ソウルに暮らす12歳の少女ナヨン(移住後は「ノラ」と名乗る)と少年ヘソンは、ナヨン一家がカナダに移住することになり、お互いに恋心を抱いていたが、離れ離れになり、連絡が取れなくなってしまう。ただ、ヘソンはノラのことが忘れられず、フェイスブックでノラを探していた。偶然、それをノラが見つけ、二人は12年振りに、ビデオ通話で再会を果たす。二人は実際に遭いたいと思うのだが、お互いに仕事が忙しく逢う事が出来ない。ノラは恋しくてソウル行の便ばかり気になってしまうことから、このままでは良くないと思って、暫く話すのは止めようと提案し、ヘソンは渋々受け入れる。
それから更に12年経ち、ノラは作家と結婚し、ニューヨークに住んでいた。ヘソンは最近、付き合っていた彼女と別れた。そこで、ヘソンは、ノラが結婚しているのは承知の上で、ニューヨークに行くことにするのである。どういった再会になるのだろうか。ノラの夫はどう思うか。。。
じわっと心に染み渡る映画。筋書きはよくあるケースに思うが、12歳の時の気持ちから、24歳、36歳と、12年おきに、それぞれの状況において、気持ちが変化した部分、変化していない部分が絡みながら、今、この瞬間を肯定する気持ちが、映し出されていく。特に、24年振りに実際に再会するニューヨークでのシーンは、ロングショットで多く撮られていて、24年間の二人の今までの気持ちの整理する時間を表現しているようにも思えたし、観客に考える間合いを与えているようにも想像出来るショットの連続で素晴らしかった。
「パストライブス」は直訳すると「前世」。もし、移住していなければ・・・、もし、24歳の時に遭っていたら・・・、違う人生を送っていたかもしれない。今と同じ人生だったかもしれない。それは誰にも分からない。イニョン“縁”である。今は、お互いに、違う場所で違う人生を送っている。一緒には過ごせない。が、お互いに深く想っている。これからも想い続ける。でも、結ばれることはない。更に本作は、国柄(良い悪いではない)による人の気質の違いにも触れている。韓国人とアメリカ人の違いを、ノラとヘソンに重ね合わせている。それは、ノラが夫に24年振りに遭ったヘソンの印象を話すシーンに出てくる。生まれ故郷とは違う気質になった(なっていた:元々そうだった)と自ら気付いたシーンには驚きつつも納得した。前述のニューヨークの公園で会う二人の態度にも表現されていた。語らないことで語る映画ならではのシーンだった。この公園のシーンだけでも映画1本分の価値がある。それを可能にした自然な演技とショットが素晴らしかった。
ラストに、ノラの涙、受け入れる夫、韓国への帰国途中に遠くを見つめるヘソン。次元が違えども、通じるものがある深い愛。惚れた腫れたではない恋愛映画であった。
本作は、アカデミー賞作品賞と脚本賞の候補になった。両方共納得である。デビュー作だが、監督賞候補もありだったと思う。編集も撮影も良かった。予告編のみみたいだが、ショーン・マーシャルによるソロ・ユニット“キャット・パワー”によるリナーナのカバー曲「STAY」は秀悦。映画にピッタリ!YouTubeでご覧ください。
(kenya)
原題:Past Lives
監督・脚本:セリーヌ・ソン
撮影:シャビアー・カークナー
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
それから更に12年経ち、ノラは作家と結婚し、ニューヨークに住んでいた。ヘソンは最近、付き合っていた彼女と別れた。そこで、ヘソンは、ノラが結婚しているのは承知の上で、ニューヨークに行くことにするのである。どういった再会になるのだろうか。ノラの夫はどう思うか。。。
じわっと心に染み渡る映画。筋書きはよくあるケースに思うが、12歳の時の気持ちから、24歳、36歳と、12年おきに、それぞれの状況において、気持ちが変化した部分、変化していない部分が絡みながら、今、この瞬間を肯定する気持ちが、映し出されていく。特に、24年振りに実際に再会するニューヨークでのシーンは、ロングショットで多く撮られていて、24年間の二人の今までの気持ちの整理する時間を表現しているようにも思えたし、観客に考える間合いを与えているようにも想像出来るショットの連続で素晴らしかった。
「パストライブス」は直訳すると「前世」。もし、移住していなければ・・・、もし、24歳の時に遭っていたら・・・、違う人生を送っていたかもしれない。今と同じ人生だったかもしれない。それは誰にも分からない。イニョン“縁”である。今は、お互いに、違う場所で違う人生を送っている。一緒には過ごせない。が、お互いに深く想っている。これからも想い続ける。でも、結ばれることはない。更に本作は、国柄(良い悪いではない)による人の気質の違いにも触れている。韓国人とアメリカ人の違いを、ノラとヘソンに重ね合わせている。それは、ノラが夫に24年振りに遭ったヘソンの印象を話すシーンに出てくる。生まれ故郷とは違う気質になった(なっていた:元々そうだった)と自ら気付いたシーンには驚きつつも納得した。前述のニューヨークの公園で会う二人の態度にも表現されていた。語らないことで語る映画ならではのシーンだった。この公園のシーンだけでも映画1本分の価値がある。それを可能にした自然な演技とショットが素晴らしかった。
ラストに、ノラの涙、受け入れる夫、韓国への帰国途中に遠くを見つめるヘソン。次元が違えども、通じるものがある深い愛。惚れた腫れたではない恋愛映画であった。
本作は、アカデミー賞作品賞と脚本賞の候補になった。両方共納得である。デビュー作だが、監督賞候補もありだったと思う。編集も撮影も良かった。予告編のみみたいだが、ショーン・マーシャルによるソロ・ユニット“キャット・パワー”によるリナーナのカバー曲「STAY」は秀悦。映画にピッタリ!YouTubeでご覧ください。
(kenya)
原題:Past Lives
監督・脚本:セリーヌ・ソン
撮影:シャビアー・カークナー
出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ