不気味な映画がお好きな向きにはお薦めである。熱狂的な一部のファンに支えられるような趣がある。アメリカの映画評価サイトをいくつか覗いて見てわかったことは、一般ユーザーの支持がきわめて低いのに対して批評家は概して高得点を入れている。一応イギリス映画となっているが、アメリカ、スイス資本も加わっているようだ。
いきなりスカーレット・ヨハンソン扮する美女が若い女性の死体から衣服をはぎ取って自分が身につける。えっ何だ!と鬼面人を驚かせておいて、あとは謎また謎の連続だ。この美女がスコットランドの町や郊外をひたすらワンボックスカーに乗って徘徊する。その途中で男に声をかけては道を聞くのだが、かれが身寄りという者がなく、孤独であまり目立たない存在だとわかると、俄然興味を示して、「ついでに途中まで送ってあげるから」と誘惑するように助手席に乗せるのである。ロアルド・ダールの短編か、はたまたヒッチコック劇場に出てきそうな設定だ。
原題は邦題どおりだが、邦題にはご丁寧なことにサブタイトルが付いていて飲み込めない観客にもわかりやすいようにヒントを与えている。この同乗者がどうなるか、サブタイトルが雄弁に語っているのだ。それと、男がヨハンソンの罠にかかって餌食になるところを背景も何もない真っ暗な空間とフロアだけで表現するというアート風の前衛手法など、こういうところが玄人(くろうと)受けするのだろう。しかも、ふつうのホラーと歴然と異なるのは観客を煽ることを一切しないで、物語は淡々と静かにそれこそ闇夜に霜の降るごとく進行していくのである。そこがこの手のジャンルに特別な思い入れのない一般観客にはちょっとしんどいかもしれない。
ラストで、タイトルどおりヨハンソンの化けの皮が剥がされるのだが、ここはかなり気味が悪いとご忠告しておく。まことに不思議な映画である。 (ken)
原題:Under the Skin
監督:ジョナサン・グレイザー
原作:ミッシェル・フェイバー
脚色:ウォルター・キャンベル、ジョナサン・グレイザー
撮影:ダニエル・ランディン
出演:スカーレット・ヨハンソン、ポール・ブラニガン、クリストフ・ハーデク
いきなりスカーレット・ヨハンソン扮する美女が若い女性の死体から衣服をはぎ取って自分が身につける。えっ何だ!と鬼面人を驚かせておいて、あとは謎また謎の連続だ。この美女がスコットランドの町や郊外をひたすらワンボックスカーに乗って徘徊する。その途中で男に声をかけては道を聞くのだが、かれが身寄りという者がなく、孤独であまり目立たない存在だとわかると、俄然興味を示して、「ついでに途中まで送ってあげるから」と誘惑するように助手席に乗せるのである。ロアルド・ダールの短編か、はたまたヒッチコック劇場に出てきそうな設定だ。
原題は邦題どおりだが、邦題にはご丁寧なことにサブタイトルが付いていて飲み込めない観客にもわかりやすいようにヒントを与えている。この同乗者がどうなるか、サブタイトルが雄弁に語っているのだ。それと、男がヨハンソンの罠にかかって餌食になるところを背景も何もない真っ暗な空間とフロアだけで表現するというアート風の前衛手法など、こういうところが玄人(くろうと)受けするのだろう。しかも、ふつうのホラーと歴然と異なるのは観客を煽ることを一切しないで、物語は淡々と静かにそれこそ闇夜に霜の降るごとく進行していくのである。そこがこの手のジャンルに特別な思い入れのない一般観客にはちょっとしんどいかもしれない。
ラストで、タイトルどおりヨハンソンの化けの皮が剥がされるのだが、ここはかなり気味が悪いとご忠告しておく。まことに不思議な映画である。 (ken)
原題:Under the Skin
監督:ジョナサン・グレイザー
原作:ミッシェル・フェイバー
脚色:ウォルター・キャンベル、ジョナサン・グレイザー
撮影:ダニエル・ランディン
出演:スカーレット・ヨハンソン、ポール・ブラニガン、クリストフ・ハーデク