私にとって母の死は、父よりも、夫よりも、誰よりも一番堪えるだろうと思っていたけれど、今は肩の荷が下りたような、大仕事を終えたようなそんな気持ちになっている。
ただ、とうとうひとりぼっちになってしまったとも思う。
もちろん、血縁は息子たちや弟がまだいるわけだけれど、頼れる人が居なくなってしまったという気持ちが強い。
葬儀の翌日、母がお世話になっていたケアハウスに退所の手続きと荷物を受け取りに行った。
こんなに有ったのかと驚くほどの荷物だった。
施設ではすぐに運び出せるよう、100均の大きなビニールバッグ8個に詰めていてくれた。
それから、衣料用キャビネット(ここにも下着類がいっぱい入っている)、衣装ケース、テレビとテレビ台。
ポータブルトイレは施設が引き取ってくれた。
今日は、私が持ち帰ったその一部を開けてみた。
2020年10月17日から脳梗塞になるまで2年半の間に書いた74通の手紙を母は大事に取って置いてくれた。
巾着はかなり汚れているので使っていた証拠だ。
その巾着に手紙を入れて、時々取り出しては繰り返し何度も読み返していたとスタッフさんが教えてくれた。
本当の本音のところでは最期まで家族と一緒に実家で過ごしたかったに違いないが、それでは息子・娘に負担を掛けると思い、自ら施設に入居すると決めてくれた。
施設に入ってからも、家に帰りたいとは一度も口にしなかった。
コロナ禍で、そんな母にしてあげられることは手紙を書くことくらいだった。
施設に入る前、
自宅に引き取り1年間一緒に過ごしたことと、手紙を書いたこと、この2つがせめてもの親孝行だったように思う。
母親というのは、誰にとっても特別な人。感謝しかない。
だから、私も子供たちのために出来る限り、生きようと思う。