子どもは親を選べないという。では、親は子どもを選ぶことができるのだろうか。
カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した是枝監督の「そして父になる」は、福山雅治が初の父親役を演じた話題作だ。大手建設会社のエリート社員の良多の6歳になる一人息子が、出産時に取り違えられていたということが判明したことから物語は展開していく。
良多とみどりに育てられた慶多と、雄大とゆかりに育てられた琉晴。突然降ってわいた話に二つの家族が困惑するのは当然だ。血のつながりに重きをおくか、過ごした時間に重きをおくか、どちらの選択が正しいなどとは簡単にいえない。週末に慶太と琉晴を交換して、少しずつ慣れていく二つの家族。やっぱり血のつながりは否定できないのかと思いつつ、生まれてからの6年間を無かったことにできるのか、自分が当事者だったらどうするだろうと問い続けながら観ていた。
映画がどちらの選択をしても、納得できたと思う。それぞれの夫婦がどちらの子どもを選んでも、この出来事を通じて家族の絆が深まったはずだ。特に自身の子ども時代の体験から家族より仕事優先だった良多が、子どもと向き合い家族を大切にするようになったことがいい。折角だから親戚付き合いを始めたら、なんて思うのは無責任だろうか。
スピルバーグ監督が、この映画をハリウッドでリメイクしたいといっている。個人的にはこれにはあまり興味はないが、病院のミスで取り違えられたイスラエルとパレスチナの青年とその家族を扱った「もうひとりの息子」というフランス映画には興味がある。京都での公開日程は未定だが、観たいと思っている。(久)
監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
撮影:瀧本幹也
出演:福山雅治,尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー、樹木希林