シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

タイピスト!(2012年・フランス映画)

2013年08月23日 | 映画の感想・批評
 1950年代のフランス。女性の憧れの職業は「秘書」で、彼女たちのステイタスを高めるのはタイプの技能だった。都会暮らしに憧れて田舎から出てきたローズは、ルイが経営する保険会社の秘書に応募し採用される。ドジで不器用なローズの唯一の才能はタイプの早打ち。ローズを世界早打ち大会で優勝させるべく、ルイは鬼コーチとなって猛特訓を始める。
 レジス・ロワンサルは本作が長編劇映画監督デビューとなったが、タイプライターの歴史を取り上げたドキュメンタリー作品の中に、早打ち大会の模様が紹介されているのを見て、タイプライターが競技になることに驚いたのがきっかけで調査を始め、脚本を書き上げた。
 映画に登場するタイプライターは、当然欧文タイプライターである。現在われわれ日本人が使っているパソコン、あるいはワープロの文字配列はアルファベット+かなとなっている。私はかなの位置を覚えるのが面倒なので、アルファベットを使っているが…。
 いっぽう和文タイプライターは、ひらがな・カタカナ・漢字を使用するため活字数が膨大で、キーボードを叩いて打ち出す欧文タイプライターとは違ったしくみをしている。活字の詰まったバケット部を上下左右にスライドさせて操作する。早打ち大会向きの機器ではない。早打ち世界大会といっても、欧米至上主義だろうと思っていたら、映画のクライマックス1959年の大会に韓国代表を出場させていたのは、バランスを取るため?。
 ところで、映画を見ていてストーリー展開以上にハラハラしたのは、そんなに速く、強くキーを打っていたら腱鞘炎になってしまうよ、という心配だった。(久)

原題:Populaire
監督:レジス・ロワンサル
脚本:レジス・ロワンサル
撮影:ギョーム・シフマン
出演:ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ、ベレニス・ベジョ、ミュウ=ミュウ

「バーニー みんなが愛した殺人者」(2011年アメリカ映画)

2013年08月11日 | 映画の感想・批評
 実話の映画化であるが、ずいぶん明るく撮っているのがいい。
 テキサス州は大きく5つに分かれ、それぞれ気風や文化が違うという解説が冒頭に入る。その中部に位置するカーセージという小都市が舞台である。葬儀屋の助手に就職した30代後半のバーニー(ジャック・ブラック)は、いかつい身体に似合わず人当たりがよくてやさしい性格なので、とりわけ中高年婦人には滅法人気がある。アイデアマンで葬儀に趣向を凝らし経営者の信頼も厚い。敬虔な信者であるかれは賛美歌を得意とし、日曜の教会の礼拝でもみんなを先導する役割を演じている。そんなかれが地元の資産家の葬儀を担当し、高慢で知られる町の鼻つまみ者の未亡人(シャーリー・マクレーン)に気に入られ、身の回りの世話をするうちに、召使い代わりにこき使われることになって、ある日もののはずみで未亡人を射殺してしまうのだ。ガレージの冷凍庫に遺体を隠し、未亡人は脳梗塞で倒れて療養中だと繕う。彼女を上得意とする株式仲買人がまったく連絡のとれないことを不審に思い、町の保安官に家宅捜索を要請する。こうして遺体が発見され、重要参考人として呼ばれたバーニーはあっさり犯行を自供するのである。
 町の人びとは「虫も殺せないバーニーに殺人なんかできっこない。よしんば事実としてもあのクソババアが悪いに決まっている」と噂する。こういう被告側に有利な状況では公正な裁判など望めない。そこで、例外的に管轄外の隣接する郡の裁判所で審理されることになる。冒頭の説明がここで生きてくる。
 ドラマの合間に町の人びとがインタビューに答える形式でバーニーの人となりを語る。芸達者なブラックが演じるだけでもキャラは十分伝わってくるが、人びとの口を通してさらなるバーニー像の肉付けがされるという趣向だ。南部のマッチョからすると、バーニーは「シシー(女っぽい)」に映るのだが、それでも人びとは「かれの個人的な嗜好などどうでもいい」と言ってのけてバーニーをかばうのである。
 最後のクレジットタイトルで、服役中の本人にブラックが面会(取材)している場面が出る。いかにも人のよさそうな男だった。(ken)

原題:Bernie
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター、スキップ・ホランズワース
撮影:ディック・ポープ
出演:ジャック・ブラック、シャーリー・マクレーン、マシュー・マコノヒー、ブラッディ・コールマン、リチャード・ロビショー、リック・ダイアル

「真夏の方程式」 (2013年 日本映画)

2013年08月02日 | 映画の感想・批評


 2007年にTV放映され、大反響を呼んだ連続ドラマ「ガリレオ」。あれから5年、新シリーズも更なる高視聴率を得、2作目の映画となる「真夏の方程式」でブームは頂点へ。
 主役の湯川学を演じるのは、老若男女あらゆる層に人気の高い福山雅治。前作「容疑者Ⅹの献身」の後、NHK大河ドラマ「龍馬伝」を経て一層演技に磨きがかかり、湯川学になりきったその姿には貫録さえ感じてしまう。
 共演は吉高由里子、北村一輝らレギュラー陣をはじめ、今回の事件の舞台となる「玻璃ヶ浦」で旅館を営む家族に、杏、前田吟、風吹ジュンら演技力のある俳優が揃った。そして、子ども嫌いな湯川が深く関わることになる恭平役の山光君が、自然体の演技でとてもいい味を出している。
 原作はベストセラー作家・東野圭吾の小説「ガリレオ」シリーズ長編最新作。美しい海の町で起こった不可解な事件を海底資源の開発計画のアドバイザーとして招かれていた湯川が、おなじみ科学の目を通してその真相を解き明かしていく。
 「真夏の方程式」という題名が示す通り、美しい海、花火、自由研究と、夏休みの上映にもってこいの内容。今回の謎解きはあまり難しいものではなく、小学生でも十分理解できそう。映画を見た後はペットボトルロケットもぜひ作ってみて!!
    (HIRO)

監督・西谷弘
脚本・福田靖
撮影・柳島克己
出演・福山雅治、吉高由里子、杏、前田吟、風吹ジュン、白竜、北村一輝、山光