全身全霊で役に当たっただろう
西田敏行氏の静かな熱意がすべてと思う。
「遺体 明日への十日間」70点★★★★
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3.11のとき、津波にのまれた岩手県釜石市。
多くの人が亡くなり、
廃校となった中学校の体育館が遺体安置所となる。
医師(佐藤浩市)ら歯科医師(柳葉敏郎)らが
身元確認にあたるなか
しかし、
市職員(筒井道隆)らも警察関係者も
次から次へと運ばれてくる遺体を前に呆然とし、
現場は混乱に陥っていた。
そんななか、かつて葬儀社で働いていた
民生委員の相葉(西田敏行)が
遺体との接し方をみなに伝えようとする――。
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ジャーナリストのルポを基にした作品。
地震や津波そのものの描写などは排除し、
ひたすら遺体安置所となった体育館にほぼカメラをフィックスし、
「そこで何が起こったか」を、静かな筆致で描いています。
誰も経験したことのない極限状態のなかで
かつて葬儀社に勤めていた主人公が「死者との接しかた」をみなに伝える、
まさに「おくりびと」の役をするわけですね。
映画化には相当に気を使っただろうと思うし、
すごく大事なことを描いている・・・のだが、
やはり見終わってどよ~んと重い気持ちになるのは否めない。
ただ
それでも、見ておいてよかったとは思いました。
てか、
一番に見るべきなのは、行政関係者じゃないかなと思う。
災害時に、多くの遺体に接することになるわけだし、
どんなに大変なときでも、配慮の気持ちを持つことの大切さ、
そして
死者への尊厳の表しかたを学べるから。
主人公が
遺体に「寒かったね」「がんばったね」と声をかけてください、と
みんなに教えるシーンがあって
「これは誰でもやれるよねフツー」と思ったけど
冷静に考えたら、
身内ではない、知らない、その場であった遺体にそれができるか、と言われたら
簡単にできるものじゃないと思った。
動物になら自然に出るけど、
人間はわからない。経験したことないし。
そういうことを考えさせ、
極限状態のなかでも
人の心を失わないことで、人は人を救うことができるのだと、
けっこう胸にくる作品でした。
演じている人たちも、本当にガチな感じで
たぶん役ではなく“素”として、この場にいたのではと思わせる。
実際そうだったようです。
★2/23(土)から全国で公開。
「遺体 明日への十日間」公式サイト
来週2/26発売の『週刊朝日』で
石井光太さん(原作者)×西田敏行さん(主演)対談をまとめました。
「なぜ、いまこの作品なのか」そして
震災後2年となるいま思うこと・・・など
けっこう盛り上がってます。
ぜひご一読を