受賞には至らなかったが、今年のアカデミー賞6部門にノミネートされた話題作である。5歳のインドの少年が迷子となり、孤児院に預けられ、遠くオーストラリアに養子に出される。成人し、自分の生まれ故郷をグーグルアースで見つけ出し、実母と再会する実話をベースにした物語である。
自分が「迷子」(「迷子」という言葉は5歳では理解出来ないが)であると理解した瞬間、優しそうに見えた人が実は腹黒い人と気付いた瞬間、養子(「養子」という言葉は5歳には理解出来ないが)になった瞬間、それぞれの瞬間に、5歳には過酷過ぎる絶望と諦めと、そして、安堵が入り混じった子供の複雑な表情にとても力があり(この子役(サニー・パワール)は素晴らしかった)、且つ、インドでは、こういったケースが多くあるのだろうと想像する(実際には8万人以上/年)と、涙無しでは観られなかった。
そして、後半は、自分の本当の親は「生みの親」か「育ての親」なのかというテーマに進んでいく。更に、自分はどこの何者なのかという問いに発展する。優劣の問題ではなく、どれだけ親はその子に愛情を注いでいるのか。また、それを子供はどれだけ感じているのか。「生みの親」からの命名に対する一途な想いと、「育ての親」からの「家族だから」という献身的な愛情に溢れた言葉に心打たれた。また、「生みの親」が名付けた主人公の「サルー」という名前に関してのエンドロールのテロップにも、感動した。テロップが流れた瞬間の映画館全体の雰囲気も気付きと感動に包まれ、とても優しい気持ちになれた。是非、大好きな人と観てもらえればと思う。
一方、エンドロールにて、現状のインドの迷子事情は、上記のように8万人/年とテロップが流れた。広い世界では、人口減で大きな社会問題になっている国(我が国?)と人口爆発で止まらない国がある。何と不均衡な世界なのか。
(kenya)
原題:「LION」
監督:ガース・ディヴィス
製作:イアン・カニング、エミール・シャーマン、アンジー・フィールダー
脚本:ルーク・デイヴィス
撮影:グレイグ・フレイザー
編集:アレクサンドル・デ・フランチェスキ
出演:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、デウィッド・ウェンハム、ニコール・キッドマン、サニー・パワール、アビシェーク・バラト、ディープティ・ナバル、プリヤンカ・ボセ、ディヴィアン・ラドワ他