ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

三姉妹~雲南の子

2013-05-23 23:16:25 | さ行

開始1時間で席を立った人、もったいなかった。
そこからが、おもしろかったのですよ。


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「三姉妹~雲南の子」70点★★★★


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「無言歌」のワン・ビン監督が
中国・雲南地方に暮らす幼い三姉妹を
ひたすら映した153分のドキュメンタリー。


標高3200メートル、
常にガスっていて、岩だらけの過酷な環境で
母親おらず、父親も出稼ぎでおらず
三人だけで生きる10歳、6歳、4歳の姉妹。

カメラは彼女たちに話しかけるわけでもなく、
ひたすら無言で、まっすぐに、その姿を映し出す。

冒頭、10歳の長女がブツブツ言いながら
妹たちの面倒をみるシーンなんて
完全に中年のおかんそのもので(苦笑)

なんだか哀れを感じてしまうが、
本人たちにそんな気持ちはまったくないだろう。

過酷ななかで、しかし“それを普通に”暮らす彼女たちの暮らしぶりは
最初こそ興味深いのだが

さすがに賑やかなガキんちょたちの日常を
延々と観るのは苦痛でもあり

ここで退席した年配の男性もいて、
気持ちがわかる気がすごくしました。

が、しかし、
実はこの後からがおもしろかったんですねえ。


出稼ぎからいったん戻ってきた父が
妹2人を連れて、また出稼ぎに出てしまう。

10歳の長女インインが一人残されてからが
俄然おもしろいんですわ。

近くに住む祖父や叔母が、最低限の様子こそ見てはいるものの
そうそう甘くなく、

インインの
小学校でも、親戚の集まりでも
誰とも交わろうとしない孤高さが
凜として、観る人の目をそらさせない。

その運命を受け入れたおかん顔は
中国版ジェニファー・ローレンスにも見えました。

その後、また「え・・・」という展開が待っているのだけど、
そうなっても
彼女の孤独は増すばかりなのである。

がんばれ、インイン!


それにしても。
風がびゅうびゅうと吹き付ける過酷な環境は
「ニーチェの馬」といい、
どうしても、我々の未来の暗示のように
思わずにはいられないワシなのでした。


★5/25(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「三姉妹~雲南の子」公式サイト
コメント
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