チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

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第141話 笑 顔

2008年03月28日 | チエちゃん
 人があんなにうれしそうな顔をするのを見たのは、チエちゃんがこれまで生きてきた中で、あの時が最初で、最後だったと思うのです。

チエちゃんとヒロシは、或る事情から入籍を先にし、その約2ヶ月後、結婚式を挙げたのでした。

その日、結納を交すと同時に入籍を済ませ、やっと二人だけで部屋に落ち着いた夜(つまり、初夜かな?実際はちがうけどね・・・)、ヒロシがチエちゃんに見せた笑顔。

これでもう、チエは俺の物だと言わんばかりのニヤケ顔。

あとから、あとから、うれしさが込み上げてくるその笑顔。

後に、夢であったクルマを手に入れた時でさえ、見せなかった笑顔。

子どもでさえも、あんなにうれしそうな顔をするのを見たことはありません。

チエちゃんは「人って、本当にうれしい時はこんな顔するんだ」と唖然と見つめていたことを覚えています。

それから、チエちゃんは、ヒロシに笑顔を返し、思いました。

 よかった・・・
 この人と結婚してよかった・・・

心から、そう思ったのでした。


 私は、あの時、ヒロシがチエちゃんだけに見せてくれたあの笑顔を、今も忘れることができません。

28年前の3月29日の出来事です。