下町で小さな金属加工工場を営みながら平穏に暮らしを送っていた夫婦と娘の元に、ある日突然夫の昔の知人である前科者の男・八坂が現われる。奇妙な共同生活が始める。そんな中、やがて男は残酷な爪痕?を残して姿を消す。8年後、皮肉な巡り合わせから、遂に八坂の消息をつかむのだが、そのことによって夫婦が心の奥底に抱えてきた秘密があぶり出されていく。
カンヌ映画祭「ある視点」審査員賞受賞作品です。当時それなりに話題になった作品です。
まず思う所がタイトルの「淵に立つ」よく考えられたタイトルだと思います。作品を見ていて、(演者さんの演技が素晴らしいのですが)皆、ギリギリのラインで生きている感じがもの凄く伝わってきます。淵すれすれで、不安定な心情で出来上がっている作品です。
説明過多になりがちな日本の商業映画の中にあって、台詞や表情の控え目なニュアンスで、過去の出来事や人間関係の情報を小出しにする深田晃司監督の姿勢が好ましいと感じました。
あと、この作品の中で1番驚いたのが、母親役の筒井真理子さんの演技です。八坂が家に住むようになってからの色気と若返りから8年後の別人のごとく変わってしまった枯れた姿。(太ってる?)この見た目の変化と、それに反応するような内面の変化に、8年前の出来事の大きさと、過ごしてきた壮絶な苦しみや苦労を感じさせられました。あと最近ちょくちょく見るようになってきた古舘寛治さんのディテールの高い演技も見逃せません。
あと、画的に川原のカットがあるんですが、青山真治監督の「ユリイカ」を見た時のような不思議な感覚に陥りましたね。映画なんで画は重要ですからね。
この映画の中の一番最大のシーンである、娘の蛍が公園で八坂に何かをされたのか?血を流して倒れている娘を発見した。その直後八坂は姿をくらませんてしまう。何気にこの問題のシーンの伏線になっているのが、八坂の失踪後夫婦の元に尋ねて来、そのまま働く事になった八坂の息子の孝司と娘、蛍と母親、章江のシーンに隠されているように思う。事件の後遺症として重度の障害で寝たきりの蛍の顔に触れようとして、章江に「何してるの!勝手に触らないで!」と勘違いから責められ、そのまま家から失踪するという描写がある。
この描写から考えれば、8年前の八坂の行動も彼自身が手を下したものでなく、息子の孝司と同様に「勝手な勘違い」だったと考えることが出来るのではないかと思う。
最後にこの映画の主人公は誰なんだろう?
そう考えたんですよ。
夫役の古舘寛治さん?母親役の筒井真理子さん?それとも浅野忠信さん?
露出度では古舘さんかな?一番目立ってたのは筒井さん?ネームバリューでは浅野さん?
正解は浅野さんでした。
やっぱりキャリアって大きいですね。
(chidu)
監督:深田晃司
脚本:深田晃司
撮影:根岸憲一
出演:浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、太賀、篠川桃音、三浦貴大、真広佳奈他
カンヌ映画祭「ある視点」審査員賞受賞作品です。当時それなりに話題になった作品です。
まず思う所がタイトルの「淵に立つ」よく考えられたタイトルだと思います。作品を見ていて、(演者さんの演技が素晴らしいのですが)皆、ギリギリのラインで生きている感じがもの凄く伝わってきます。淵すれすれで、不安定な心情で出来上がっている作品です。
説明過多になりがちな日本の商業映画の中にあって、台詞や表情の控え目なニュアンスで、過去の出来事や人間関係の情報を小出しにする深田晃司監督の姿勢が好ましいと感じました。
あと、この作品の中で1番驚いたのが、母親役の筒井真理子さんの演技です。八坂が家に住むようになってからの色気と若返りから8年後の別人のごとく変わってしまった枯れた姿。(太ってる?)この見た目の変化と、それに反応するような内面の変化に、8年前の出来事の大きさと、過ごしてきた壮絶な苦しみや苦労を感じさせられました。あと最近ちょくちょく見るようになってきた古舘寛治さんのディテールの高い演技も見逃せません。
あと、画的に川原のカットがあるんですが、青山真治監督の「ユリイカ」を見た時のような不思議な感覚に陥りましたね。映画なんで画は重要ですからね。
この映画の中の一番最大のシーンである、娘の蛍が公園で八坂に何かをされたのか?血を流して倒れている娘を発見した。その直後八坂は姿をくらませんてしまう。何気にこの問題のシーンの伏線になっているのが、八坂の失踪後夫婦の元に尋ねて来、そのまま働く事になった八坂の息子の孝司と娘、蛍と母親、章江のシーンに隠されているように思う。事件の後遺症として重度の障害で寝たきりの蛍の顔に触れようとして、章江に「何してるの!勝手に触らないで!」と勘違いから責められ、そのまま家から失踪するという描写がある。
この描写から考えれば、8年前の八坂の行動も彼自身が手を下したものでなく、息子の孝司と同様に「勝手な勘違い」だったと考えることが出来るのではないかと思う。
最後にこの映画の主人公は誰なんだろう?
そう考えたんですよ。
夫役の古舘寛治さん?母親役の筒井真理子さん?それとも浅野忠信さん?
露出度では古舘さんかな?一番目立ってたのは筒井さん?ネームバリューでは浅野さん?
正解は浅野さんでした。
やっぱりキャリアって大きいですね。
(chidu)
監督:深田晃司
脚本:深田晃司
撮影:根岸憲一
出演:浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、太賀、篠川桃音、三浦貴大、真広佳奈他