ではない)
決して、見て楽しい映画ではない。だがキェシロフスキの名を一躍有名にしたこの映画は、
現代人の心の虚無感を感じさせ、心に重くのしかかる名作だと思う。

キェシロフスキは残念ながら54歳の若さで亡くなった。もっと映画を撮って欲しかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする