ダルデンヌ兄弟の新作は、サスペンス!
「午後8時の訪問者」71点★★★★
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若き女医ジェニー(アデル・エネル)は
知人の医師の代理で
郊外の診療所で、診察にあたっている。
小さな診療所には患者が絶えず、
ハードワークが続いていた。
そんなある夜、
診療時間を過ぎた午後8時にドアベルが鳴り
ジェニーはそれに答えなかった。
が、あくる朝、警察がジェニーのもとを訪れる。
診療所の近くで身元不明の
少女の遺体が発見されたというのだ――。
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カンヌ国際映画祭7作品連続出品の
ダルデンヌ兄弟の新作。
強い印象を残す登場人物を描き、
その息遣いをリアルに感じさせながら
そこに現実社会の問題を映しこむ名匠で
「ロルナの祈り」(08年)とか「少年と自転車」(11年)とか
忘れられません。
毎回、根底には同じものがあっても
ちょっとずつ
「あ、今回は違うな」を思わせる監督でもあるんですが
本作の「あ、ちょっと違う」感は
いつもより大きかった。
背景には移民問題や貧困などがあるんだけれど
作りはけっこう、サスペンスなんですよね。
診療時間過ぎの午後8時過ぎにドアを叩いた少女を
入れなかった若い女医。
その後、少女が死んだと知った女医は、
「あのとき、ドアを開けていれば――」と
少女の名前と、その死の真相を知るために動き出すんです。
それまでは
医師としての姿勢はまっすぐでも
まあフツ―に大病院に就職して、いい給料をもらおうと
思っていたのに
なにが女医をそこまで駆り立てるのか。
罪悪感か? 残機の念か?
常に感情を抑えている女医の心を
とらえようとするのは、なかなか難しいんですが
でも、彼女が“医師として”というよりも
“人間として”の義務感や責任を、行動で表そうとしている、というのは
よ~くわかる。
そして、そんな彼女の姿は
凛として、とても美しいのです。
★4/8(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
「午後8時の訪問者」公式サイト