ニュースの現場における
舞台劇のような、シュールさと、その意味。
「ガザの美容室」69点★★★★
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パレスチナ自治区、ガザ。
女性店主クリスティン(ヴィクトリア・バツリカ)の美容室は
今日も混雑している。
店にいるのは、離婚調停中の主婦(ヒアム・アッバス)や、臨月の妊婦、
結婚式を今夜に控えた若い花嫁と母親、薬物中毒の女性や、敬虔なムスリム女性。
それぞれおしゃべりをしながら順番待ちをしていたが
美容室が停電してしまう。
国境が封鎖されているため、発電機用のガソリンも届かない。
そんななか、外で銃声が鳴り響き――。
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1988年、ガザ生まれの双子の監督による初の長編映画です。
美容室を舞台に
ワンシチュエーションで進行するドラマで
まず感じたのは「これ、舞台劇だなあ!」ってこと。
ワンシチュエーション劇はけっこうなテクが必要で、
彼らはうまいほうだとは思います。
それでもやっぱり、話や状況を作るためか
なかなか進まない美容師の手の遅さに、客でなくともイライラしてしまった(苦笑)
それでも、女だけのこの空間が
イスラムにとって幾重にも深い意味を持つことは想像できます。
そして後半、爆音とともに始まる恐怖。
銃撃戦が行われている外の状況を
あくまでも想像させるだけにとどめているのに
まるで彼女たちと一緒に美容室に留め置かれたように、心臓がバクバクする。
音の攻撃が、心底怖い。
そんな描写に、この状況を生きてきた人の"生(なま)”が感じられ
その重みと意味を噛みしめました。
★6/23(土)からアップリンク渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次公開。