ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

怒り

2016-09-12 23:42:39 | あ行

俳優を
こういうふうに使ってくるとは――!


「怒り」79点★★★★


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ある夏の暑い日に
八王子で起きた残忍な殺人事件。

現場には血で「怒」の文字が書き殴られていた。

犯人が捕まらないまま1年が経ち、
3つの場所に、3人の男が現れる。

このうちの誰かが「その男」なのか?
いや、そもそも関係ないのか――?


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吉田修一原作×李相日監督の「悪人」(10年)コンビが再タッグ。

綾野剛、森山未來、松山ケンイチ、妻夫木聡氏という
豪華キャストなんですが

その人選に「うほう!」という
重要な意味があるので
実に面白い。


ミステリー好きにおすすめできるし
ぜひ、予備知識ナシで見ていただきたいです。


ネタバレにはならないけど
ちょっと紹介しちゃうので、ご注意――。
(って、公式サイトなどでもこのへんは全然紹介されてるか)




映画は
一見、まったく無関係そうな人々の、
それぞれの話で始まっていくんですね。

千葉の漁師(渡辺謙)と娘(宮﨑あおい)。
新宿二丁目で一夜の相手を求めるエリート青年(妻夫木聡)。
沖縄に引っ越してきた女子高校生(広瀬すず)。

そこにそれぞれ
3人の男が登場する。

千葉の港に流れてきた男(松山ケンイチ)。
エリート君と出会う青年(綾野剛)。
沖縄の島に住み着く男(森山未来)。

この3人のうちの誰かが
過去に「事件」を起こした人物かもしれない――というのが
ミステリーになっていくんです。


細かくカットを刻みながら
3つの話が群像劇で進み
それぞれが「不穏」や「不審」「不安」で同時に転調する。


3人の誰が「その人物」なのか?
いや、そもそも関係ないのかも――?

翻弄されつつ、だんだん3つの話がつながり
大きなうねりとなっていく。

これが醍醐味ですねえ。



タイトルの「怒り」も重要なキーワードなのですが
それよりも「信じること」がテーマかな、と感じました。

しかしこれをハリウッドで作るとすると
キャストは誰だろう。
いや、向こうでは使えない手かも――?
とか考えるのも、また楽し。


★9/17(土)から全国で公開。

「怒り」公式サイト
コメント
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