シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「マネー・ショート 華麗なる大逆転」 (2015年 アメリカ映画)

2016年03月21日 | 映画の感想・批評


 ついにマイナス金利の時代が到来!!所持金を増やすことがますます困難になってきた現代だが、2008年のバブル崩壊の前に、いち早く金融破錠の危機を予見し、リーマンショックを乗り切った4人のアウトローたちがいた。その驚くべき実話が、超豪華キャストを得て映画化。
 ヘヴィメタル愛好家のバーリは元神経科医という異色のトレーダー。数字にめっぽう強く、何日もただひたすら数字と格闘しているような不思議な人物。バブルで世の中が浮かれている中、バーリは住宅ローンを含む金融商品が債務不履行に陥る危険性を察し、「クレジット・デフォルト・スワップ」という金融派生商品に目を付ける。これを「空売り」して稼ごうというわけだ。まさに“鬼才”という名がふさわしい人物をクリスチャン・ベールが熱演。
 野心あふれる若き銀行家のベネットが、バーリの戦略を察知し動き出す。いきなり観客に経済用語を解説し始めたときは驚きだったが、金融界や銀行マンを決して美化しようとはせず、さしずめ「反逆のトレーダー」といったところか。しかし、演じるライアン・ゴズリングはやっぱりかっこいい!!そのベネットに説得される証券会社勤めのバウムは、いつも怒りまくっているような意固地なヘッジファンド・マネージャー。決して愚行を容認できないタイプだが、本当は情に厚いいい奴。演じるスティーブ・カレルの眉間のしわが、だんだんかわいく見えてくる。
 しめくくりに、強力なコネクションを持つ元銀行家のリカートが彼らの挑戦を後押しする。“レジェンド”ともいうべき美味しい役を演じるのは、この作品のプロデューサーでもあるブラッド・ピット。
 普段は経済に関心のない者まで振り向かせたアダム・マッケイ監督、この話の裏には、まさに住宅ローンの破錠から始まった市場崩壊があるわけで、単なる成功物語に終わらせていない抑えた選出がいい。最後に原題の「The Big Short」とは「世紀の空売り」という意味。「空売り」についてちょっと調べておくと、この作品の面白さが一段と高まること間違いなし!!
(HIRO)

原題:The Big Short
監督:アダム・マッケイ
脚本:アダム・マッケイ
撮影:バリー・アクロイド
出演:クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット

「ヘイトフル・エイト」(2015年アメリカ映画)

2016年03月11日 | 映画の感想・批評
 見渡す限りのワイオミングの雪原。ひとりの黒人が立ち竦んでいると、そこへ駅馬車が通りかかる。馬車にはお尋ね者の女を町まで連行するところだという賞金稼ぎの男が乗っており、黒人を乗せてやる。今にも猛吹雪が襲おうという悪天候の中、目的地へ急ぐ駅馬車の前に、保安官に任命されたばかりだという若い男が現れて拾われ、御者と4人の男女が避難場所の一軒家に到着するのである。
 馬車を引く先頭の2頭の馬(白と黒)が雪の中を疾走するところをクローズアップで捉える冒頭のスタイリッシュなカメラワークが何ともタランティーノらしい。そのあとは、どちらかというとアクションを抜きにした舞台劇のような進行で一軒家の中の人間模様をクセ者役者たちのやりとりで見せるのだ。ただし、終盤は血しぶきが飛ぶバイオレンスのオンパレードだからタランティーノ・ファンはご安心を。
 北軍の元軍人で今は賞金稼ぎを生業としている黒人にサミュエル・L・ジャクソン、かれと旧知の賞金稼ぎにカート・ラッセル、その手錠につながれて吊るし首を待つ女にジェニファ・ジェイソン・リー。荒野の一軒家の先客たちも個性派ぞろいで、南軍の元将軍にブルース・ダーン、絞首刑の執行人として町へ赴く途中だという男にティム・ロス、得体の知れないカウボーイにマイケル・マドセン。かれらに保安官、一軒家の世話人、御者を合わせた男女が雪嵐の通り過ぎるまで一つ屋根の下で過ごすことになるのだが、いがみあっている最中に殺人事件が起きる。
 ところで、最初のタイトルで出演者のトリを飾る、今をときめく人気スターが待てど暮らせど一向に姿を現さない。おかしいなと思っていると、これがこの映画のドンデン返しの仕掛けだったりして、タランティーノはまったく油断ができないのである。
 というわけで、お楽しみ満載のマカロニウェスタン風味の大ぼら話をとくと玩味いただきたい。むろん、エンニオ・モリコーネのテーマ曲(アカデミー賞受賞)もいい。(健)

原題:The Hateful Eight
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
撮影:ロバート・リチャードソン
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン、チャニング・テイタム

「X-ミッション」(2015年 アメリカ映画)

2016年03月01日 | 映画の感想・批評
 世界に名を売ろうと模索していたモトクロス選手が、友人の死をきっかけに、FBI捜査官になり、犯罪集団に潜入捜査をすることになる。ただ、主犯格に友情ともいえる関係を築くようになり・・・。
 最近では、当たり前になったCGを使わず(「ノーCG」という宣伝だったが、明らかにCGと分かるシーンもあったように・・・。「アクションシーンはノーCG」ということなのでしょうね。ちょっとガッカリ)、生身のアクションシーンでハラハラドキドキの連続であった。モトクロスに始まり、大波でのサーフボード、高山から生身で飛行するスカイ(?)アクション(「ウィングスーツ」という服なのですね。あれで飛ぶことが出来るのですね。すごい!)、そして、フリークライミングまで「スタントアクション」のテンコ盛り。次から次へと繰り広げられるアクションシーンに、圧倒され続けた。もちろん、プロモーション映画ではないので、それらに、「オザキ8」という自然保護テーマと謎解きと友情ドラマをミックスさせて出来上がった「一本の映画」である。そう「映画」の筈である。
 ただ、「アクション」がベースになってしまったのか、意図的なのか分からないが、先程のテーマ(軸)である「自然破壊に対する訴え」や「犯罪サスペンス(犯人すぐ分かるけど)」や「愛情(男女・親子)・友情ドラマ」を別々に盛り込んだという印象で、それぞれの要素がうまく混ざり切っていないと感じた。俳優陣は若手中心で、最後の味付けもしっかり出来ず、結果的にアクションだけが目立つ映画となったのではないだろうか。そう、「アクション」を観たい人には絶対お薦め!
 監督のエリクソン・コアは、「ワイルド・スピード」の撮影監督を務めた人。もっともっとアクションのみを突き詰めて、全編ノーCGにしていれば、「ワイルド・スピード」越えに繋がっていたのでは?意識し過ぎたのでしょうか。肩の力が抜けた次回作に期待したい。
(kenya)

原題:「Point Break」
監督・撮影:エリクソン・コア
脚本:カート・ウィマー
音楽:ジャンキーXL
出演:エドガー・ラミレス、ルーク・ブレイシー、テリーサ・パルマー、レイ・ウィンストン、トビアス・サンテルマン、デルロイ・リンドー