新型コロナウィルスに続き、地球温暖化の問題が今、世界各国に問われている。先日行われた「国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)」では、「産業革命前からの世界の気候上昇を1.5度以内に抑えるための努力の追求を決意する」という合意文書が採択された。各国が1.5度という目標を明確に掲げたことは大きな成果なのだが、それぞれの国に課せられた課題には違いがあるようで、まだまだ石炭火力に頼らなくてはならない日本は温暖化対策に後ろ向きだと見なされ、「化石賞」を贈呈されるという不名誉な結果に。今後原子力発電を含め、根本的な見直しが迫られているのは確かだ。
今から3年前(2018年)、この気候変動に不安を感じ、その対策を呼びかけるために一人で活動を始めたスウェーデンに住む15歳の少女がいた。彼女の名はグレタ・トゥーンベリ。その方法は国会議事堂の前で毎週金曜日に学校を休んでストライキを決行、自作の看板やリーフレットを作り、気候変動に無関心な政府に抗議するというものなのだが、そのやり方が徐々に注目を集め、世界中の特に若者から支持を集めて大きな波に。その年にポーランドで開かれた「COP24」や、翌年の「世界経済フォーラム(ダボス会議)」など、様々な会議やイベントに招かれ、その都度印象強く危機を訴え続けた。
グレタが一人で座り込みストライキを始めることを友人から聞き、取材に向かったのがネイサン・グロスマン監督。最初は短編作品か子ども活動家のシリーズ物を考えていたそうだが、グレタの活動が他の地域まで広がりを見せるのを実感し、本格的なドキュメンタリー作品を制作することを決意。グレタの行動を撮影するうちに彼女を支える家族たちとも親密な関係を築き、プライベートな面も明らかに。グレタの生い立ちやアスペルガー症候群という障碍を持っていることも躊躇なく表に出し、グレタの人間像を確かなものとしてつかんでいった。撮影や録音もほとんど監督自身が行ったそうで、なんとあの世界中で話題となった「国連気候行動サミット」に向け、ヨットで大西洋を渡ったときも同行し、その過酷な航海の様子をカメラの収めてしまうのだから、その本気度には胸を打たれるしかない。
コロナ禍で、あれほど大きなうねりとなったグレタの活動もやや波を静めたかに思えたが、今回のCOP26に向けてもしっかり自分の意見を主張し、さらにたくましく成長している姿をTVの報道番組で目にし、頼もしく思えた。一つのことにこだわりを持てばそれが解決するまで決して諦めずに続けられるというのは、アスペルガー症候群を持つ人の一つの特徴だそうだが、本人も語っているように、そのことは地球の未来のためにはよし!と思っているとか。それでは自分はいったい何ができるか考えてみたが、今回映画館には車で直行せず、電車と徒歩で向かうことにした。これでガソリン10リットルを燃やしてできる二酸化炭素を排出せずに済む。たしかに些細なことなのだが、一人ひとりが意識してこういう些細なことを積み重ねることで、少しでも地球温暖化防止に協力できることを気づかせてくれた、ドキュメンタリー作品としての価値が十分に認められる作品だ。
(HIRO)
原題:I Am Greta
監督:ネイサン・グロスマン
脚本:ネイサン・グロスマン、ハンナ・レヨンクヴィスト、ぺーる・K・キルケゴー
撮影:ネイサン・グロスマン
出演:グレタ・トゥーンベリ、スヴァンテ・トゥーンベリ、マレーナ・エルンマン