港町の水産工場で働く登美子(田中裕子)は30年前に失踪した夫を待ち続けていた。登美子を慕う幼なじみの春男(ダンカン)がどれほど想いを打ち明けても、周囲の人間が春男との再婚をいくら勧めても、登美子は婚姻関係を解消せずに夫を待ち続けている。一人暮らしの登美子は仕事から帰ると、誰もいない家の中に向かって「ただいま」とつぶやく。そんな毎日が続いていた。
登美子のもとを2年前に失踪した夫を捜す奈美(尾野真千子)が訪れた。最初は夫の洋司(安藤雅信)がいなくなった理由を求めていた奈美だが、やがて職場の男性と恋愛関係になり、新しい人生を希望するようになった。登美子はある街で偶然写真で顔を知っていた洋司を見つけた。洋司は「消えてしまいたかった」と言うが、失踪した理由は判然としない。登美子は何故か洋司を見つけたことを奈美には知らせなかった。夫の捜索を早々と諦めた奈美に反発を覚えているのであろうか。奈美のもとを突然訪れた洋司は彼女の恋人と鉢合わせとなり、2年ぶりの再会は修羅場と化してしまう。奈美は離婚して現在の恋人と再婚することを宣言し、洋司は奈美のもとを去った。
奈美はさっさと失踪した夫を見限ったのに、なぜ登美子は30年間も夫を待ち続けるのか。ここがこの映画の最大の謎であり、また監督の一番伝えたいところでもあるのだろう。登美子は自分に想いを寄せる春男をけして嫌いなわけではない。むしろ好意を抱いていると言ってもいいだろう。しかし春男の愛はどうしても受け入れられなかった・・・謎は意外なところから解き明かされた。奈美に追い出された洋司が一夜の宿を求めて登美子の家を訪れた時、深夜に目を覚ました洋司は奇妙な光景を目にする。誰もいない部屋で登美子が誰かに話しかけている。失踪したはずの夫と会話しているのだ。登美子の頭の中では夫は帰ってきている。妄想と幻覚の中で夫と暮らしていたのだ。おそらく登美子は長い間、夫の帰りを待つうちに、心のバランスを崩してしまったのだろう。
「私、狂ってるから」と登美子がつぶやくシーンがある。登美子自身も自分の異常(?)に気づいているのかもしれない。精神を病んでも夫と一緒にいたいという愛のobsession(強迫衝動)を表現して余りある。波打ち際を歩くラストシーンは、まるで狂気と正気の境界線上を生きる登美子を象徴しているかのようだ。(KOICHI)
監督:久保田直
脚本:青木研次
撮影:山崎裕
出演:田中裕子 尾野真千子 安藤雅信 ダンカン
登美子のもとを2年前に失踪した夫を捜す奈美(尾野真千子)が訪れた。最初は夫の洋司(安藤雅信)がいなくなった理由を求めていた奈美だが、やがて職場の男性と恋愛関係になり、新しい人生を希望するようになった。登美子はある街で偶然写真で顔を知っていた洋司を見つけた。洋司は「消えてしまいたかった」と言うが、失踪した理由は判然としない。登美子は何故か洋司を見つけたことを奈美には知らせなかった。夫の捜索を早々と諦めた奈美に反発を覚えているのであろうか。奈美のもとを突然訪れた洋司は彼女の恋人と鉢合わせとなり、2年ぶりの再会は修羅場と化してしまう。奈美は離婚して現在の恋人と再婚することを宣言し、洋司は奈美のもとを去った。
奈美はさっさと失踪した夫を見限ったのに、なぜ登美子は30年間も夫を待ち続けるのか。ここがこの映画の最大の謎であり、また監督の一番伝えたいところでもあるのだろう。登美子は自分に想いを寄せる春男をけして嫌いなわけではない。むしろ好意を抱いていると言ってもいいだろう。しかし春男の愛はどうしても受け入れられなかった・・・謎は意外なところから解き明かされた。奈美に追い出された洋司が一夜の宿を求めて登美子の家を訪れた時、深夜に目を覚ました洋司は奇妙な光景を目にする。誰もいない部屋で登美子が誰かに話しかけている。失踪したはずの夫と会話しているのだ。登美子の頭の中では夫は帰ってきている。妄想と幻覚の中で夫と暮らしていたのだ。おそらく登美子は長い間、夫の帰りを待つうちに、心のバランスを崩してしまったのだろう。
「私、狂ってるから」と登美子がつぶやくシーンがある。登美子自身も自分の異常(?)に気づいているのかもしれない。精神を病んでも夫と一緒にいたいという愛のobsession(強迫衝動)を表現して余りある。波打ち際を歩くラストシーンは、まるで狂気と正気の境界線上を生きる登美子を象徴しているかのようだ。(KOICHI)
監督:久保田直
脚本:青木研次
撮影:山崎裕
出演:田中裕子 尾野真千子 安藤雅信 ダンカン