1973年というから、今からもう45年ばかり前の事件である。アメリカの石油王ジャン・ポール・ゲティのハイティーンになる孫ジョン・ポール・ゲティⅢ世がイタリアで誘拐される。私も当時センセーショナルに報じられた外電をよく覚えている。ところが、飽くことのない金銭欲に凝り固まったこの大富豪は身代金の要求に対して、記者団を前に「一文たりとも払うつもりはない」と言い放つのだ。
実はこれには色々と事情があって、大富豪の三男坊(ゲティ・ジュニア)夫婦の長男(Ⅲ世)が誘拐されるのであるが、このジュニアがダメ男で父親の期待に応えられず挫折し薬漬けとなって、とうとう離婚する羽目になる。しっかり者の妻ゲイルは慰謝料を受け取らないかわりに子どもたちの親権を獲得する。いうなれば、大富豪にとっては大打撃で、このときゲイルとの確執が生じるのである。
しかし、大富豪も人の親であり祖父である。実のところ、大勢いる孫の中でもジョン・ポールⅢ世がとりわけかわいいらしい。そこで、かつてCIAに在籍した元諜報員チェイスを雇って誘拐犯たちと交渉させるのである。こうして、ゲイルとチェイスを軸にⅢ世救出の秘策が練られるのである。
いくらかフィクションの部分があるので、真実かどうかわからないが、Ⅲ世を誘拐した実行犯のイタリア人がその面倒を見る役割を与えられてアジトを転々とするうちに、Ⅲ世に対して徐々に情が移ってくるという設定がおもしろい。
それと、大富豪の拝金主義、人間不信と、その裏腹にある家族愛みたいな心情が映画に膨らみを持たせ、老優クリストファ・プラマーがいい芝居をする。
スコット監督は、往年の名匠ラオール・ウォルシュやヘンリー・ハサウェイを彷彿とさせるいつもながらのタフな力業で133分の長丁場を飽きさせずに観客をハラハラさせる。とても80歳とは思わせない力業で。
ところで、Ⅲ世を演じた若手有望株チャーリー・プラマーはクリストファ・プラマーとは無関係らしい。また、当初の配役ではケヴィン・スペイシーが大富豪を演じる予定だったが、例の醜聞によって交替したそうだ。(健)
原題:All the Money in the World
監督:リドリー・スコット
原作:ジョン・ピアースン
脚本:デヴィッド・スカルパ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:ミシェル・ウィリアムズ、クリストファ・プラマー、マーク・ウォールバーグ、チャーリー・プラマー、ティモシー・ハットン、ロマン・デュリス
実はこれには色々と事情があって、大富豪の三男坊(ゲティ・ジュニア)夫婦の長男(Ⅲ世)が誘拐されるのであるが、このジュニアがダメ男で父親の期待に応えられず挫折し薬漬けとなって、とうとう離婚する羽目になる。しっかり者の妻ゲイルは慰謝料を受け取らないかわりに子どもたちの親権を獲得する。いうなれば、大富豪にとっては大打撃で、このときゲイルとの確執が生じるのである。
しかし、大富豪も人の親であり祖父である。実のところ、大勢いる孫の中でもジョン・ポールⅢ世がとりわけかわいいらしい。そこで、かつてCIAに在籍した元諜報員チェイスを雇って誘拐犯たちと交渉させるのである。こうして、ゲイルとチェイスを軸にⅢ世救出の秘策が練られるのである。
いくらかフィクションの部分があるので、真実かどうかわからないが、Ⅲ世を誘拐した実行犯のイタリア人がその面倒を見る役割を与えられてアジトを転々とするうちに、Ⅲ世に対して徐々に情が移ってくるという設定がおもしろい。
それと、大富豪の拝金主義、人間不信と、その裏腹にある家族愛みたいな心情が映画に膨らみを持たせ、老優クリストファ・プラマーがいい芝居をする。
スコット監督は、往年の名匠ラオール・ウォルシュやヘンリー・ハサウェイを彷彿とさせるいつもながらのタフな力業で133分の長丁場を飽きさせずに観客をハラハラさせる。とても80歳とは思わせない力業で。
ところで、Ⅲ世を演じた若手有望株チャーリー・プラマーはクリストファ・プラマーとは無関係らしい。また、当初の配役ではケヴィン・スペイシーが大富豪を演じる予定だったが、例の醜聞によって交替したそうだ。(健)
原題:All the Money in the World
監督:リドリー・スコット
原作:ジョン・ピアースン
脚本:デヴィッド・スカルパ
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:ミシェル・ウィリアムズ、クリストファ・プラマー、マーク・ウォールバーグ、チャーリー・プラマー、ティモシー・ハットン、ロマン・デュリス