シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「サンシャイン/歌声が響く街」(2013年イギリス映画)

2014年08月21日 | 映画の感想・批評
 イギリス製のミュージカル映画である。冒頭はいきなりアフガニスタンの戦闘場面で、デイヴィーと幼なじみのアリー、ロニーは同じ部隊に所属するが、運悪くロニーが重傷を負い、ともに兵役を終えて故郷エディンバラ郊外のリースへ帰還する。スコットランドの町だ。周知のようにスコットランドでは来月にイギリスから独立するかどうかをめぐって住民投票が行われる。要するに歴史も文化もイングランドとは異なる地域である。
 デイヴィーの帰りを待ち受けるのは銀婚式を間近に控える両親と看護師をしている妹のリズだ。リズはアリーとつきあっていて、デイヴィーはリズの紹介で看護師のイヴォンヌと出会う。25年連れ添った仲睦まじい両親、二組の若いカップル・・・陽気な歌曲を散りばめて地方都市のありきたりの家族のきわめて順調で安穏とした日常を描く。作劇の基本たる起承転結がこれほど明快なドラマも珍しい。
 それで、起承転結の転がなかなかドラスティックだ。両親を含めた三つのカップルがそれぞれ別の理由で見る見るうちに崩壊して行くという展開となる。まあ言ってみれば、行き違いの悲劇というか、ある意味、リアリズムでは無い劇的(人工的)な流れを作るのだ。その理由は、何十年もむかしのただ一度の不倫が発覚したとか、地方の病院の看護師では飽き足りなくなってアメリカの大病院でもっと高度の医療資格を取ろうと故郷を出る決意を固めるとか、イングランドの実家の母を見舞うので「同行して」と願う彼女にスコットランド男の意地を見せて「行かない」とついいってしまったとか、かなりシリアスだったり本人が考えるほど深刻でなかったりするわけだ。人生とはそういうものである。
 もちろん、この映画はミュージカルだから、絡まった糸が解きほぐされて、これまた非現実的にそれぞれの人生がハッピーに終わることになっているのでご安心あれ。因みに監督はイングランド出身だそうである。  (ken)

原題:Sunshine on Leith
監督:デクスター・フレッチャー
脚本:スティーヴン・グリーンホーン
撮影:ジョージ・リッチモンド
出演:アントニア・トーマス、ピーター・ミュラン、ジェーソン・フレミング、ジョージ・マッケイ、フレイア・メイヴァー、ジェーン・ホロックス

「GODZILLA ゴジラ」 (2014年 アメリカ映画)

2014年08月11日 | 映画の感想・批評


 日本初の怪獣映画「ゴジラ」が公開されてから60年。この記念すべき年に2度目のハリウッド製ゴジラ映画が誕生した。ゴジラ映画は今までに28本が日本の東宝で製作され、1998年のハリウッド製と合わせて30作目となる。日本が生んだこの怪獣はもう世界中に知れ渡り、本作はアメリカですでに興収2億ドルを超える大ヒットを記録している。還暦を迎え、ますますパワーアップしたゴジラに会える!!
 今回メガホンをとったのは、39歳の新鋭ギャルス・エドワーズ監督。母国イギリスでドキュメンタリー作品などのVFXクリエイターとして活躍。長編映画は「モンスターズ/地球外生命体」のみで、なんと本作がハリウッドメジャー初監督作品となる。
 エドワーズ監督、よほど日本のゴジラ映画がお気に入りと見えて、映画は1954年3月1日のビキニ環礁で行われた水爆実験のニュースから始まる。この年こそゴジラの第1作が誕生した年であり、その後、物語の核となる原子力発電所の事故(まさにHUKUSHIMA)に結び付け、核がもたらす脅威を観客に否応なしに見せつけてくれる。
 それにも増して特徴的なのが、ゴジラの登場場面。あのテーマソングが聞こえないのは残念だが、なかなか姿を現さずに被害を先に見せてからサスペンスを煽るところは、まさにTOHOゴジラ映画の真髄。新怪獣ムートー(MUTO)との戦いも、「トランスフォーマー」のようにこれでもかと何度も繰り返すのではなく、(さすがに見ていてしんどい)最後の一戦に集中して盛り上げる手法は、観客と一体となる(思わず応援したくなる)という意味で成功している。
 それにしても渡辺謙演じる芹沢博士、いくら放射能を食べてくれるとはいえ、あんな恐ろしい生物を飼っちゃいけませんなあ。 
 (HIRO)

監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:マックス・ボレンスタイン
撮影:シーマス・マッガーヴェイ
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、渡辺謙、エリザベス・オルセン、ブライアン・クランストン、ジュリエット・ビノシュ

マダム・イン・ニューヨーク(2012年インド)

2014年08月01日 | 映画の感想・批評


 シャシはラドゥというお菓子(食べてみた~い!)を、とっても上手に作るごく普通の主婦。姪の結婚式の手伝いのため、夫や子どもたちより一足先にニューヨークへ行くことになる。でも、彼女、英語が話せなくて、家族からいつもからかわれては傷ついていた。
 外国に旅行してその国の言葉が話せないのはとっても不便である。シャシがカフェに入って注文するのに四苦八苦するシーンがある。普段自分が住んでいる国と注文の仕方がずいぶん異なっていて、おたおたしているうちに後ろに長蛇の列が出来たりすると、ただでさえ緊張しているのに余計に何を注文していいのか分からなくなってしまう。こんな経験は決してシャシだけのものではない。
 そこで一念発起、彼女は「4週間で英語が話せる」という英会話学校に通うことにする。いろんな国からさまざまな理由でアメリカへやって来たクラスメートと一緒に学んでいるうちに、夫や子どもたちが一番で自分を二の次にしてきたシャシは、次第にひとりの人間として自信を取り戻し輝いていく。
 インドはもともとイギリスの植民地だったし、シャシの家庭も経済的に恵まれた環境なので、シャシの年齢では学校時代に英語を学んだのではと思っていたが、必ずしもそうではなかったようだ。今や日本では若い人たちは英語プラスもう一つ外国語がしゃべれることが就職に有利になるという時代だそうだ。外国旅行で必死に知っている英単語を並べ、指さしでなんとかコミュニケーションを図っている中高年とはえらい違いである。
 色鮮やかなサリーを身に纏ったシャシが、とにかく美しい。最近はインド映画のいきなり歌って踊り出すシーンが以前と比べてグッとおとなしくなってきているが、やっぱり楽しくて大好きだ。(久)

原題:English Vinglish
監督:ガウリ・シンデー
脚本:ガウリ・シンデー
出演:シュリデヴィ、アディル・フセイン、メーディ・ネブー、アミターブ・バッチャン