トニー賞受賞のブロードウェイ・ミュージカルの映画化である。御年84歳のクリント・イーストウッドは、かねてより音楽的感性にすぐれた巨匠だと思っていたが、50代の終わりに撮ったチャーリー・パーカー伝「バード」から30年近い年月を経て、再び音楽の世界を描く機会を得た。
ニュー・ジャージー州の田舎町にたむろする十代後半の不良グループ3人がバンドを組み、やがて才能のある作曲家志望の若者を加入させたことによって、フォー・シーズンズというグループ名でメジャーデビューを果たすのである。リーダーのトミーは根っからのワルで遊び人。低音が売りのニックは気はいいけれど脳天気。ボーカルのフランキーは個性の光る抜群の歌唱力で中心的存在。作曲担当のボブは野心満々の自信家。そのうち、トミーが裏の世界から多額の借金をしていて追いたてられていることがわかり、グループは危機に瀕する。
借金の取り立てが現れるスタジオは今まさにエド・サリバン・ショーが始まろうとしているそのときで、例の分厚い身体を猫背で丸めるサリバンがフォー・シーズンズを紹介する後ろ姿が捉えられる。このサリバンの背後からのシルエットがそっくりだった。そっくりといえば、若き日の「ジョー・ペシ」が調子の良さそうなエージェントまがいとして出てくるのも笑わせる。それにしてもよく似た俳優を見つけてきたものだ。
フランキーを可愛がる地元の顔役に扮したクリストファ・ウォーケンが渋くていい。ラストで出演者が一堂に会して踊るというサービスは「舞妓はレディ」でもやっていたが、ウォーケンまでが踊り出すのには思わず頬が緩んでしまった。 (ken)
原題:Jersey Boys
監督:クリント・イーストウッド
脚本:マーシャル・ブリックマン、リック・エリス
撮影:トム・スターン
出演:ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、クリストファ・ウォーケン、ヴィンセント・ピアッツァ、マイケル・ロメンダ