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第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞で世間の大きな注目を浴びることになった。
黒沢清監督作品は初鑑賞。
もともとNHK8K放送ドラマとして今春放送されたらしいが、それも未視聴。
ストーリーもオリジナル。ストーリーについては先入観なしに、かなりの期待をもって鑑賞。
とはいえ、同日、休憩なしに先に観た「82年生まれ、キム・ジヨン」(韓国映画)の好印象がかなり影響して、入り込むには少々厳しかった。
かなり早い段階で緊迫のシーンもあり、後半が間延びした感をもったが、なかなか引き付けられた。
ストーリーについては宣伝やNHKの特集番組でずいぶん紹介されているので省略することに。
甥の文雄(坂東龍汰)に対する拷問シーンは目を背けざるを得ない。文雄の顔を映さず、背中だけなのだが十分に残虐さが伝わってくる。
彼らが持ち帰ったフィルムに焼き付けられていた日本軍の非道さも許しがたいし、それがこの物語のきっかけなのだが、こちらの憲兵の拷問シーンのほうがリアリティを感じ、正視できなかった。ひょっとして、黒沢監督の特徴なのか?
神戸の上流家庭の言葉遣いや時勢に逆らってあえて目立つ洋装を貫く聡子(蒼井優)。
その衣装のかわいらしさはとても奥様というより、まだまだお嬢様の雰囲気。これこそ彼女の置かれている環境の豊かさの表現。
人目も気にせず、往来や迎えに行った波止場で夫の優作(高橋一生)に抱きつく、妻のかわいらしさなのだが、彼女の奔放さもしるしている。
蒼井優がともかく、可愛い!
まるで舞台劇のような長台詞も、「お見事です!」
当時としては相当なお金持ちの道楽であろう自主製作映画まで登場するし、当時の有名な映画の話題も出てきて、ある種の入れ子のような構成。
クライマックスで、この自主映画が効いてくるのだけれど。それはそれは「お見事です!」な見せ場!
憲兵分隊長に任命された津森と聡子は幼馴染の設定のようだが、かなりの階級差をかんじさせる。津森は聡子に惹かれている。
聡子もそれを知っているからこそ、自ら彼を訪ねた場面では、聡子は和服を着ていく。
津森を演じた東出昌大は不気味さをうまく演じていたように思う。苦手な俳優さんだが、今作はそれなりに頑張ったかな。
本当に夫、優作はスパイだったのか。コスモポリタンだったのか。
高橋一生の影ある演技も見ごたえがある。
この夫妻、仮面なのかと思ったけれど、本気で愛し合っていたのだろう。
「あなたがたとえスパイであっても、私にとっての貴方は貴方。私はスパイの妻にもなります!」
そこからは貞淑で可愛い妻から、むしろ夫をリードするくらいの勢いで、貨物船に隠れて亡命する危険をも冒す。
が、・・・・・出航までに発見されてしまう。
ラストシーンについてはいろんな意見があると思う。3行の後日談が必要だったのかどうか。。
「狂っているのはどちら?」
今も問いかけられているのかも。いえ、今こそ。
(アロママ)
監督:黒沢清
脚本:浜口竜介、野原位、黒沢清
撮影:佐々木達之介
出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大、坂東龍汰、笹野高史他