劇場型の連続猟奇殺人事件をテーマとしたサイコ・サスペンスである。したがって、ロマンチックな映画がお好きな向きには決してお薦めできないけれど、筆者のようにミステリやスリラー、ホラーが大好きな方にはご覧頂きたい作品だ。
冒頭、いきなり女性が縛られたまま猛犬に食い殺されるという残忍な事件が発生する。続いては、引きこもりのオタク男が顔面をそぎ落とされて殺される。こうして次々と猟奇的な殺人が繰り返され、沢村刑事(小栗旬)が若い刑事(野村周平)と事件を担当するが、沢村の妻(尾野真千子)は幼な子の誕生日も忘れるほど仕事に没頭する夫に愛想を尽かして家を出てしまう。未見の方にはこれ以上申し上げられないのだけれど、妻の出奔が後々重要な伏線となって事件を新たな方向に向かわせ、沢村たちをとんでもない悲劇に陥れることとなる。殺された被害者には共通項が存在し、起承転結の起の部分は所謂ミッシング・リンク(解明されないつながり)を発見するところから始まる。
既に報道されていることなので、後半当たりから顔を露わにする犯人が妻夫木聡であることは割っていいだろう。このキャラクターは明らかにハリウッド映画の影響であり、あまり日本映画には登場しない典型的なサイコ・キラーである。本当にこれが妻夫木かと思わせる狂気を秘めたキャラの造型には恐れ入る。ほとんど「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターだ。筆者は予告編でカエルのお面をつけた殺人鬼が登場する場面を見て「デスノート」のような超現実的ホラーかと誤解し、すっかり興ざめしたのだが、そうではないまともな犯罪映画だと聞いて改めて見に行く気になり、納得した。
NHKドラマ「ハゲタカ」の演出で名をなした人だけに、大友啓史監督は歯切れのいい場面転換で飽きさせない。刑事が地道な聞き込みの積み重ねで犯人を追いつめて行くあたりは日本映画伝統の刑事もののリアリズムとして丁寧に作っているし、クライマックスとなる沢村vs犯人の鬼気迫る対決場面もよくできていると思った。(健)
監督:大友啓史
原作:巴亮介
脚本:高橋泉、藤井清美、大友啓史
撮影:山本英夫
出演:小栗旬、妻夫木聡、尾野真千子、野村周平、松重豊、田畑智子
冒頭、いきなり女性が縛られたまま猛犬に食い殺されるという残忍な事件が発生する。続いては、引きこもりのオタク男が顔面をそぎ落とされて殺される。こうして次々と猟奇的な殺人が繰り返され、沢村刑事(小栗旬)が若い刑事(野村周平)と事件を担当するが、沢村の妻(尾野真千子)は幼な子の誕生日も忘れるほど仕事に没頭する夫に愛想を尽かして家を出てしまう。未見の方にはこれ以上申し上げられないのだけれど、妻の出奔が後々重要な伏線となって事件を新たな方向に向かわせ、沢村たちをとんでもない悲劇に陥れることとなる。殺された被害者には共通項が存在し、起承転結の起の部分は所謂ミッシング・リンク(解明されないつながり)を発見するところから始まる。
既に報道されていることなので、後半当たりから顔を露わにする犯人が妻夫木聡であることは割っていいだろう。このキャラクターは明らかにハリウッド映画の影響であり、あまり日本映画には登場しない典型的なサイコ・キラーである。本当にこれが妻夫木かと思わせる狂気を秘めたキャラの造型には恐れ入る。ほとんど「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクターだ。筆者は予告編でカエルのお面をつけた殺人鬼が登場する場面を見て「デスノート」のような超現実的ホラーかと誤解し、すっかり興ざめしたのだが、そうではないまともな犯罪映画だと聞いて改めて見に行く気になり、納得した。
NHKドラマ「ハゲタカ」の演出で名をなした人だけに、大友啓史監督は歯切れのいい場面転換で飽きさせない。刑事が地道な聞き込みの積み重ねで犯人を追いつめて行くあたりは日本映画伝統の刑事もののリアリズムとして丁寧に作っているし、クライマックスとなる沢村vs犯人の鬼気迫る対決場面もよくできていると思った。(健)
監督:大友啓史
原作:巴亮介
脚本:高橋泉、藤井清美、大友啓史
撮影:山本英夫
出演:小栗旬、妻夫木聡、尾野真千子、野村周平、松重豊、田畑智子